時計塔
時計塔、皇帝の住む城の敷地内にある魔術師と魔術研究者が集まっている場所。キルシュはそこの帝国の魔術師を管理している魔術師団の団長を任されている。戦時中は、魔術師と騎士は前線に放り込まれるが、戦争をしていない現在は魔術の研究や実践をしている。
「スキード君は魔力量が人より多いんだよな?」
いつも無言で不機嫌そうに事務仕事をしているキルシュ団長が、違法魔具のガラクタを団長室に運んできた魔術師団第一隊所属のリンリー・スキードに話しかけた。普段は「お疲れ様」や仕事の指示以外では口を開かないキルシュにリンリーは驚きを隠せない。
「はっ、はヒ!僕は魔術学校でも学年で一番っては言われてました!」
リンリーは緊張してしまい、少し言葉を噛んでしまった。
「魔石を破壊したことはあるか?」
キルシュは困ったような様子で眉間にしわを寄せている。
「あ~、ありますよ~!大体これくらいのドロップサイズのものなんですけど、魔力注入の授業の時に加減を間違えて壊しちゃいましたね~。って言っても端っこが欠けたくらいなんですけど。それでも相当な魔力を放出しないと魔石って砕けないみたいで。魔力が枯渇したんじゃないかってすぐ保健室に運ばれましたよ~」
「そうか……」
少し驚いた表情をしては、またいつものような不機嫌そうな表情に戻った。
「す、すいません。僕の話じゃ参考にならなかったですよね……。確か……第四隊長は魔術師団の中でも魔力量が桁違いって聞きますよね。確かにロン隊長ってオーラありますしね!ゴッリゴリですし!騎士団ならまだしも魔術師団であんなに筋肉隆々な人も珍しいし、魔石くらいチャッチャッとぶっ壊しちゃいそうですよね!」
リンリーは団長室の重苦しい雰囲気に耐えられず、口数が多くなってしまう。
―――
「は?魔石?無理だぞ。つーか、もったいねーだろ」
時計塔の廊下で会って早々、気だるそうに頭をかきながら第四隊長であるロン・イールスは答える。
「てか、お前!団長になったのも事後報告だし、結婚も事後報告ってなんだよ!先輩だぞ!追い越すな!出世も結婚も俺を置いてくな!誰が育ててやったと思ってんだ!」
ロンはキルシュの肩を抱き、からかう。キルシュにこんなことをできるのは魔術師団員の中ではロン一人だけだろう。
「いや、学校は僕が先に卒業しましたし、最初に魔術師団に入ったのも僕ですし、僕が先輩なのでは?」
キルシュは重く硬い腕を振り下ろそうとするもなかなかに難しい。
「相変わらず、生意気なヤツめ!嫁に会わせろ!お前の愛しの嫁ちゃんに会わせろ!」
「いや、皇帝に言われて結婚しただけですし……」
「ん?可愛い系?綺麗系?何歳?なんて呼ばれてんの?どう?ソッチの方は?」
耳元で問いかけられ、とっさにロンを投げ飛ばしす。
「イッテテテテ……、魔術を使うのはご法度だろ~」
肉弾戦ではロンに絶対に勝てないキルシュだが、魔術を使えば容易く倒すことができる。
毎度毎度このような下世話な話をしてくる彼にキルシュも呆れている。
「あっ、僕の妻に会わせてあげてもいいですよ。その代わり、大きさの違う魔石を何個か持ってきてください。魔石の鉱山管理は第四隊なので簡単ですよね?」
廊下に倒れこむ巨体成人男性を見下ろしながらキルシュは言った。




