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第三話「進級試験」

 俺は進級試験が始まる前にこの場を設けた人たちの挨拶を聞かされた。それは約三十分の経過で済まされる。そしていよいよ進級試験の開催が宣言された。


「今日はお前が準一級術師に昇格するに値する魔術師かどうかを確かめる試験となるだろう。そこでお前は始めに魔獣の討伐を受けてもらう。今回は試験の合否に関係なく討伐時間を計って順位を付けたいと思う。これは試験を受ける上でいつも行っていることだ。もし、記録が更新された場合はお前に賞金が与えられる」


「マジですか? それは頑張って見ます」


「しかし、実際の最高記録は超えた人物は一人もいないんだ。それを超えるのは規格外かも知れないと言うことで、平均時間内に狩れた場合は賞金を与える方針が昨日の会議で決まった。お前が初めて改正された方針を受けた人物になる。精々頑張ってくれよ?」


「中には魔獣の討伐に特化した魔術師が存在する。魔獣を操作して一戦に臨んだ魔術師も存在した事実が、一次試験を通った時点で平均時間内の討伐が出来た場合は賞金の獲得が発生する。だから、二次試験で落ちてしまっても、一次試験の賞金の獲得条件がクリアが出来れば良い方針が定まったんだよ」


(なるほど。もし、合格しなかったとしても、賞金だけを獲得できるチャンスが一次試験限定で設けられているのか? なら、ここは平均時間内を目指して臨んだ方が利益は大きい訳だ!)


 そんな機会が巡って来たことが俺にやる気をさらに起こさせた。それが内心で生じることで俺は一次試験を合格する上で目標が立てられる。そんな機会に挑戦することを決めた俺が平均時間内でクリアして見せると決心を抱いた。


「では、準備は出来ているか? 今から始まる訳だが、これを逃すと後がないよ?」


「分かってます。でも、準備なら出来てます!」


「よし。その調子でクリアして見せろ!」


「はい!」


 一次試験の内容は至って簡単である。召喚で呼び出した三体の魔獣を討伐すればクリアだった。これをクリアすることが出来ない場合は、準一級術師の素質がないと判断されて進級はなかった話になる。しかし、見事に三体を倒せれば二次試験に進むことが出来ると言った話が試験の内容だった。最後は準一級術師でも成績が低い奴を相手に一戦を交えて審査の判定が下るみたいである。


(まずは魔獣が相手なら簡単に倒せるだろう。これで落ちるなんてことはないはずだ!)


 一次試験には自信があった。これまで相手にして来た魔獣はすべて討伐に至る結果が残されている。それを踏まえて俺は魔獣なら討伐を逃すようなことはしない決心を抱いた。


 俺は位置に着かせてもらうと、そこで視覚を塞がたれる。そして始まりの合図が出た瞬間にそれが外されて開始するらしかった。


(緊張する……。けど、大して失敗を恐れている訳じゃない。きっと俺なら出来るはずだ!)


 失敗が許されることのない試験が間もなく始まろうとしている。そこで俺の塞がれた目が解放されると、すでに感知していた魔獣の魔力が感じられる先を見れば一目で分かる光景が広がった。そこには三体の魔獣が暴れ回っているところに遭遇する。そこは【領域改変】で変形された場所に閉じ込められた魔獣を討伐すると言った内容が一次試験となっていた。これを相手にすることは正直に言わせてもらうと、大して苦戦するまでもないレベルだと内心で思ってしまう。それが実際に口だけでないことを示すために俺が術式を展開させてすぐに討伐に取り掛かった。


「この程度なら瞬殺できるぜ!」


 そんな風に俺は余裕を持って討伐を開始すると、そこで思いがけないアクシデントが発生する。それは魔獣がこちらに気付いた瞬間に素早い攻撃が仕掛けられた。術式を展開する直前で攻撃を受けてしまうかも知れなかったところを咄嗟に障壁を作って防いで見せる。魔獣の攻撃に対して防御柵が取れたことが敗因から逃れた理由にもなった事実が今回の一戦を侮れない一心を抱かせた。


(驚いた……! まさか魔獣でも俺に攻撃を当てることが出来るだけの素早い動きで来るとはな。しかし、これで相手の攻撃はすべて見切った!)


 俺は障壁を閉じた瞬間に再び攻撃が来ることを恐れてあらかじめ術式の展開が速攻で扱えるようにした。そして目の前を塞いだ障壁が閉じれた瞬間を狙って一気に氷結を放つ。これは地面に手を突いて氷結が魔獣の足元まで伝って行くと、直面していた箇所から凍結させることが出来た。やはり、この戦法は相手の行動を封じる手段としては妥当であると思われる。そして氷で剣の形状を作り出した後で斬撃を食らわせた。魔獣は凍った足元が気になって意識が完全に俺から逸れる。そこを狙って俺が作った剣が魔獣を貫通させた。


(まずは一体目だ!)


