一晩明けて
「今日から極力ここに帰ってくることにする」
数か月ぶりに屋敷で朝食を取っているキルシュが、高らかに宣言した。
「ハレア、葉っぱ食べて……」
「え~、また?リールは野菜食べないからそんな不健康そうなんだよ~」
「葉っぱなんて虫の食べるものでしょ……」
「じゃあ、私は虫ってことになるじゃない!」
当然のようにハレアの隣に座って、サラダの葉物をハレアの皿に移しているリール。ハレアもいつもの日常かのように受け入れている。
キルシュはそんな二人のやり取りを正面で見て「んんっ」と大きめの咳払いをした。
「あっ、ごめんなさい。なんか言った?ウェル」
ハレアは二倍の量になったサラダを前に、キルシュを見た。
「「「「「ウェル!?!?!?」」」」」
ヨーレン家族皆の声が揃った。
「あっ、はい。これからはお互い名前で呼び合おうって決めたんですよ」
ハレアは彼らとの温度差を全く感じず、フラットにそう言った。
ルードはキルシュを疑いの眼差しで見ている。リールは表情が全く読めないが、小さく「えっ、えっ」と声が漏れ出てしまうほど動揺している様子。ヨーレンとカカリは「やっとかぁ」といったホッとした顔をしている。モーネはというと口元で両手を合わせ「素敵~」と一言呟いた。
「今後は世間に関係良好のアピールをしていこうと思っていて、何せハレアは皇族の二人に目をつけられている状態だからな」
「えっ!?目をつけられてる!?」
ヨーレンはその一言に驚いたのか声に出てしまっている。
「これからは週に一度は休暇を取って屋敷に戻るようにもしようと思っていて」
「えっ!?週に一回も!?」
ルードもヨーレンのようにキルシュの話している内容に驚き、発言しているがキルシュはそれに反応もせずに喋り続けている。
「流石に夫婦仲が良好ではあればチェルシー殿下もフェイリス殿下もハレアを表立って狙ったりはできないだろうからな」
「えっ!?チェルシー殿下ってあの世紀の美青年の!?」
モーネはミーハーなようでチェルシー殿下という言葉に凄い食いついている。
「ということで今日から極力この屋敷に帰ってくるようにする」
「は~い」
ハレアはヨーレン家族の反応とは裏腹に腑抜けた笑顔で返事をした。
「それにしても奥様ってモテますね!この間もあのカミュレス先輩に告白されっ……あっ……」
モーネは口をつぐんだが言った言葉は取り消せなかった。
「ちょっと!モーネ!」
ハレアは慌てて止めに入ったが間に合わなかった。
「んん?」
キルシュは眉間にしわを寄せ、目の前のハレアを細目で見た。
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