やくそく
同じ年くらいの男の子だった。ハレアは手招きをした。
「何してるの?」
よく見ると彼は顔に土がついている。
「魔術を使ってみたの」
彼はまだ壁から顔だけを出した状態だ。
「えぇ!すごい!見せて!」
ハレアはその日初めてワクワクした。新しい絵本を読み始める前のような、可愛い洋服を人形に着せる時のような、そんな感情だ。
「いいけど、僕の魔術、土魔術で地味なんだ……。父さんと兄さんは風魔術なのに……」
彼はもじもじと壁の後ろから出てきた。
「え~!土魔術って何するの?見せて見せて!」
彼は小さくうなずいて、目の前にある緑の葉が広がる場所の前へしゃがんだ。ハレアも彼の隣に並ぶようにしゃがんだ。
彼は一つの茎を優しく包み込むように触れて「フェリド・ルーレス」彼は小さな声で呟いた。その瞬間、スルスルと伸び、鮮やかな紅色の丸い花が咲いた。
「すっごい!!!お花咲かせたの!!!」
ハレアは目を輝かせ、彼を見る。男の子は少し恥ずかしそうに下を見た。
「素敵!この花!もらっていい?」
彼はまた小さくうなずいた。そして、茎を切ってハレアへと手渡した。
「なんていう名前の花なんだろう!帰ったら図鑑見てみようかな」
「千日紅」
「せんにちこう?」
「うん。千日紅っていう名前のお花だよ」
「可愛い名前!ありがとう!」
「あなたのお名前も教えて!」
「僕は……リール……」
「私はハレア!」
「ハレ……ア……」
「そう!ハレア!」
「ねえ、リール?」
ハレアに名前を呼ばれ、下を向いていたリールが顔を上げると、目の前にハレアの顔があった。恥ずかしさで一瞬にして顔が赤くなる。
「リールも魔術学校に行くの?」
「な……、なんで?」
「お兄ちゃんが魔術学校に行くからって今頑張ってるの。もし、リールが魔術学校に行くなら私も頑張ってみようかな……」
「分かんない……。でも、受けてみようかな、ハレアがいるなら……」
「うん!やくそく!」
ハレアはそう言ってリールの両手を握った。
「約束って小指でするんじゃないの?」
「そうなの?じゃあ、小指出して」
二人は小指と小指と繋いだ。
「ねえ、リール?明日もここで遊ぼうよ!」
「うん」
そう言ってハレアは右手に千日紅を握りしめ、屋敷の方へと走っていった。
その途中で一度振り返る。
リールはハレアの方を見る。太陽に反射して彼女の目が宝石のように輝いていた。
「また明日ね~!」
ハレアはリールに向かって大きく手を振った。リールも彼女に向かって小さく手を振った。
―――
リールが東屋に戻ると女の子の人形がちょこんと座っていた。ハレアのものであるとすぐに気付いたが、その頃にはもう彼女の姿は見えなくなっていた。
(明日もここで会えるし)
そう思ってその人形を抱え、東屋を後にした。明日も会える、そう思うとリールは少しだけ口が緩んだ。




