第十三話「妹の訪問」
俺は合宿を終えて帰宅した。自宅に戻った後で洗濯物が溜まっている現状を迎えると少しだけ面倒に思えてしまう点がある。けど、それをこなさないで生きることは出来ないと分かった上で俺の行動は生活を保つ方向性を辿った。
「そうか? 傷は完全に治ったのか? それは良かったな?」
偶然の再会を鋭利さんは大した感動の意思も見せない態度で接して来る。俺はそれが少し寂しく感じるようだが、実際に会っていなかった期間はたったの三日であることが彼女の気が向かなかった理由にもなった。
そして今回は任務に行く途中で鉢合わせてしまった偶然が生じたことが理由で鋭利さんに声を掛ける決心を抱く。それが反応の薄い様子を窺った瞬間に凄く無駄が生じた感覚が起きたことで後悔した。
「では、これから任務があるんで失礼しますよ?」
「おう! 頑張れ!」
そうやって俺は鋭利さんと別れた後で任務に向かうための車に乗る。そこで運転手が場所を確認してから車を動かすと、しばらくは外を眺めながら現場の到着を待った。
「着きました」
「ありがとう。また後でよろしく頼むよ」
「了解です」
今回の任務は少し時間が掛かることが予測される内容を任された。その内容は不正術師を尾行してアジトを見付け出すことである。気付かれないことに専念して不正術師の身元を暴くことを兼ねて上層部に報告する予定が入っていた。
「あいつだな?」
俺が見付けた男はこれまで三人の非術師を殺した経歴を持つ魔術師だった。奴はの他に仲間がいることが調査で分かった時点で尾行対象のうちに入った人物になる。
尾行を始めて五分が経過したところで、そいつは仲間と合流を果たす場面を目撃した。その仲間と思われる相手は女性で情報が正しければ非術師でありながら不正術師と深く関係を持った人物だと判明する。その二人をさらに追って見ると驚愕の事実が発覚する。
「よぉ? 遅かったな?」
「悪い。この女がトイレでメイクを直すとか言い出したもんでな?」
「別に良いじゃない。女はメイクが乱れることを嫌うのよ」
(まさかあいつは【術師狩り】の一人に数えられる魔術師だ! こんなところで発覚するとはな……)
俺が最初に尾行していた男と合流した相手は【砕牙の獅子】と呼ばれる不正術師だと思われる。そいつの術式は肉を食べて身体をライオンに変身させる能力を扱う魔術師だった。二十四時間が経過した時点で再び肉が体内を通らないと術式が発動しない条件がこいつの特徴である。奴の口から生える牙は何でも噛み砕いてしまうほどの力量を誇ると言われていた。実際に殺して来た対象は正規術師と不正術師を問わない形跡が残されている。
(あの【砕牙の獅子】は放って置けない。しかし、上からの指示を待つか?)
取り敢えず現状を上層部に報告した。すると、奴をマークするための人材を派遣してくれると連絡が来る。そいつは見た対象者に触れて印を付ける術式で、特に追っ手を追跡する時に役立つ人材で知られていた。そいつが来るまでは俺が尾行を続けて見失わないことが最低でも条件として提示される。
そして例の正規術師が到着した時点で奴は店の中で食事を取っている状況下にいると告げた。そこを派遣された印本次郎が術式を使って刻印を試みる。それは無事に完了して【砕牙の獅子】の居場所は特定できると思われた。
「これで奴は二十四時間のうちは居場所が特定できます。しかし、僕の術式は一人に一人までが限界です。なので、今回は【砕牙の獅子】に限定して術式を使いました。この効果は二十四時間が限度になるので、その間で倒せることがベストです。きっと冷斗さんなら大丈夫だと思いますから絶対に倒してくださいね!」
「分かった。俺に任せろ」
そんな風に俺は次郎の期待を背負った。これは重大な責任感が伴われる気がするが、それはともかく奴はどこに行っても居場所が分かる状況の中に存在している。それが今回の任務で活かされることは確かだった。
「では、もう少しだけ追跡します。残りが五時間になるまでは手を出さないように指示が出たことでしょう。ここは隠密行動でお願いします」
「おう!」
その後からは【砕牙の獅子】を尾行しながら様子を窺う。その先で彼が会って来た連中は無関係と思われる人を除いて非術師は全員が警察官の手で捕まったと言う報告を受けた上で対象を追って行った。そこで交戦に移るまで残りの時間が僅かに差し掛かった時に俺が奴の前に出る。
「そこまでにしてもらおうか? お前はすでに俺が行く宛を把握している!」
「な、何だとぉ⁉︎ 俺を尾行していたとでも言うのか⁉︎」
「そうだ。そして時間が迫って来た。そこでお前と戦うために人は非難させて置いたんだよ? これでお前を相手にして戦えるぜ!」
「ここまで追って来たのなら、返り討ちにしてくれるわぁぁぁ!」
奴はライオンの姿に変身した。彼の術式は変身後の身体能力と互換がとても優れる性質があると聞いている。そこで俺は以前の策略で考えていた攻撃で倒す判断を下す準備を整えた。そして俺がこいつを倒した時は進級の可能性が増えることは分かっている。そして利用した上で俺の思考は相手を窺って術式の使用を判断して行くつもりだった。それを実行するための判断で向かって行く。
(まずは怯ませてから凍結に移る! これは確実に相手の急所が狙えれば可能性が広がるはずだ!)
