カイル・ルルドネア
「あっ、そういえばここに来る途中で買ったんだった」
カミュレスはそう言って、ソファの隣に置かれていたトランクケースの上にあった花束をハレアに渡した。
「何これ!可愛いお花!」
「千日紅って名前の花。今が旬とかで、商人に勧められて。俺が持っててもあれだし……」
「コレットさんが手紙に書いてあったお花だ!丸くて可愛いね!ありがとう!」
そう言いながら、小さな花束を抱え自分に向けるふにゃっとした柔らかな笑顔にカミュレスは少し照れて目線を外した。
「あ~、ドライフラワーだから多分枯れたりしないんじゃないかな?花は詳しくないから知らないけど」
相変わらず、二人で話し続けているハレアとカミュレスを見て、ルードは面白くない顔をしている。
「その花……」
リールが顔を上げて呟いた。
「えっ?リールこの花知ってるの?」
ハレアがそう聞くと小さく頷き、また下を向いた。
コンコンッ――
「失礼いたします」
そう言いながら入ってきたのは褐色の肌に紫がかった髪をオールバックにカッチリと纏めている長身の男だ。目鼻立ちがはっきりしていて、整った顔をしている。魔術師団の黒い制服を身にまとい、胸元には『Ⅴ』の団章がついている。短い剣のようなものが革の生地の袋に入っていて、それを腰に下げていた。
ハレアはこの男に一度だけ会ったことがある。チルの兄だ。
「挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。私、チルの兄、カイル・ルルドネアと申します。現在は魔術師団第五隊に所属しております。本日は遠いところからお越しいただき、ありがとうございます。ルルドネア領土は港町ゆえに帝都に比べると栄えてはおりませんが、どうぞごゆっくりお過ごしいただけたら幸いでございます」
そう言って彼は深々と頭を下げた。
「かった~い!」
カイルの後ろから目を細めて応接室を覗くようにチルが顔を出した。
「この間も紹介したけど、私のアニキ!二十二歳!顔は結構イケてるんだけど、何せ固くて。ハレアが団長さんと結婚しなければアニキと結婚させたかったなぁ~。そしたら、私と義理の姉妹になるわけだし!」
そう言いながらチルは応接室に座っている男性陣三人の反応を確認するように横目で見た。ルードは表情一つ変えずに奇妙なほどの笑みを顔に貼り付かせている。リールは前髪で表情が全く読めないが、小さく「えっ……」とだけ呟いておどおどしている。カミュレスは一瞬不機嫌そうに顔を曇らせたが、すぐにいつもの整った表情に戻った。
「チル、団長の妻であり、伯爵家のご夫人にそういった事を軽々しく言ってはいけないよ」
カイルは諭すようにチルに言った。
「ほんっと、固いんだよな~」
チルは口を尖らせながらそう呟いた。
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