深夜の女子会
「えっ!第三皇子殿下との間でそんなことになっていたなんて!」
チルの部屋でベッドに寝ころびながら、ハレアはここに来ることになった経緯を丁寧に説明した。もちろん、機密事項は伏せ、自分の魔力量のことも少々低めに言った。
「でも、私はフェイリス殿下、そんなに悪い人だとは思ってないの。それなのに、ウェルはもう会っちゃダメって!」
「まあ、自分の奥さんが他の男と会うのはいい気はしないしね」
「えっ!?嫉妬!?」
「嫉妬だろ」
チルは冷めた目でハレアを見た。
(えっ、最近はすっかり忘れてたけど、これは溺愛計画一歩前進なのでは?あれ?でも、私ウェルに溺愛されてどうしたいんだろう……)
「そ、それより、チルはどうなの?」
「私は昔っから大勢とお見合い的なのさせられてもう勘弁って感じ」
「学校時代から色んな人と噂があったよね」
「私がちょっと見た目が大人っぽくて美しいからって世間では色々言われちゃうから本当面倒。一回会っただけで恋人面されたり……」
「それ嫌だね~」
「まあ、お見合いに関しては仕方ない部分もあると思うけどね。私、上のアニキは子爵家を継ぐし、二番目のアニキは魔術師団だし……」
チルは「はぁ……」と小さなため息をつき、下を向いた。
「私、父の政治の道具だからさ。貴族だと仕方ないっていうのも分かる。でも私によってくる人はみんな私の見た目かルルドネアのお金に興味がある人ばっかり……。私は私に興味のない人と結婚したい……」
その言葉はいつものチルとは違い、弱々しく辛うじて絞り出たようだった。ハレアはなんと返したらいいのか言葉が見つからず、チルの手を包むように両手で覆った。
「まあ、でも今はハレアが来てくれてほんと気持ちが軽くなった!学校卒業してからずーっと鬱憤が溜まってたけど!」
ぎこちなく笑う彼女をハレアは抱き寄せた。
「よかった。私、学生時代もそうだし、今だってこうしてここでお世話になってて、チルに甘えっぱなしだからちょっとでも役に立ってるなら嬉しい」
ハレアがチルの耳元で言うと、チルの鼻水をすする音が聞こえた。そして、抱き寄せたハレアの肩に涙がこぼれてきた。
「わ、私ね、ハレアが羨ましかったの。政略結婚だったかもしれないけど、妻を守るために大して交流もなかったうちにお願いできるくらい必死な旦那がいて。いつでも守ってくれる使用人がいて。フラれても思い続けてくれる人がいて……。私にはないもの全部持ってるんだもん……。でもね………、分かるの。私もハレア好きだもん!守りたくなるくらい好きになるの分かるもん!それに、ハレアはただ守られるだけの人じゃないっていうのも……分かる。だからすごく魅力的なんだよね……」
チルはそっとハレアから離れた。チルの顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「まあ、ハレアはすっごい鈍感ですっごいアホだけど!」
チルは涙で濡れた顔のままいつものように笑った。
「アホじゃないし!」
ハレアもふにゃっとした笑顔でチルを見た。
「鈍感なのは自覚あるんだ~」
「いや、それは……カミュにその……告白されたときに、気付いてないの私だけって言われて……」
「あーっ!そうだ!そのことも詳しく聞きたかったんだ~!色男君になんて告白されたの~?」
いつもの調子に戻ったチルにハレアは困惑していると、『コンコンッ――』とチルの部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「そろそろ、夜も遅いのでインハート夫人を部屋までお送りいたします」
少しだけ開いた扉の隙間から男の人の低い声がした。
「あ~、アニキか~。今いいとこだったのに~」
チルのその一言で外にいるのがカイルであることにハレアは気付いた。
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