昼間の談話室
「おはよ~って……あれ?ハレア嬢は?」
昼にさしかかろうとしている時間、チェルシー殿下は談話室に入ってきた。中にはカミュレスが一人、本を読んでいた。
「おはようございます、殿下。彼女なら使用人を連れて街に出かけました」
カミュレスは立ち上がり、胸に手を当てながらお辞儀をした。
「そういうのいいよ。君、そういう人じゃないでしょ?」
お辞儀をしたままの床を見ながら、少し顔をしかめた。
「では、自由にさせてもらいます」
カミュレスはそう言うとまたソファへと深く腰掛け、本を読み始めた。
「君は行かなかったの?」
「はい。私は少々カイルさんに用があったので……」
「カイルに?」
「まあ……はい……」
「ふ~ん……」
しばしの沈黙が訪れる。何もすることがないチェルシー殿下はつまらなそうに窓の外を眺めている。
「ねえ、君はハレア嬢の使用人のこと、どれくらい知ってるの?」
「使用人と言いますと……、どちらのでしょうか?」
カミュレスは本に栞を挟み、閉じた。
「まあ、どっちも……。主に黒くない方」
「ルードさんですか……。私もここに来て初めてお会いしたので、よくは知りませんけど……、インハート家の料理人の方だそうですよ」
「料理人?あれで?」
「どうしてですか?」
「いや、別に……」
そうしてまた会話は途切れてしまった。カミュレスはゆっくりと本の栞を挟んでいるページを開いた。さきほどの続きから読もうとしたその時だった。
「カイルになんの用があったの?」
チェルシー殿下は窓の外を眺めながら退屈そうに言う。カミュレスは少し煩わしさを感じたが、皇子を無下にもできない。
「ちょっと古代魔具のことで聞きたいことがあって……」
「君は古代魔術に興味があるのかな?その本の古代魔術のものだよね?」
「まあ、なくはないですが……。魔道具屋をやっているので、その関係で古代魔具には少々興味はありますね」
「ほう。ならカイルが一番詳しいか……。しかし、魔道具店の店員がなぜハレア嬢と一緒にここに滞在しているんだい?」
チェルシー殿下は世紀の美青年と呼ばれている笑顔をカミュレスにまで惜しげもなく向けている。カミュレスは少し彼から目線を外した。
「同じ学校だったんです。ハレアさんもだし、チルさんとも」
「チルちゃんともね。仲良し三人組だったわけだ」
カミュレスは否定してもここにいる意味を問われてしまうと思い、「ははは」と苦笑いをした。
カミュレスはここに来てからチルとあまり顔を合わせていないことに気付いた。今日起きてから朝食の時も、それ以外も一回も会っていない。この神殿のような家の広さもあるが、それにしても不自然なほどに会わないのである。
「カイルなら多分あそこにいるんじゃないかな?一緒に行ってみる?」
チェルシー殿下から向けられる行為は、もちろん無下にすることはできるわけがなかった。
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