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ロンダム伯爵家②

『パンッ!』『パンッ!』『パンッ!』


 凄まじい勢いで男性陣三人の頭が扇子ではたかれる。


「いい加減にしなさい!」


 ピシャリとその一言でその場が一転とする。

 振り返ると、ハレアの母親であるルミア・ロンダムが鬼のような形相で立っている。


「あなたたちはとりあえずここから移動よ。談話室に行きましょう」


 何を隠そう、この場はロンダム家の屋敷の玄関先のホールだ。使用人たちがせわしく働いている中、その当主及び家族が騒がしいといのは示しがつかない。

しかし、こういった事はロンダム家ではよくある風景なので、使用人たちも特には気にしている様子はない。




 ロンダム家長女である、ハレア・ロンダム。彼女は家族から愛され過ぎている。

鮮やかなターコイズブルーの髪に空色の瞳。先月、魔術学校を卒業したばかりの18歳。容姿はロンダム家の人間の評価では最上位、世間の評価では中の上。盛って上の下くらいだ。


 ロンダム家は水魔術の使い手が多く、父親のラルベス、兄のソレート、弟のジュード、そしてハレアも水魔術を主に使う魔術師家系だ。母親のルミアのみ風魔術師の家系の生まれだが、彼女自体あまり魔力量が多くなく、魔術という魔術を使えない。しかし、ロンダム家においてルミアの権力は絶大である。扇子の角で叩かれると信じられないほどの痛みを感じるため、無意識に風魔術を使っているのではないかと兄弟の中で話し合ったこともあるほどだ。

 ロンダム家は、帝都の中心から少し外れたところに屋敷を構える伯爵家だ。代々、文官として帝国に仕えている。父、そして兄も現在文官として帝都の城に勤めている。ちなみに、ハレアも城の文官の試験を受けたが見事に落ちている。そのため、魔術学校を卒業した現在は特に何もしていない。ニートということだ。しかし、女性というのは便利なもので花嫁修業や家業の手伝いなどと言っておけば、貴族社会において何らおかしいことなどない。

 ハレアも家業の手伝いという名目で屋敷に引きこもっている。学校を卒業した同期生には帝国魔術師団に入団する者、魔具を制作や研究する機関に入る者、など様々だったが、彼女は魔力量は多いもののあまり精巧に魔術を扱うことができないため、どこにも入れなかった。いわゆる落ちこぼれである。


 そんな彼女にも趣味がある。本を読むことだ。特に恋愛小説。

 中でも『氷の冷酷騎士様は私の熱に溶かされ溺愛する』というシリーズ小説にハマっている。氷のように冷たい王国の騎士が政略結婚で結婚した主人公の女性の健気で純朴な姿に絆され、彼女を溺愛していくというストーリーだ。王道にして傑作と世間では小説だけに留まらず、ストーリーを模した画集や劇場での舞台などにもなっている。


「いつかこのような素敵な恋がしたい」


 そう、ハレアは恋に夢見る乙女なのである。


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