そして俺の攻撃が【砕牙の獅子】を直撃する。それが決まった時に相手の様子に隙が出来たのなら、そこで凍結を試みる決心を始めから考えていた。しかし、一撃で怯んでくれることはなくて追加を加えた瞬間に奴は回避して反撃を開始する。
「遅いぞぉ!」
「何っ⁉︎」
そこで避けられた上に反撃が向かって来る様子が目の前で起きる。それを避けられなかった俺は少しのダメージを与えられてしまうが、それは気にしないで今度は確実に当てるつもりで殴った。
「おらぁぁぁあああ‼︎」
拳が【砕牙の獅子】を触れた時点でこの勝負に決着が付く理由ともなるはずだった。今度は冷気を帯びた拳で殴り付ける。冷たくなっていた拳に触れた奴の身体は激痛が走って大きなダメージを受けた。そしてその一撃が奴を怯ませた瞬間を狙った凍結で何とか行動が出来ない状態を作り出す。
「これで決まったぜ。どうやら俺の勝ちみたいだな?」
「く、くそぉ……」
奴が凍り付いて動けない状態でいる現状に対して観念した様子を見せた。やはり、凍らされた状態は敵側としては致命的にも等しい状況であることは間違いなかったと言える。それに至ってしまった人間は体が冷やされて今すぐに解放されたい気持ちが生じている状態になっていた。しかし、こちらとしては拘束するまでは凍結から解放させることは出来ない状況下にある事実は確かだと思われる。
そして警察官の到着で【砕牙の獅子】は身体を徹底的に縛られて凍結から解放を受けられた。拘束されて行く奴は悔しそうな表情を浮かべながら牢獄まで輸送される。彼の罰則はきっと殺処分にも等しい罪状を受けるかも知れないと警察官が教えてくれた時から自業自得であることが俺の内心で抱いた心情だった。しかし、殺されてしまう罪を犯した人間は同じ罰則で裁かれる事態は少し可哀想に思うこともある。けど、魔術師は法律の元で術式の使用を認められることが治安に繋がっている事実は何事にも変え難い現実だった。だから、この世の中は法律がすべての理を制してしまう現実が治安の保持を守る手段として用いられるかとは確かである。
「ご苦労だった。合宿で編み出した戦術は活かせたのかな?」
「はい。試せていなかったので、どこまで通じるのかは分かりませんでしたけだね? しかし、どんな攻撃が相手を怯ませるのかが今回の件で編み出せたと思います」
「それは絶好調だね? やはり、合宿での経験は無駄じゃなかったと言える」
「はい!」
例の一件が終わった後で再び鋭利さんと合流した俺はそんな話を二人で交わす。それは実践で得られた成果の報告と言う形で鋭利さんに伝えた。それを聞いた鋭利さんは少し安心した様子を窺わせる。そんな彼女を見た時に俺の方にも何だか安心感が生じた。
そして鋭利さんと別れてから帰宅した後の話である。俺は風呂で汗を流していると、そこで自宅の玄関の方から誰かが入って来る音が聞こえて来た。
「誰だろう?」
その時点で俺はすでに風呂から出るタイミングだったことが理由でタオルを巻いた状態を作って玄関を見に行く。すると、そこで妹の氷城雪華が沢山の食品が詰まった袋を地面に置いて俺の姿を捉えた瞬間に事情を話し始めた。
「はぁ? 俺のうちで泊まりたいだと?」
「そうよ。ダメだった?」
「当たり前だろ。こっちはお前を抱えて生きる余裕なんてないんだよ」
「バカ。少しは妹を大切にしなさい」
「なんて勝手な話だ」
