秘密の地下室
カイルに連れられハレアたち三人は、地下の洞窟のように無造作に彫られた場所の階段を下っている。
「こんなとこ見せちゃっていいの?ルルドネア王国の秘密の場所って感じするけど……」
チェルシー殿下は辺りをキョロキョロと見渡しながらカイルに言った。
「別にいい。お前は私の敵にはならないだろ」
そう言われ、チェルシー殿下の口角が少し上がり、「ふふ」と笑った。
「お嬢、大丈夫?足元気を付けてね?おんぶする?」
ハレアと手を繋ぎ先導するルードが心配そうにそう言う。
「大丈夫ですよ!」
ハレアは辺りを見渡す余裕はなく、足元の階段だけを見ながら下っている。
「君たちを見ているとまるで恋人同士だね。団長に内緒で付き合ってるとかないよね?」
チェルシー殿下は目を細め疑いの眼差しでルードを見た。
「まさか。私は旦那様がいない間、奥様を守る役目がありますから」
「ふ~ん。こう見てると主人って感じじゃないけどね」
相変わらず何か含みのある言い方をする殿下にルードは少し腹が立った。
「ここなら魔術をどれだけ使っても外には漏れません」
カイルがそう言って止まった場所は粗削りに土を掘り、所々に柱の木で支えられている何もない広い空間だった。地下だからか、少し肌寒い。
カイルはランタンに火をつける。するとその空間の端から端まで明るさがいき渡った。かつてリールが作った魔具の一つだ。
「あっ、この魔具便利だよな~。第二隊も野営の時よく使うわ~」
チェルシー殿下がランタンを見ながらそう言った。ハレアはその魔具を作った持ち主がさっきまで一緒にいた全身真っ黒な男の人だと伝えたかったが、目立つのが嫌いなリールはそれを望まないだろうと言うのをやめた。
「あっちの扉は何?」
チェルシー殿下は空間の奥にある木の扉を指差した。
「ああ、あそこは入れないよ。ルルドネアの継承者しか入っていはいけないものだから。私はもちろんチルも入ることはできない。入れるとしたら兄くらいだね」
「何があるかは知ってるの?」
「……いや、何も知らない」
カイルはその扉を見つめ、そう言った。
「じゃあ、ここで見せてもらおうか。魔石破壊とやらを」
チェルシー殿下は右手をハレアに向けた。
「で、では……。私も魔力注入がされてある魔石は壊したことがないんですが……」
カイルは何も言わずにハレアの両手に大事そうに持たれている白いの魔石をじっと見た。
「申し訳ありませんが、何があるか分からないので多少奥様から距離を取った方がよろしいかと思います」
ルードはチェルシー殿下とカイルに向かってそう言う。
「彼女は大丈夫なのですか?」
カイルはルードにそう言うと「正直なところ分かりません」と下を向いてルードは答えた。何かあれば誰よりも早く彼女を助けるつもりなのだろう。
ハレアは両手で小さな魔石を包んだ。地面からわずかに風が巻き起こりハレアの髪をふわっと浮き上がらせる。指の隙間からは白い光が線上に漏れている。その光は次第に白から水色に変化をし、ハレアの周りは竜巻のように風が強くなり、立っているのも難しくなり足がフラフラと揺れた。ルードはハレアを助けに行こうとしたが、チェルシー殿下がそれを止めた。竜巻は水を含み渦潮のように彼女を取り囲んだ。そこでついに「パーンッ」と音を立て魔石が粉々に割れた。
風はハレアの周りから外側へと吹き、それと一緒に水も弾け飛んだ。ハレアはもちろん、他の三人も水浸しになった。
空中にはまだわずかに魔石の破片がキラキラと舞っている。チェルシー殿下とカイルはそれに見とれるように上を向いている。
「これは……」
カイルは驚きを隠せないようにそう呟いた。
ルードはすぐさまハレアに駆け寄った。ハレアは立っているのがやっとなようで、髪も服もすべて濡れてしまっている。白いブラウスを着ているから下着まで透けている。ルードはそれに気付かないふりをして、そっと自分のジャケットをかけていあげた。
「お嬢、大丈夫?上行って着替えよっか」
ルードはいつもと変わらない笑顔をハレアに向ける。
「ちょっ!ちょっと待ってくれ!こっ、このことは誰が知ってる!?ゼゼは知ってるのか!?」
チェルシー殿下はいつもの冷静さがなくなり、必死な顔でルードに言った。
「ここまでのことは知りませんよ。ただ魔力量が多いってことは知っていらっしゃるみたいですけど。このことは誰にも言わないよう、お願いします。あなたも皇子なら分かりますでしょう?こんなことがバレたら彼女が危ないってこと」
ルードはハレアの肩を抱いてそう言った。カイルは何も言わずに口元に手を当て何かを考えているようだった。
「もう夜遅いのでこれで失礼いたします。何かあれば明日またお願いします」
ルードはチェルシー殿下に一礼をした。
「あっ、あの!また……明日……おやすみなさい……」
ハレアも二人に小さいお辞儀をして、ルードに連れられ階段を上って行った。
―――
「はぁ……魔石破壊、聞いたことあるか?」
ハレアたちが去ったあとの地下室。洞窟だからか妙に声が響く。
「いや……破壊は流石に……」
カイルはいまだに何かを考えているようだ。
「団長が彼女を囲っている理由も分かった。そりゃ、誰にも渡したくないわけだわ。そんで周りがやけに過保護な理由も」
「彼女を何かに利用する気か!?」
「まさか、まあそれができたらこの国は俺のものになるかな」
チェルシー殿下はそう言ってカイルに不敵な笑みを浮かべる。
「冗談はやめてくれ。チェルシーが皇帝になったらこの国はめちゃくちゃだ」
「意外といい国になるかもよ。まあ、皇帝に興味ないけど、オヤジをぶっ潰すのには興味あるかな」
「はぁ……、私は巻き込まないでくれよ」
カイルはチェルシー殿下をしかめっ面で見た。
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