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第五話「進級と新技の考案」

 俺は目が覚めた時には医務室のベッドで寝かされていた。おれが覚えている限りでは炎に包まれて意識が失われた記憶が脳裏に焼き付いている。それを思い出した瞬間に俺の敗北で終わったことを悟らせた。やはり、あの女性術師には勝てなかったのだと思った時から自分は爪が甘かったのかも知れないと後悔の念を抱く。しかし、これでまた新たに課題が出来たことで俺も前進する一歩を進んで行きたかった。


「やぁ? 昨日は惜しかったね? 昨日の一戦で君からずっと目が覚めない状態が続いていたんだよ。きっと相当なダメージを受けたと見ても良いな? しかし、それにしても悔しい結果だったよ」


「貴方は……?」


「私は神門真介だ。【闘竜】の術式を扱うことで有名だと思う。これでも一級術師の一人だよ。よろしく」


「貴方があの真介さんですか? 噂には聞いてます」


 俺は知っていた。真介と言う魔術師は五千年の時が経った今でも継承されている術式の一つで有名である。やはり、古来に生きた竜の生態を術式にして扱われているらしく、これは遺伝子を託して来た結果が【神門一族】の家系だと聞いたことがあった。そんな人物が俺の横たわっているベッドの近くで寄り添う形を築いていた理由が分からない。けれど、以前は真介さんから休んだ方が良いと助言を頂いたことで、昨日までの成果が出たのであれば少しは感謝の気持ちが生じた。


「あの真介さんが俺に何の用事ですか? 多分俺の一戦は見てもらえたんでしょうけど、残念ながら負けてしまいました」


「問題ないよ。君は一級術師にも近い相手と対峙したんだ。彼女は直に進級が決まった魔術師だったんだ。だから、彼女は対象から外そうと思っていたところだよ。そこで君の試験を再開しようと思って来た。また四戦目から始めて残りの二勝が出来れば進級でも良いだろう。どうかな? こんなに美味しい話はないだろ?」


「本当ですか⁉︎ それならお言葉に甘えたいです!」


「さすがに断る人間はいないとは思っていたよ。しかし、君がそれを志望するなら再開する方向で話を進めよう」


「ありがとうございます! 感謝の気持ちでいっぱいです!」


「どうも致しまして」


 そんな風に持ち掛けられた話を俺は断らなかった。やはり、今回の敗北は少し悔しくて拭い切れない後味が俺の未練を生じさせていることは事実として挙げられる。しかし、実際に再戦が可能になるのであれば、それに挑戦しないではないと踏んでいた。再戦を通して残りの二勝を遂げれば、俺は進級が果たせることが大きく自分に与えられた機会である事実を示している。


 そして俺が退院した後で再戦が行われる日付を告げられた。それは三日後の午後から始まると真介さんは教えてくれる。それまではどんなことをしていても問題はないと指示が出ていた。しかし、前日を迎えた時点で身体は休めることは怠らないで全うする方が良いと真介さんは言う。それは俺としての従って置こうと思ったアドバイスだった。


 取り敢えず俺は師匠と修行場で落ち合う。師匠は俺が聞いた話に対して運が良かったのであると今回は言えることを示した。これまでは試験で落ちてしまった魔術師は再戦に挑める奴は一人もいなかったことから少し反則にも思える事実が師匠に不満を抱かせているらしい。しかし、実際に四戦目が一級術師の候補だったのなら仕方がないと判断することが妥当であると考えていた。


「今度は試験を運営する側は君が負けない確信を持っている。そこで君は合格した後で任務を与えたいと上層部は考えているみたいだから、そこはしっかりと務め上げてくれると助かるよ。けど、君の敗退が決まった時点で次に受けられる進級試験は五ヶ月後と定める方針らしい。でも、君の術式はとても強いと判定が下っている。君なら燐火を超える可能性があるとまで言われる始末だ。ならば、越えて見せてくれたまえ」


「分かりました。やって見せましょう」


 師匠の期待に応えるために俺はさらに修行を重ねるつもりだった。それも、今度は敗戦した穂村燐火と言う一級術師にも相当する彼女を倒す目的を持って挑んで行くことが決まる。やはり、燐火が相手だと俺の術式は不利だけど、それでも彼女が誇る火力以上の冷気を発揮すれば勝利につながることは明白だった。しかし、そこまで到達するのは難しくて簡単なことじゃない。けど、俺は燐火を超えて見せると言った気合を入れて修行に挑んで行った。


 そして三日が経過した後で俺は準備を万全に整えて試験会場を訪れる。観客席はすでに空の状態で誰も見ていないところで時間が開始されることを告げられた。そして俺に与えられたチャンスを逃さないために全力で向かって行くことを準備期間で身に付ける。それが今度は負けない意思を働かせて残りの二戦を勝ち上がりたかった。


