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防音魔術の中では

「じゃあ、君はここで待っていてね。これから俺とハレア嬢のところにだけ防音魔術をかけるから」

 チェルシー殿下は部屋の扉側に控えているルードにそう言うと、ソファに深く座り防音魔術をかけた。ドームが広がる防音魔法は範囲は狭いが、近くにいるルードには中の空気の音一つ聞こえない。


「さてと……」

 そう言うとチェルシー殿下は向かえのソファに座っているハレアを見た。ハレアはというと何を聞かれるんだと内心ハラハラしている。

「ハレア嬢は何が好き?」

 まさかの質問にハレアは口をぽかんと開けてしまった。

「食べ物とか趣味とか」

 変わらない笑顔でハレアを見ている。

「えっと……、小説を読むのが好きです……」

「ふ~ん……」

 チェルシー殿下はそのまま顎に手を添え数秒考えた。

「君にどんな魅力があるのかと今日一日見ていたが、鈍感だし、容姿も取り立てて美しいわけでもないし、服装は貴族とは思えないほど地味で装飾品も一切つけない。簡単な魔術を使おうとしたときにそこにいる使用人に止められていたし、今聞いた趣味だってその辺の庶民と変わらない。俺はゼゼみたいに城内に味方が多いだけじゃないからね。君について詳しく調べたりはできないんだよ。だからさぁ、君のこと教えてよ」

 目を細めた美麗な顔で右手をすっと出した。

「なんでゼゼに求婚されてんのか。ただの契約結婚なら今までの団長ならゼゼにポイっと譲っちゃいそうなのに、ざわざわこんなところまで避難させてさ。まあ、そんだけ団長が君に惚れ込んでるってんなら納得するけど。あと、そこの使用人、あの人魔術師団に入っててもおかしくないよね?あんな護衛までつけちゃってさ」

 変わらない美しい笑顔なのだが、言葉の節々から突き刺さるようなトゲを感じる。

「君にそんな価値があるの?」

 糸のような目が開き、彼の瞳が見えた。目の奥が暗く、冷たさを感じる。ハレアは何も答えることができず怯えていた。

「それに一番厄介なのは父上だ。君が帝都を離れたと聞いて、目下(もっか)何かを準備している。これは俺の想像にしか過ぎない。聞き流してくれても構わない……」

 そう言って視線を落とした。


「父上は君を殺そうとしているんじゃないか?」


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