不機嫌の理由
「リール!?どうして言ってくれなかったの!?」
ハレアはいつもとは違い、少し強い口調でリールを見た。
これが一度目ではないからだ。ハレアは学校時代に出会っていたことも言ってくれなかった。そして、本当は子供時代に会っていた、それすら言ってくれなかったリールにいら立ちを感じていたのだ。
「ごめっ……。でも――」
「でもじゃない!リールはいつも肝心なこと言ってくれないじゃない!」
ハレアは目に涙を溜め、震えた声でリールが話すのを遮った。
「あなたにも話せない事情があったのよね?」
ガーリアはリールの丸くなっている肩にポンッと手を置いた。リールは何を言っていいのか分からず、こんなにも感情をあらわにするハレアに動揺し「あ……え……」と声にならない声を漏らしていた。
「大丈夫よ?ハレアにもちゃんと説明したら分かってくれるわ。あなたはきっと色々と考えすぎているのよ。もっと単純でいいのよ?」
ガーリアはリールの耳元で優しくそう言った。
「ごめんなさい……、今日はもう……」
ハレアは少し冷静になったのか、小さい声で呟いた。
「待って?じゃあ、クッキーだけ包むわね」
ガーリアは十年前と同じような穏やかな声でそう言った。しわが少し増えたその顔は彼女の歴史を刻んでいるようだ。
―――
「えっ?お嬢もリールもなんでそんな機嫌悪いんだよ?」
調味料や香辛料の瓶が入った紙袋を両手に抱えたルードは、心配そうな顔で二人を見た。
顔物を終え、ホクホクとした顔が一瞬で変化してしまった。
「いや、別に何でもないです……」
いつになく暗い声でハレアは返事をした。
「ま、帰って飯食お?」
ルードはハレアの顔を覗き込むように顔を下げ、そう言った。
迎えに来た馬車の中でも終始無言だった。ルードは困った様子で眉を下げていた。リールは前髪で表情は全く見えないが、下がりきった肩と丸まった背中で落ち込み具合が分かった。ハレアはずっと外の風景を見たまま、二人には一切目を向けなかった。
「おかえり~!やっと帰ってきた~!」
屋敷に着いた瞬間、チルがハレアに抱き着いてきた。その声から何かしらの気苦労があったことをハレアは察した。
「た、ただいま……」
ハレアはさっきまでの少しの怒りと沈んでいた気持ちがチルの抱擁一つで和らいだ。
「私もやっぱ行けばよかった~」
ヘロヘロとした声でチルはハレアの耳元でそう呟いた。そうしているうちに、リールはそそくさといなくなってしまった。ルードもチルに小さくお辞儀をして、ハレアの荷物ごと抱えて去っていった。
―――
「おぉ!おかえり~!朗報だぞ~!」
リールが自分の部屋に入るとカミュレスがからっとした声でそう言った。部屋の中にはカミュレスとカイルがいた。
「ん……?」
リールは聞こえるか聞こえないかの返事を返した。
「うわっ!オーラが暗っ!まあ、いいや!直ったぞ!」
カミュレスはリールの負のオーラに引きながらも、明るく接した。リールは彼らの方を見ると、テーブルの上には時計の古代魔具が置いてあった。
「え?」
リールの声色が少しだけ明るくなったのを感じた。
「まあ、動きはしないけど!」
カミュレスがそう言うとリールはまた先ほどのように暗いオーラに包まれた。
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