俺は取り敢えず雪華の事情を把握すると、うちで暮らしたいと言う希望を拒否して今にでも追い出そうと試みた。しかし、今の雪華は辞職した後でうちを訪ねたみたいで、買って来た食品は居候を認めさせるために自前の金額で払った差し入れに等しいと彼女は説明を加える。それを見た知った瞬間に嫌な予感が内心に生じた。まさか全額を使ってこれ。購入して来たのかと尋ねた時から仕方なくうちで引き取る他に手段は皆無だと判断するしかないと言える。
「それじゃあ取り敢えずお風呂に入っても良いかな? 服は適当にお兄ちゃんの奴を借りるで良いでしょ?」
「食品なんて買い込んで来ないで服ぐらい用意しろよ。気を利かせたみたいだけど、こんなに不必要なものばかりで全然嬉しくないわ」
「しょうがないじゃん。これでも考えて買ったつもりだったんだけどな」
「しかし、俺の好きなお菓子があるだけマシだな?」
そうやって俺は袋から取り出したお菓子を食べ始める。これは俺のために買ったものなら適当に頂いても良いと判断した。お菓子の袋を開けて中身を摘んで食べた時の感想はこんな事態でも少しは良かったかも知れないと言う安心感が強い。
そして雪華は風呂から上がると、俺の服を着た姿で現れた。それは少し余裕があるぐらいのサイズだったことが俺に違和感を与えて来る。しかし、それを気にしないで着こなす雪華を見た時にそこまで気に掛ける必要はないと判断した。
それから雪華の寝床を確保するために広間の家具を退かして余分にあった布団を敷く。その布団で雪華は文句を口にすることもなく受け入れる様子を窺わせた。寝床が出来たことに対して雪華が真っ先に感謝の一言を口にする。それを受けて俺の行動は少しでも雪華に歓喜させたのだと思わされた。
次の日。俺が起床した時に雪華はどうしているかが気になって様子を見に行った。すると、あどけない寝顔を晒しながら寝る姿が目に入った瞬間にそれを見てしまった事実を隠しさないといけない衝動に駆られる。俺はすぐにその場から立ち去ると、再び自室で寝顔が見られた事実は内緒にしようと決意した。
それから本格的に起きて来た雪華は俺が目撃した長尾の件を知らない様子で挨拶して来る。そこを挨拶で返した後で雪華の向かった先は洗面所だった。そこで顔を洗って眠気を取る姿を見た時の様子が何気なく順応しているように思えたことが少し違和感を生じさせる。これまで男女が二人で過ごす部屋で一夜を明かした経験が雪華にあるのかと思わせるぐらいの順応が窺える様子に対して少し疑惑を抱かせた。しかし、何の違和感も抱いていない様子で洗面所から戻って来た雪華は俺の正面に座って話を始める。
「今日の仕事はあるの? お兄ちゃんは私と違って特殊な力があるじゃん? そこが少しわからないところがあって疑問が多かったんだよね? その話が聞きたいな?」
「聞いても対して面白くもないぞ。強いて言うなら魔術師は命を張って戦うお仕事だ。この間の合宿でも深い傷を負ったぐらいだよ」
「へぇ? 大変なんだね?」
雪華は俺が話したことだけで魔術師の存在を少しは理解が出来たと言えるかも知れなかった。それが俺の苦労を知った瞬間であるのなら、それは理解者が一人だけ増えたことで良いと思われる。そんな風に世間は魔術師がどれだけ大変であるのかを知らない輩が多く存在することが非術師を救う理由を拒んでしまいたくなる時が少なからずあった。だが、その思いで人を殺してしまう行為が重たい罰則が下る理由にもなる事実が抑圧だと身に染みて感じさせる気がした。




