ルルドネア家の秘密の部屋
「なんか今日街から帰ってきてからずっと機嫌悪くね?」
表情が見えないはずのリールに向かってカミュレスが言う。ここ数日で彼のことを少し分かってきたからなのだろう。
「別に……」
いつもより負のオーラを身にまとい、リールは階段を静かに降りている。カイルは二人の案内係として地下を進んでいる。彼は二人の話している内容に特に興味がないのか、眉一つ動かしていない。
「もうすぐです」
カイルはそう言うと階段の底が見えてきた。リールの作ったランタンの魔具のおかげで辺りは思ったより明るく、地下室の端まで光が届いている。
昨夜にハレアが魔石を破壊した場所だ。ここでは魔術を使っても上の屋敷には影響がない。
「あそこです」
光でわずかに見えているドアをカイルは手で指した。古く錆びれた蝶番で繋がれている木の扉だ。
「なんか幽霊とか出そ~」
カミュレスがそう言うとリールの肩がビクッと上がった。それを見て、カミュレスは「ふふ」と笑った。
ギィ――
カミュレスが鍵を開け扉を押すと、不気味な音を立てて開いた。開けた瞬間、埃が舞い上がり、リールが「ぐしゅんっ」と可愛らしいくしゃみをした。
「あれです」
カミュレスが手に持っているランタンを上げると黒く光る正八面体の大きな魔石が浮いていた。
「でか……」
カミュレスはそう呟いて言葉を失っていた。それもそのはず、浮いているせいもあるが、目線は成人男性が少し見上げるほどのところにあり、直径は1メートルは優に超えているであろう大きさだ。
「確かに魔石だ……。断面も綺麗……」
リールは吸い寄せられるようにその魔石へと歩いた。
「触っても……大丈夫ですか?」
リールが珍しく人へ質問をした。それほどにこの魔石が珍しく興味深いものだったのだろう。
「大丈夫です。ただ、魔力を注入しようとしても私程度の魔力では焼け石に水でしたが……」
カイルがそう話している最中にはリールは魔石の断面を撫でるようにさすっていた。
「こ、これの生成方法というか……、切り方ってどうやるのかは本に書いてあったり……」
「しないですね。古代魔術なので詠唱ではないことは確かです。魔具を使ったかもしくは魔法陣を使ったか……」
リールが全て話し終える前にカイルに遮られてしまった。
「今では私たち兄弟のように旧ルルドネア王家のものはほぼ魔術を使えますが、古代では全く使えなかったので、古代魔術についての記述が極端に少ないのです。当時の人間からしたら魔術は神の技と同等だったようなので……」
「ちなみにこれがまだ壊れずに残ってるってことは、魔力を入れ直せば使えると?」
カミュレスはカイルに質問をした。
「分かりません。ただ、今の魔石も魔力がなくなればまた黒い魔石に戻り、魔力を注入すれば再利用できるので、この魔石も多分……」
カイルは少し険しい顔をした。
「この魔石のことはルルドネア家のものは皆知っているんですか?」
「いえ、父に兄、そして私だけです……」
「チル嬢は知らないと……」
「ええ、本来この魔石は家督を継ぐ……、つまり長男にしか知らされないはずでした。そして、この地下室自体もそうです。しかし、幼少期に兄と遊んでいた時にたまたま、この地下室、そしてこの魔石を見つけてしまったんです。父からはもちろん、口止めされました」
「そんなのを俺らなんかに見せちゃって大丈夫なんですか!?」
カミュレスは驚きながら、声を大きくした。
「ダメですね。でも、あなた達ならもしかしたらどうにかできるのかもと思いまして」
カイルはそう言いながら、少しぎこちなく笑った。
「どうにかって……」
カミュレスは困りながらそう呟く。
「ちなみに、チェルシーには絶対に言わないでください。厄介なことになりますから。今、父も兄も外交のために留守にしているため、見せることができましたが、もちろん家の秘密のため見たことは誰にも言わないでください」
「そ、それはもちろん……」
カミュレスは震える声でそう言った。リールは二人の話を聞いているのかいないのか、断面の部分を念入りに見ていた。
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