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【選挙#2】嵐が来る前の静けさ

異界と人間が交わる世界へ。

そして、そんな世界にある、探偵事務所へ。


探偵事務所の名前は──

《金花探偵事務所》。


ここに集うのは、ちょっと普通じゃない高校生たちだ。


三人の主人公と異界と人間の世界が交差する時代、

彼らの物語が、今、走り出す──!


瀬礼文学園――放課後。

学校近くにある、二階の一室。


探偵事務所の応接ソファに腰掛けていた新道ラントは、落ち着いた表情のまま資料を広げた。


「ここから先は、生徒会選挙という“戦争”だ」


彼の声は低く、けれど芯がある。


「僕たちの“平等派”が勝ち上がるには、敵を知る必要がある」


向かい合うのは、金花探偵事務所の3人――


メリーは、ぐでっとソファに寝転びながらポテチをつまんでいる。

風香は肘をついてノートにペンを走らせており、

練斗は椅子の背に逆向きに座って、つまらなそうに腕を組んでいた。


「敵って言ってもさ……生徒会選挙だろ?なんで戦争みたいになってんだよ」


「この学園では、毎年“本気”の争いが行われてる。推薦、支持団体、派閥、報道、資金援助――

票は思想とパワーのぶつかり合いで決まるんだ」


そう言ってラントは、三枚の写真を机の上に並べた。


「――これが、“人間優位派”の中心人物たちだ」


風香の目が細められる。

そのうちの一人の写真を見て、彼女は低く呟いた。


「……見覚えある。凛火、って名乗ってた子ね」


「ええ。鷹取凛火。表向きは優等生、生徒会推薦枠、文武両道。けれど裏では、自分に刃向かう者を静かに“潰す”やり方をとる。

女子だけど男以上に容赦ない。あれは、笑ってるときほど危ないタイプだよ」


メリーが目を丸くした。


「へぇー……女子の敵じゃん。でもカーストは高そう」


「高いさ。家柄も権力も上級層。何より、自己演出力がある」


ラントは次に指を向けた。


「こっちが、神代鷲真。剣道部のキャプテン。言うなれば、“実行部隊”だ」


「……見たことあるぜ。確か剣道部を初めて全国に連れてった優秀な奴だろ。」


練斗がぼそっと呟いた。


「正々堂々を好む剣士だが、命令と正義を履き違えたとき、容赦がなくなる。

鷲真は、凛火に“心酔”してる。だからこそ危険なんだ。自分の判断より、彼女の意志で動く」


「忠犬タイプね」


風香が冷たく言った。


ラントは頷いて、最後の一枚を指差す。


「そして……これが夜凪美玖。異界出身者でありながら、人間派に属している」


「ギャルじゃん」


メリーが写真をのぞきこむ。


「うん。でも中身は真逆。冷静で頭が切れる。実は凛火とは幼なじみで、暗殺術に近い戦闘スタイルを使う。

彼女だけは“殺しに来る”って考えておいた方がいい」


「異界の技術に精通してるのに、人間派にいるってのが皮肉だな」


練斗がつぶやいた。


「夜凪美玖の“選択”には理由があるはずだけど……まだ掴めていない。いずれにせよ、彼女がいることで、凛火陣営は“戦闘型”としてバランスが取れてるんだ」


ラントが一度息を吐き、三人を見渡した。


「彼女たちは、すでにこちらの動きを“監視”し始めてる。

次に狙われるのは、きっと君たち――金花探偵事務所だ」


「だろうね。実際、前にちょっかいかけてきたし」


風香が書き留めたノートを閉じる。


「そもそも、あの子たち。自分たち以外が表舞台に立つのが気に食わないって顔してたし」


「ふふっ、むしろ敵ってわかりやすくていいかもね」


メリーが笑った。


「メリー」


ラントがその笑みに釘を刺すように口を開く。


「これは“生徒会ごっこ”じゃない。本当に負ければ、

学内の発言権、施設の利用権、人脈――全部、あっちに握られる」


「……わかってるよ」


メリーは笑みを消して、きっぱりと言い返した。


「だからこそ、うちが動くんでしょ。探偵事務所って、“理不尽に負けそうな人の味方”なんだからさ」


「……心強いな」


ラントは笑った。そして桜花が静かに口を添える。


「この争い……必ず、嵐を呼びます。どうか、その時――」


「うん」


風香が短く答えた。


「その嵐が吹く前に、私たちで“気流”を読んで、流れを変えてみせる」


探偵たちは静かに頷き合った。


嵐の予感はすでに、校舎のどこかでざわつき始めていた――。

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