ガラクタ
「えっ?リールってあの真っ黒の人?あの人使用人じゃなかったんだ……。まあ、雰囲気がちょっと使用人っぽくないもんね」
チルの部屋で街で何があったのかハレアは彼女に話した。学校時代に会っていたことも子供時代に会ったことも黙っていたこと。子供時代にあった後に諸事情で記憶がなくなって忘れていたこと。そのこともリールは知っているのに、自分と会ったことを言ってくれなかったこと。友達だから教えてほしかったこと。
「でもさ、言いにくかったんじゃない?記憶をなくした原因は分かんないけど、もしかしたら自分に原因があるかもとか、そういうの考えたら言い出せないよ。同じ学校だったみたいだけど、Sクラだったら全く交流もなかったし、どういう人か分かんないけどさ、あんまり自分のこと話すの得意そうじゃなさそうじゃん?ハレアといる時は違うかもだけど、私とか殿下がいると全く喋らないじゃん」
「そう……かも……」
ハレアはチルの言うことに全て同意できるが、やはり少し納得できないと思いながら、尻すぼみに答えた。
「私とかには見せなくてもさ、ハレアの前だったら楽しそうに話したりするんじゃないの?いっつもハレアの隣キープしてんじゃん!」
そう言われ、今日街に行った時にいつもより楽しそうにしていたのを思い出し、口元が緩んだ。
「そうだね。私が話しづらい雰囲気があったのかも……」
チルは「ふふ」と笑いハレアの背中をポンッと叩いた。
「そうだ!ハレアにガラクタあげる」
チルはそう言って、奥の部屋に入っていった。ハレアは見たことがないが、奥の部屋はチルの衣裳部屋になっているようだった。ルルドネアのお姫様なだけあって、相当な衣装持ちなようだ。
「ガラクタ~?」
ハレアは眉間にしわを寄せ、腑抜けた声でそう言った。
「あった!」
奥の部屋からチルの明るい声が聞こえてきた。その声が出るまでにガタゴトと色んなものを避けた音がしていた。
チルが奥の部屋から持ってきたのは、カイルが腰につけている短剣を入れている革の入れ物とほとんど同じもののように見えた。
「これ、カイルさんが持ってるのと同じもの?」
ハレアはチルに渡され、少し汚れている革袋を手に取った。
「あ~、どうなんだろ?アニキのは使えるけど、これは使えないからな~。古代魔具の一つで、今じゃただのお守りって感じかな?」
「ふ~ん」
ハレアはあまり興味がなさそうに袋の中から剣を出してみた。中からは木で作られた短剣が出てきた。どこかの観光向けのお土産と言われたら納得するほどのものだった。刃の部分も木のため、もちろん何かを切ることは不可能だ。持ち手の部分には黒い四角形の石が埋め込まれていた。
「これは何かの宝石?」
ハレアはその石を指差して言った。
「ああ、これは魔石らしい。今ではこんな風に加工できないからそこだけは貴重なものかも。でも、がっちりハマちゃってて取れないし、この魔石自体に魔力注入はできないの。古代魔具って加工された魔石を介して魔具を動かしてたんだって。こういうもう使えない古代魔具がルルドネアには何個かあるんだよ」
「ふ~ん」
またもや、興味なさそうに剣を見つめ、ハレアは剣を握った。すると、剣の刃の部分が水色に光り、光の刃の長さは倍以上に伸びた。
「「えっ!?」」
ハレアとチルは驚いて同じタイミングで声が出た。そして、ハレアはその瞬間、剣を手から離してしまった。刃の光は手から離れると同時に消えた。そして、床は霧が晴れた後のように少し濡れていた。