「今回の観客は博間時政さんと神門真介さんの二人だけが来ておられる。彼らは一級術師として君の一戦を評価するための特別審査員の資格を持っている。なので、この二人の判定が不合格を示した場合は進級は諦めてもらう。では、戦闘の準備に入りなさい」


「はい!」


 四戦目からの開始が促される中で俺はすでに魔力を全身に巡らせて術式ならいつでも発動できる姿勢は整っていた。やはり、審査員でもある二人を認めさせるだけの実力が示さなければ俺が落ちることは決まっている。しかし、二人なら甘い評価をして来る可能性はあった。けど、この場所で不正を犯す真似はしないのが二人だと考えている。


「では、始め!」


「よろしく頼むぜ!」


 俺の相手は師匠から教えてもらった情報によると、残りは体格と術式のどちらかが劣った魔術師を派遣しているらしかった。しかし、侮っている評価が下された時は減点対象とみなされることは事前に伝えられた通りだと言う。ここは全力でぶつかっては敗北を恐れない気持ちを持って取り組んで行けることが条件だった。そうやって俺は四戦目に挑んだ。


 そして相手が合図を聞いてから即座に攻撃を仕掛ける。それは術式の発動が見られており、これを攻略する鍵は相手の動きで判断させてもらうこともあった。しかし、この場で生き残りたいなら足掻いて進め!」


「はぁい!」


 そうやって気合いを入れて相手が仕掛けて来た効果脇を避ける。やはり、この手の魔術師は大して張り合いも持たない奴が多かった。それを見込んで師匠は審査員を務めていることが強く出ていると思われた。けど、本当に凄い魔術師が相手なら、あの時の焦りを感じさせてくれない程度の実力であることが分かる。しかし、それでも俺は不合格と言う判定が下らないように全力を込めて技を放って見せた。


「冷結鉄拳!」


 俺が相手を殴ると同時に触れた箇所が凍り付いて行く。これは冷気を帯びた拳が相手の体に触れている面を凍らせる技と見ても良かった。これは打撃に凍結を加えた技に等しく放たれる。これで戦闘不能になった相手はこれ以上の戦闘は不可能に至った。


「判定は決まりましたか?」


「あぁ。もちろんだ。これは決して揺るがないと思ってくれ」


「俺の方も同じ決断です。これを変えることはありません」


「では、審査の結果を教えてください」


(緊張するな? 今回は圧倒的な実力差が目立つ一戦だった。これでは試験として見ることはできない可能性も少なくない。果たして判定は合格なのか?)


 そんな感じで俺は師匠と真介さんの判定を待つ。しかし、それは期待している通りの答えを得られることが出来た時の喜びは非常に高かった。


「「合格だ!」」


「よっしゃぁぁぁ!」


「おめでとう。これで君は晴れて準一級術師になれた訳だ」


「ありがとうございます!」


「やっぱり相手を圧倒して見せるだけの実力はあった。それを不合格にする意地悪はしないよ」


「同感だ。俺にもそんな冗談で片付けるつもりはなかった。文句なしの合格で良いと思う」


 これで俺は準一級術師の資格を取れた。これは俺の大いなる一歩だと考えても良かった。師匠や真介さんなどの一級術師に認められた事実はとても嬉しく思う。しかし、この二人に敵う日はまだ遥か先にも思えて仕方がなかった。そして俺が感激を表情と態度て見せると、師匠から一つだけアドバイスをもらえる。


「しかし、まだ君では燐火に届かない実力であることは認めるしかなかった。彼女はすでに明日から進級試験を控えた身だ。この先で彼女が産休を果たした時は少し君の指導を頼んで行く日が来るだろう。その時が燐火を攻略する鍵となれば良いかも知れないな!」


「任せてください!」


 そうやって俺は取り敢えず帰宅した。今日から三日間は猶予が出来たことで、修行の時間を設けられる暇が生じる。そして俺が修行場を確保すると、真っ先に真介さんが自分の指導を受けてもらいたいと言って来た。


「え! 良いんですか⁉︎」


「あぁ。君は中々センスがある。そこでどんな訓練を積んで来ているのかが気になる。だから、君を近くで観察したいんだ」


「別に構いませんよ! 俺で良ければ見て行ってください!」


 そんな感じで俺は真介さんを迎えて修行を開始する。そこで真介さんが見せた術式は師匠に匹敵するだけの実力を発揮させられることを知った。それが俺の師匠と互角に渡り合える術式だと告げられる。この数年間で師匠が倒せなかった魔術師は真介さんだけだと言われていることが分かった時点でどんな指導が受けられるのかが楽しみになった。


