光の発生源
「ねえ、モーネ?」
朝食前に、寝室でモーネにお茶を入れてもらっているハレアはどこか少し、心ここにあらずな様子だ。
「何でしょう、奥様」
「モーネは、その……こっ、こっ……」
「こ?」
「告白されたことある!?」
ハレアは思わず大きい声でモーネに問いかけてしまった。
「えっ!?奥様、告白されたんですか?昨日は、旦那様と街までお出かけされたんですものね!わ~!素敵!」
「違くて……、旦那様じゃなくて……」
「えっ!?違う人ですか?」
「その……、学生時代の同期に……」
「えっ!?それでなんて答えたんですか?」
「いや、あっちももう私が結婚してるって知ってるし、特には何も……」
「キャー!切ない恋!ちなみに誰ですか?同じ学校だからもしかしたら分かるかもしれないです!」
「……カミュレスって人、分かる?」
ハレアはお茶の熱さか、照れからかは分からないが少し顔を赤らめて言う。
「えっ!?あのカミュレス先輩ですか!?めちゃくちゃ有名人じゃないですか!ちょーちょーちょーかっこいい人ですよね!?わー!交流あったんですね!みんなに優しいけど、特定の誰かと常に一緒にいるなんてことはなかったので知りませんでした!え~!いいじゃないですか!カミュレス先輩!今からでも旦那様から乗り換えちゃったらいいんじゃないですか?全っ然屋敷には帰ってこないですし!」
モーネは少し悪い顔をして笑っている。
「いやぁ~……」
どう反応していいのか分からず苦笑いで返す。
「まあ、貴族の方って色々とありますもんね。優雅で憧れますけど、しがらみも多いですよね……」
「そういえば、モーネ?」
「はい?」
「結婚してから一か月以上も経つのだけれど、パーティやお茶会の誘いがないのはどうしてなのかしら?別に行きたいとかではなく、インハート伯爵家ならよく招待されているものだと思っていたので……」
「あ~、それはですね~。旦那様が全て断っているんですね~。結婚前もよく招待されてたみたいなんですけど、皇族の招待以外全て断っていましたね。だからだと思いますよ!気にしなくても大丈夫です!」
(まあ、もともとダンスは苦手だし、旦那様のダンスをする姿も想像つかないからいいのかもしれないけど……。それにしても結婚生活、本当にやることがない!最近少しずつ詠唱魔術の練習をしてはいるけど、魔術学校時代のように先生がいるわけでもないから、正直ちゃんとできているのかも分からない……)
「そういえば、奥様の能力について外では話さないようにってパパに言われました。別に話す予定とかもなかったんですけど、やっぱり凄い力だったんですね!憧れちゃいます!」
「それが表立って使えないから逆に不便で……。今は壊す魔石もないので、常に魔力が溜まっちゃってる状態みたいで……」
「天才の悩みってやつですね~」
「天才じゃないから悩んでいるのよ~」
ハレアは悲しみを含んだ声を出す。
「あっ、そういえば奥様がルード兄さんと出かけた日あったじゃないですか?詳しくは知らないんですけど、魔石を壊したんですよね?それってもしかして帝都から少し離れた北東の山だったりします?」
「そうね、確かそっちの方だった気が……」
「そうなんですね……」
モーネは珍しく難しい顔をしている。
「実は学校で少し噂になってるんです」
「えっ!」
「私の学年に第三皇子がいるの分かりますか?」
「確かAクラスでしたよね?」
「そうです。私は同じクラスじゃないので関わりはないのですが、第三皇子殿下あの日遠くの山から水色の光を見たそうで、すぐに強い魔力の光だって分かったそうで、その魔力の元を探してるそうなんです!」
「つまり私の……」
「多分そうです。どうやら光の元に急いで行ったら木が何本かなぎ倒されてたそうで」
「木をなぎ倒したのは私じゃなくてロン隊長なんだけど……」
「えっ!?それも凄すぎですね!」
(まあ、元はと言えば私の魔力なんだけど……)
「まだそれが人なのか、魔具なのか、自然発生した何かかは分かってないみたいなんですけど……」
「それ旦那様に伝えた方がいいよね?」
「そうですね……」
―――
ハレアは何かあるとルードに一番に相談している。軽いノリで話しかけやすく、いい兄貴分だからだ。キッチンの入口からひょこっと顔を出して中を覗くと、後ろを向いて作業をしていても、大きな音がしていても絶対にすぐ気付いてくれる。
この日もそーっと覗くとすぐに振り返って八重歯を出して、目を細めてニコッと笑いかけられた。
「どうした?お嬢!お腹すいた?」
ハレアはぴょんっとキッチンの中に小さく飛んで入った。
「旦那様に連絡する方法ってありますか?」
「ん?キルシュに?あ~、手紙だと早くて明日かな~。今すぐに連絡とりたいならリールに聞いてみたらどうかな?」
「リールさんに?」
「あいつ、色んな魔具作ってるからキルシュにすぐ連絡できるものとかあるんじゃないかな?」
「リールさんかぁ……」
ハレアの顔が少し曇る。
「リールのこと、苦手?」
「多分苦手なのはリールさんの方だと思います。私、どうやらあまり良く思われていないみたいで……」
「いや、それはないと思うよ!本当に!大丈夫!」
「一緒にお願いに行ってくれたりしません?」
少しもじもじとルードを見上げるハレアは自然と上目遣いになっている。
「ん゛~~~、い゛い゛よ゛~~~」
(か゛わ゛い゛い゛、お゛嬢~~~)
ルードはハレアの目を極力見ないように目をギュッと瞑った。




