【選挙#1】壮絶…生徒会選挙!
異界と人間が交わる世界へ。
そして、そんな世界にある、探偵事務所へ。
探偵事務所の名前は──
《金花探偵事務所》。
ここに集うのは、ちょっと普通じゃない高校生たちだ。
三人の主人公と異界と人間の世界が交差する時代、
彼らの物語が、今、走り出す──!
異界と現実が交差するこの学園には、
“選ばれし者”たちの戦場がある――
それが、《瀬礼文学園生徒会選挙》。
日本で最も苛烈と言われる生徒会制度。
学力、カリスマ、財力、さらには“異界の力”すらも含めて争われる権力闘争。
その選挙の裏で、私たちは――
とんでもない“闇”を嗅ぎ取ることになる。
────
「こんにちは、金花探偵事務所の皆さん」
その日、事務所のドアが開いた瞬間、空気が変わった。
制服の着こなしに一分の乱れもない整った男子。
凛とした眼差しで微笑む、黒髪の人間――
「僕の名前は新道ラント。生徒会長候補です」
そしてその隣にいた、長い水色の髪を波のように揺らしながら、静かに一礼する少女。
「副会長候補、内美桜花と申します。……種族は、“人魚”です」
メリーが口をぱくぱくと動かす。
「えっ、生徒会の……選挙候補? っていうか、人魚!? 水槽必要!? 大丈夫!?」
「落ち着いてメリー。話を聞こう」
風香がモニターを軽くタップし、情報を同期する。
「それで、何のご用件で?」
ラントは静かに、だがはっきりと語った。
「選挙が始まってから、校内で“怪しい事件”が続いているんです。
異界生徒の情報が流出したり、推薦状の改ざんがあったり……」
「私たちは“異界人と人間の共存”を掲げています。
でも、それを快く思わない派閥もいるんです」
そう。
この学園には、三大勢力と呼ばれる生徒会派閥が存在する。
•人間優位派:保守的な人間至上主義。
•異界優位派:異界こそが進化の先と信じる過激思想。
•平等派:人間と異界人の共存を望む中立派。
ラントと桜花は、平等派の象徴として立候補したが、裏ではさまざまな妨害が起きていた。
「私達を調べてほしいんです」
風香の目が鋭く光った。
「“あなたたちを”?」
「はい。僕たちの周囲で起きている問題が、もし“内側から”起きているなら……僕たちは、潔白であることを、証明しなければならない」
メリーは驚いた顔で頷く。
「すごい……自分の正しさを証明するために依頼するなんて!」
「なるほど。自己証明をもって、平等派の正統性を確保しにきたのね」
風香がうなずく。
練斗はソファから体を起こし、少しだけ真面目な顔で言った。
「いいぜ。やってやるよ。
その代わり――俺たちが“何か”見つけても、止めるなよ」
ラントと桜花は、ゆっくりと頷いた。
_________
翌朝、瀬礼文学園の校内は、何かが少しずつズレているような空気に包まれていた。
「……あれ、聞いた? 新道ラントの件」
「うん、なんか“前に裏口入学させてもらった”とか、“教師に手を回して推薦もらってた”とか……」
「え、それ本当なの……?」
教室の隅、廊下、カフェテリア。
生徒たちの間で、静かに――しかし確実に、ある噂が広がっていた。
「くだらない」
賑わいを見せるクラスで、風香は小さく呟いた。
「昨日は“模範的人間”扱いされてたのに、今日はこの言われよう……人間の評価って本当に軽いわね」
「でも……噂って火がついたら止まらないよ?」
メリーがポテトチップスをつまみながら呟く。
「で、どうする? これも調べる?」
練斗が足を組んだまま、ラントから渡された資料に目を通す。
「向こうが“手伝ってほしい”って言ってきたのに、こっちが先に彼のクリーン調査やるってのも皮肉だけどな」
風香が一枚のメモを見ながら言う。
「ラント自身じゃなく、“彼の家”に原因があるとしたら……? このタイミングで噂が出るってことは、誰かが仕掛けてる可能性が高いわ」
「つまり――」
「“選挙の火蓋”が、もう切られたってことよ」
こうして――
《金花探偵事務所》は、学園最大の政争《生徒会選挙》に関わっていくことになる。
そして、それはやがて学園全体を揺るがす、大事件へと繋がっていくのだった。