 すると、そこで一体目が討伐されたことを外で監視していた審査員がアナウンスで知らせる。そして現在の記録が言い渡された。


「凄いです! 平均を大きく上回りました! しかし、惜しくも上位二名には及ばなかったけど、これは賞金の獲得も夢じゃないかも知れない!」


(どうやら一体目の討伐は平均が上回れたみたいだな? この調子で他の魔獣の相手もしなくちゃだ!)


 そして一体目が倒れ込んで息を引き取った様子が窺える。そこで俺が術式を使ったことで二体の魔獣がこちらまでやって来た。きっと俺の魔力を感知して誘われたのだろう。もしかすると捕食対象に選ばれた結果が俺を襲って来る理由にもなるのかも知らなかった。


「向こうから来るとは手間が省けたぜ! 二体とも纏めて倒してやる!」


 即座に拳を凍らせて頑丈に固めた状態で殴打を放つ。これは硬くなった拳で殴り付けることで、自身に痛みが生じない対策を取った上で攻撃を仕掛けた。これで俺は魔獣に大きなダメージを与える。しかし、殴った傍から別の魔獣が俺を掴もうとした。そこを勢いを殺さないで態勢を整えた状態を作る。その態勢からもう一体の魔獣を蹴り飛ばして怯ませた後で着地した瞬間に接近するまでもない距離にいた対象を触れることで凍らせた。魔獣が凍った隙を見計らって再び形成した剣で首を落とさせる。これで三体目が倒されると、殴られて怯んでいた二体目が復帰した様子を窺わせたところを剣が脳天から真っ二つに両断させた。これで二体目の魔獣を討伐した時点で監視していた運営側からアナウンスが聞こえて来る。


「そこまで! この時点で記録を発表させてもらいます。冷斗の記録は何と二分三十秒です! これは平均を超えましたぁ!」


 後で聞いた話では俺の記録は第三位に位置するらしかった。まだ二人の魔術師が俺よりも凄い記録を残している事実は少し感服させられるが、それでも平均を超えたことが目標の達成が示されたことは上等にも思える。


 そして次に行われる二次試験は時間内で済ませる必要がないようで、賞金は一次試験だけに設けられた話だった。しかし、今度はお互いに術式を使わないで一戦を交えることが試験の内容だと聞かされる。実際に術式がなくても戦える術は師匠から散々鍛え抜かれているので、高めの自信が内心で抱けた。これは術式の使えない状況下でも戦える姿勢を整えることが目的としている。術式を使わない実践経験を積んで行くことで俺はフィジカル面を重視して一戦に臨んで行くのであった。


 少しの間で休息を挟んだ俺はあらかじめ術式が使用されないための腕輪を付けて封じて置くことを強いられる。これは根本的に魔力が扱えない状態にすることで術式の発動を抑える仕組みが適応されていた。この仕組みは規則を破った魔術師が牢獄で過ごす時に及ばされる作用と同じ効果が表れるようになっている。つまり、俺は牢獄の中にいる時と同じ状態を作られていた。


(本当に魔力が使えない。この状態だと術式の発動が出来なくなっている……!)


 そんな風に俺は術式が扱えない状態になった時から非術師の気持ちが味わった。それもこれまでの間は魔力の流れを感じ取れる体質だったはずが、これすらも出来なくなった身体は少し不便を実感する。しかし、この状態で戦わないといけないのが、虹試験の内容ならフィジカル面を大きく利用した戦闘を心掛けたいと思った。


 そして休息は五分で終わる。この後で俺が相手をするのは準一級術師ではあるが、実際はこれを三人は倒すことがクリアとなって三次試験の進出が決まるらしかった。魔力が封じられた状態でも交戦をするための経験は滅多に味わえないと言われている。しかし、実際は一般市民の中でも凶器を振り回す犯罪者を相手する時は術式の使用が禁じられることを想定した上で交戦を始めて行くのだった。


「それでは休息を終えた時点で二次試験を行います。相手は準一級術師に相当する実力がありますが、実際の成績が著しく低いとも言われる人物に依頼しました。これで敗退されてしまうと、昇格は難しいと判断が下ります。是非とも勝ち上がってください」


 聞いた話によれば俺が相手する魔術師は今回の一戦で勝てなかった場合は、準一級術師の資格を剥奪される予定が控えている。しかし、それを哀れに思うから加減して負けることは出来ないと内心には生じていた。ここは実力を競うことを重視する場所である。だから、それが俺に加減させない理由にもなることは確かだった。


