「虐められる方が悪い」と人は言う。
人間は本気で思っていた。
虐められる方が悪い
虐められるような性格でいるのがいけないんだ。
彼らは本気でそう思っていた。
反撃をしないからいけないんだ。
はっきりと止めてと言えないからいけないんだ。
彼らは本気でそう信じていた。
いや、もしかしたらそのような考えの人類は多数派であったかもしれない。
ある日。
悪魔が一つの思い付きを試した。
人類の認識を逆にしたのだ。
つまり、強者は弱者に。
弱者は強者に。
多数派が少数派に虐められ、少数派の言動にビクビクとしながら元虐めっ子は過ごす羽目になった。
少数派達は自分がかつてされていたことを忘れて多数派を虐めた。
虐め続けた。
自分達がどれだけ虐めても彼らは反撃をしてこなかったからだ。
彼らは反撃をしなかった。
止めてとも言わなかった。
それほどまでに人間の社会は自らの種が築き上げてきた文化と言う構造を大切にしていたからだ。
そんな様子を見て悪魔はため息をついた。
もっと面白いものが見れると思っていたからだ。
悪魔は飽きてその場を去った。
わざわざ認識を戻すこともなかった。
何故なら、悪魔にとって人類は全く変化していないように見えたからだ。
そして、その認識は限りなく正しかった。
今日も人間の社会で人々は言う。
「虐められる方が悪い」