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魔力の管理

「詳しい事はあまり分からないんだ。どうしてそうなったのかを見た使用人が一人もいなかったからね。ハレアはその日の前後の記憶がなくなってしまって……。責任を重く受け止めた乳母も屋敷を辞めてしまった。私も妻の出産にかかりっきりで、息子のソレートも学校の試験日で屋敷にはいなかったからね、彼女のせいではないんだけど。それ以降、ハレアには定期的に魔力を発散させるために魔石を壊させていたんだ」

 ランベルは苦しそうな表情を浮かべながら語ってくれた。

ハレアは当時のことをあまり覚えていない。病気で入院し、退院してから魔石を壊すようになったということだけはなんとなく覚えていた。何の病気で入院していたのかは知らなかった。ただ、母親と同じ病院にいれることが幼いハレアにとっては嬉しかった。


「全然知らなかった……。私、魔力暴走したんだ……」

 ハレアは小さく呟いた。

「いや~、ハレアがそれで入院して以降、ソレートなんてハレアに対して過保護になっちゃって!魔術学校にも遠いのに寮に入らずに家から通うって聞かなくて。結局ハレアが入学するまで自宅通学してたんですよ。全く、困った子たちで」

 ランベルは柔らかな表情だった。何がどうあれ、彼にとっては懐かしい出来事の一つなのだろう。


「実はですね、ハレアさんの魔石を破壊する現場を見たのですが、それの光を浴びると魔力が急激に増加するということが分かりまして……」

「えっ!?俺何回も見てるけど、全然気づかなかった!」

 ソレートは両手をテーブルにバンッとつき、立ち上がった。

「ソレートもハレアほどじゃないが、人よりは魔力量が多いから気付かなかったんじゃないのか?」

「彼女がこの間壊したのが直径40センチほどの楕円形の魔石です。それを破壊できる魔力量があり、それを魔術師団第四隊長である彼がまあ……その……」

「被験者ね。実験体」

 ロンがやれやれと言った様子でキルシュに助け舟を出す。

「彼がその光というか欠片を浴びたところ、魔力量が10倍以上に跳ね上がりました。正直、彼女の魔力量と他者の魔力量を格段に伸ばすことができる能力は、戦争にも使われてしまうかもしれないほどです」

「毎日ぶっ壊してたのは手のひらサイズの魔石だったから気付かなかったっていうことか……」

 ソレートは顎に手を置き、考えながら椅子に座り直す。

「よって、彼女の能力は今後魔術師団へと引き継ぎ、このことは一切他言しない、かん口令を施行しようと思っています」

「ちょっ!それだとハレアの魔力が魔術師に悪用されかねないだろ!」

 ソレートは声を荒げた。

「もちろん、僕とここにいる魔石管理をしている第四隊長とその周りの信用できる人のみしか知らせないつもりです」

「でもっ……」

 ソレートが反論しようとするのをランベルが止めた。

「娘がそんな凄い能力を持っているとは分かりませんでした。これは私どもロンダム家の責任でもあります。しかし、彼女にはその辺にいるごく普通の女の子のように、おいしいものを食べ、好きな本を読み、楽しくお喋りをして、みんなに愛される、そんな生活をしてほしいんです。私は彼女が幸せに過ごせるようにと君と結婚をさせたのです。君が娘の能力を悪用しないっていうのも、もちろん分かる。しかし、魔術師団に管理されるとなると、娘はもう普通の幸せは手に入らないのではないでしょうか……」

 ランベルは震える声で絞り出した。


「キルシュ、俺も正直反対だ。お嬢は今まで通り、屋敷で過ごすべきだと思う。さっき言ってた魔力暴走の件も不安要素が原因なのだとしたら、あまり環境は変えるべきじゃない。それに、一応あの屋敷には魔術に精通してる奴がいる。何かあれば俺たちが絶対にお嬢を助けるよ」

 ハレアは自分の後ろに立つ、ルードを見た。彼はハレアの顔を見て、いつものように優しく笑った。

「……分かりました。では、今まで通り彼女はインハート家の屋敷で過ごしてもらうようにしましょう。あと、このことは皇帝陛下にも内密にお願いします。現在はロンダム家の方々とインハート家の使用人、そして第四隊長しかこのことは知りません」


「あっ、あの~」

 ハレアが発言をしようとそろりと手を上げた。

 そこにいたみんながハレアの方に注目する。


「私が魔石を壊せるのを知ってる人が、もう一人いるんですが……」


「はっ?」

 一瞬にしてみんなが同じように目を丸くさせ、口を開いて驚いた。


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