「悪いが勝たせてもらう。ここで敗れた場合は資格の剥奪が決まる契約をしているんだ。せっかく準一級術師になれて報酬だって増えるはずが、任務が格段に難しくなった時から失敗を繰り返した結果がお前と交戦して勝利する簡単な話ならやってやるぜ! この機会を逃さないために鍛え直した身体でお前を倒す!」


(随分と追い詰められている様子が窺える。それも、準一級術師の枠では任務の難易度が高くて付いていけなくなったことが理由で挽回のチャンスを与えられたんだな? それなら悪いけど、剥奪されてもしょうがない奴は鍛えてもらう他はない。慎司だって同じ道を辿った人物の一人になる。ならば、この場で切り捨てられる人物は徹底的に落として行くことにする……!)


 俺は決心を固めた。これは決して揺るがない意志が強く自身を支配する。そしてこの一戦で相手が視覚を剥奪されても、俺がそれをどんな感じ方をしようが問題はなかった。だから、俺の目指す場所は三勝である。


「では、お互いに向き合って握手をしてはなれなさい。この握手は礼儀を全うする儀式だと思うと良いでしょう。この一戦は慈悲を与えて負けると言った判断でも構いません。しかし、敗退した者は二級術師に戻ってやり直させます」


「よろしく」


「うるせい! お前はやる気なんてだしてんじゃねぇ!」


(うざい。こいつは殺しても良いかも知れないな?)


 そんな殺意を沸かせた対戦相手は余裕の笑みを浮かべた表情で俺を見詰める。それが少し違和感を抱く理由にもなっていることが感じられた。しかし、実際は術式の使用を禁じた上での一戦が昇格またはやり直しが下される。つまり、これは二級術師のやり直しを賭けた一戦を強いる試験となった。


「それでは始め!」


「先手はもらったぁ!」


相手が真っ先に殴り掛かる。しかし、それは視覚で捉えることが出来るほどの速度でしか出せていなかった。この攻撃速度では俺が日頃から出した成果を超えることは出来ない。そんな自信が生じた中で俺は反撃を始めた。


「外れたな? しかし、これは避けられないだろ?」


 その時、俺は確信を得た。それは魔術師として生きるために必要となる鍵である。殴打を避けた後はこちらも同じ攻撃を確実に顔面で捉えて瞬殺を決めた。


「ぶはぁつ⁉︎ なんて奴だ……! この威力はどこから出せるんだよ⁉︎」


「仕方がない。降参してくれないか? 転職がお前にお勧めだ」


「バカにしているのか! 俺だって始めは準一級術師を目指した日々を送っていた! それが何よりも俺の現状に文句が生じる。それしかお前を倒せないんだよ!」


「知らないよ。この腕輪が付けられる前にお前の魔力はトイレで確認させてもらった。さすがに魔力の低下を招く任務遂行の実績がないのも全部は不足によることが大きく裏目に出ている。だから、これ以上は認められないルールだったはずですよね?」


「はい。この時点で相手が降参した場合はその場で冷斗様の勝利です」


「畜生ぉ! 覚えて置けよ!」


 そうやって一人目が逃げ出した。すでに借金取りが来ていることに気付いた結果だったみたいである。後で聞いた話によると、あらかじめ借金取りは呼ばれていたらしかった。それも今回の一戦は資格の剥奪だけではなくて、勝利を収めた時は借金の返済を政府側が引き受ける契約をして挑んでいたようだ。それが俺の勝利が決まった時点で彼はすでに終わった日々を過ごさないといけなかった。成績によれば報酬が出ていない分の生活費が払えないにも関わらず、怪我をして帰還した回数が三十回を超えた時から彼は魔術師の辞職が決定していたらしい。それはかなりお気の毒だった。


 しかし、実際に慎司だって同じ道を辿っている。それが彼にも通じる話ならしょうがないと思う他になかった。


(今頃は慎司も何をしているかな?)


 ふと、そんな疑問が内心に生じた。


 一方の慎司はすでに路地裏で犯罪組織の居場所を探し当てると、そこで幹部の一人が彼を迎える。


「歓迎だね? 君は複数の術式を所持できる才能を持っている。なら、それを覚醒の準備に入ろう。まずは戦闘経験から始めるのが一番だ。きっと覚醒させて正規術師を見返してやろうぜ!」


「そのつもりで来た。すでに僕は捨てられた身だ。殺処分だって怖くない。好きに扱ってくれ」


「了解! 君は強くなれる!」


 そんな風に【死神のシャドウ】は慎司を受け入れた。それも、シャドウが慎司の覚醒を迎える際の手伝いをしてくれると言った発言が彼に希望をもたらす。

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