カイルの短剣
「アニキ!?」
チルはハレアの手を引き、もう片方の手には先ほど発動した古代魔具を持ち、カイルの部屋の扉を勢いよく開けた。中は暗く、人の気配はなかった。
「もう!こんな時にどこに行ってんの!?」
チルは少し苛立ったようにそう漏らした。ハレアは何と声をかければいいのか分からず、手を引かれるがままにチルの後をついて行った。
「チルちゃん?」
屋敷の廊下をチルとハレアが足早に歩いていると、チェルシー殿下に声を掛けられ、足止めをされた。
「君たちもカイルも夕食に来ないし、インハート家の料理人のあの男はずっと料理長と話しながら食べてて、俺の入る隙ないし、つまんなかったんだよ~」
チェルシー殿下はそう吐息交じりにそう言った。
「アニキ……、カイルはどこにいるか分かりますか?」
チルは歩き回り、息切れを起こしながら尋ねた。
「あ~、古代魔具の修理かな?あの魔道具店の男に聞かれてたし……。ってチルちゃんもカイルばっかり~」
口を尖らせ、子どものように拗ねて見せるチェルシー殿下を横目にチルは足早に通り過ぎた。
「色男君の部屋ですね~!ありがとうございま~す!」
チルは引きつった笑顔を殿下に向けながらそう言った。ハレアは通り過ぎる時に軽く頭を下げた。
「は~。せっかくの休みなのにな~。なんか面白い事起きないかな~」
チェルシー殿下は彼女らが去った広い廊下で一人、つまらなそうに呟いた。
―――
「あれ?ここにもいない……」
カミュレスの部屋を勝手に開けて、チルはそう言った。
「勝手に開けるのはダメじゃない?」
ハレアはチルを咎めるようにそう言う。
「ハレア?さっきのことはホント緊急事態なんだから、そんな事言ってる暇ないの!」
それも、さらに強い言葉でねじ伏せられ終わった。
「あれ?なんでここにいんの?」
カミュレスが一人、廊下の突き当りから曲がってきた。そして、駆け足でハレア達に近寄ってきた。
「アニキ知らない?」
「あ~、カイルさんなら多分もうちょっとしたら戻ってくるかな~?」
「何してたの?」
「あっ、え~っと……古代魔具について色々と教えてもらってたんだよ」
少し目が泳いだ後にカミュレスはそう答えた。
「まあ、いいや。アニキの部屋で待ってよ?ハレア!」
そう言いながらその場を立ち去ろうとした。
「あ~、もしかしたら部屋には戻るのはもうちょっと後?かも?」
カミュレスは明後日の方向を見ながらそう言う。
「なんで?どこにいんのよ?」
チルはいら立ちを隠せない様子で急かすように尋ねた。
「え~っと、さっきまではリールの部屋?かなぁ?」
「アンタたち三人っていつからそんなに仲良くなったの?」
チルはジトっとした目で言い放った。
―――
「か、カイルさん、これ……剣か何か……、そういうもので切った断面だと思います……」
地下にある巨大な魔石を触りながら、リールがそう言った。
「つまり剣のような魔具で切られた魔石ということでしょうか?」
カイルはその発言に興味津々に聞いていた。
カミュレスは大きな秘密を抱える場にいられなかったのか、一人部屋へと先に戻っていった後だった。リールがまだ魔石を食い入るように見ていたため、その場に一人でおいて行くわけにはいかず、カイルも一緒に魔石を見ていた。
「たっ……ただ、刃の部分が長くないとこの大きさは切れないです……」
それを聞いて、カイルは何も言わなかった。
「かっ、カイルさんが腰に下げているような短剣の何倍もの長さがないと……。そういう古代魔具とかって残って――」
「ある……」
リールが最後まで言い切る前に遮るようにカイルが言葉を挟んだ。
「ここにある」
カイルはそう言いながら腰の短剣に手を当てた。
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