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不敬罪

「カイル~!この魔道具店の~……、えっと名前なんだっけ?」

 ひと汗かいてスッキリした様子のチェルシー殿下がカミュレスに話しかけた。

「カミュレスです」

「カミュレス君がカイルに古代魔術のこと聞きたいんだって~!」

 ゆっくりとカミュレスたちが座っているベンチへと向かってくるカイルに向けてチェルシー殿下は大声をあげた。チルは無表情でいかにもすぐにこの場から離れたいといった様子だった。

「古代魔術?」

 ベンチの前まで来るとカイルはカミュレスにそう尋ねた。

「はい。古代魔術というか古代魔具なんですけど……。一つ直してみたいものがありまして……」

「ここには持ってきていますか?」

「はい。今はリール……、ハレアの黒い使用人の部屋にありまして……」

「一度見せてもらってもいいですか?」

 いつになく興味津々としった様子のカイルだ。

「はい。彼は今街に行っていますが、許可はもらっているので、今からでも」

 そう言ってカイルとカミュレスは裏庭から足早に去ってしまった。


「で?俺たちは何をしようか?」

 チェルシー殿下はベンチに一人取り残されたチルに向かって、そう言いながら隣に深く座った。

「一緒に行かれなくてよろしいのですか?」

「ああ。俺は古代魔術にはあまり明るくなくてね。詠唱魔術という便利なものがあるのにわざわざ書いたり、杖を持ち歩いたりするのは非効率だからね」

「ルルドネア家の私にそれを言います?」

「そうか、チルちゃんも古代魔術好きなのか~」

「いえ、正直な話私は古代魔術も古代魔具も古臭くて好きじゃないです。ルルドネアに伝わる古代魔具のほとんどもその力を失って使い方も分からないものばかりですし。それに、女の私が魔術を極めたところで結婚したら使う機会なんてないですからね」

 チルはそう言いながら目線を落とした。

「え~、俺と結婚したら好きなだけ俺に向かって魔術打ち込んでいいよ?絶対に当たらないし、全部跳ね返すから」

 チェルシー殿下はいつものような笑顔でそう言った。

「それはまた、夫婦喧嘩のし甲斐がありますね」

 チルは「ふふ」と少し笑みがこぼれた。

「チルちゃんさ、俺のこと苦手でしょ?」

「えっ?それは……」

 チルは目を合わせられず、言葉を濁した。

「てか、そもそも男の人あんまり好きじゃないでしょ?」

「まあ、そうですね……」

「見てたら分かるよ。でも自分に好意がない人は大丈夫なんだよね?カイルは兄だし、さっきのカミュレス君はチルちゃんには興味なさそうだもんね」

 恐ろしいほどに変わらない笑顔で彼はそう話した。

「でも、それだと俺がチルちゃんに好意があるってことになるな~」

 わざとらしい声を上げながら、チルのほうを見た。チルは少し顔をしかめた。

「いつも私と結婚しようかな~と兄を脅しているではないですか」

「ははは。確かに!」

「その気がないのは知っていますよ。身分も違いますし。でも、今は結婚とかそういうのはあまり考えたくはないのです」

「あ~、分かるな~。俺も結婚結婚って親に言われて困ってるもん!正直、どうだっていいし、誰と結婚しても変わんないだろって思ってるんだよね」

「私もそう思っていました。ハレアも政略結婚で可哀想って勝手に思っていたんですけど、なんだかんだで幸せそうで。団長さんにも大事にされていますよね。ちょっと羨ましいなぁって」

「チルちゃん意外とロマンチスト?」

「い、いや!どうせ結婚するなら大切にしてくれる人がいいって話です!」

「じゃあ、俺なんかいいじゃん?大切にするよ~!」

「え~信じられないです!チェルシー殿下と結婚するメリットは魔術打ち込んでも死なないくらいじゃないですか~?」

 チルは少し意地悪な顔でそう言った。

「ははは!不敬だな~!」

 チェルシー殿下は空を見上げながら大きな声で笑った。


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