 そしてまずは真介さんの術式を披露することから始める。真介さんが扱う術式は【闘竜】と呼称されていた。これは竜の姿に変身する術式である。変身が及ぶ時に三段階に分けて形態を変えることが出来た。


 第一形態は皮膚の上から鱗で覆って防御力を大幅に強化する性質を加えて筋力の増量にもなる。


 第二形態は第一形態に加えて翼と竜眼が備わって視覚に作用する術式の効果が生じさせることが出来た。魔力の増量にもなるため、師匠に匹敵すると言われている。


 そして最終形態はこれまでに加えて再生能力と行動速度の上昇、さらに炎のブレスが放出できるようになるらしかった。再生能力が追加されることで真介さんは特に損失の及んでも問題ないと言う。まさに無敵とも言える術式だった。


「俺の術式は大幅に強化することが出来る。それも最終形態にもなると再生能力まで備わってしまうほどの精度を誇る。俺はこれまで怪我をしたことはなくて、病院にも行った経験は少ない。それが故にトップワンと謳われる存在になれた。君の師匠は序列で言うと三位に位置する魔術師だ。そんな人に指導してもらえることは有り難く思えると良いかも知れない。ま、偶にお礼は言った方が良いだろう」


「はい! 分かりました!」


 そんな話を聞いて俺は師匠がどれだけ凄い人なのかが分かった。やはり、師匠は序列三位であふことから俺が目指す先はそれ以上だと心に決める。それが俺わ大きく成長させるなら、燐火ですらも敵わない魔術師になって行きたかった。そんな夢を背負って頑張りたいと思う。


 そして俺は真介さんが言い渡したトレーニングで鍛えて行った。それは魔力を全身に行き届かせて冷気の操作を自在にする役割を担っている。冷気で全身を包んで凍らせてることで防御力を飛躍的に増幅させる技を作り出す。元々冷気に対して耐性がある俺の身体は動ける程度の凍結を施して防御力の増幅に努めた。それが全身を補ってダメージの軽減を及ぼしてくれる。


「なるほど! これで防御力が増幅してダメージの軽減になっているんですね? これは凄く効果が期待できます!」


「これを使いこなせるのは君だけだ。これで胸を張って準一級術師をやって行けるかも知れないな? やはり、準一級術師にもなると、明白な実力が必要になって来る。だから、その技を有効に扱って準一級術師の本領が発揮できるようになれ!」


「はい!」


 そして俺はこの技がどれだけの性能を発揮するのかを確かめるために真介さんが加減を効かせた攻撃を加えてもらう。それを受ける上でどう言った性能が発揮されるのかを試す機会を作った。


「行くぞ? 軽く攻撃を下す。これで崩れてしまっては技として成り立たない。しかし、少しでも余裕を持てるなら、それなりの性能であることは確かだ。では、攻撃を仕掛けるからな!」


「来てください!」


 俺は冷気で全身を凍らせる。これで防御策は整った。これが崩されてしまわないように魔力の出量を余裕が出来る程度に発揮させる。そうやって俺の肉体は凍結で硬度が上がって防御力が底上げされていると思われた。これで大抵の攻撃は軽減出来ると思う。しかし、これを成功させるには攻撃を受けた時の衝撃で崩壊しないだけの耐久度が必要だった。この時に俺が衝撃の影響で技を解いてしまった場合は、きっと鍛錬が不十分だったと考えるのが普通である。果たしてどんな結果をもたらせるのかが決まる瞬間に立ち会った。


「はぁっ!」


「ぐぅ⁉」


 どーん!


 肉体に受けた衝撃は対象の痛みが生じたけれど、凍結が解けることはなかった。これは凍結させた部位がしっかり攻撃を受け止めている。この状態は俺が想像していた以上に攻撃を防げていると見た。これなら大抵の攻撃は防げると考えても問題は生じないと言える。真介さんが考案した技はとっておきの防御策だと評価しても良かった。


「術式は主に魔力の出量で強化させることが出来る。つまり、今後の努力で魔力が高まればその技も強化を加えることは可能だ。つまり、さらに磨いて一級術師に相当する技に磨き上げると良いだろう。分かったなら交戦の中でも扱えるように訓練する必要がある。だから、それを今から始めたい」


 真介さんの取った方針は非常に役に立つような策ばかりだった。やはり、序列一位の座に就いているだけあると判断できる。真介さんが誇る魔力量にも序列一位である理由を持ち合わせている思われた。そん真介さんの指導は俺をさらに強くしてくれる成果をもたらす。

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