第十一話「実技訓練」
俺は合宿先で行われたトレーニングを始めて一日目が終わった。この日はもう引き上げて後は男女別の宿泊施設で入浴を満喫する時間に差し掛かる。やはり、この施設が設ける浴場はとても広くて温泉が沸いていた。そこでお湯に浸かると体の癒し効果が生じて心まで安らいでしまうのだと鋭利さんの口から告げられる。
「女の方は三人しかいないんだろ?」
「十分に広いからそこまで人数は気にする必要がありませんよ?」
「それは言えてるけど、向こうは独占して入れるところが羨ましくてじょうがねぇ!」
理由がよく分からないな……」
何で鉄雄がそのまで少人数を羨んでいる理由が分からなかった。この人数で入れるスペースは結構広くて大した不満が生じることはないと判断が下せる。しかし、それでも鉄雄は不機嫌になって少し難しい顔をしていた。
そして風呂から出た後の時間は夕食となって料理がテーブルに並べられている現状を目で確かめた。やはり、美味しそうな食べ物が多く並んだテーブルの椅子に座ると、そこで鋭利さんが食事を開始する一言を掛ける。
「では、よく味わって食べなさい! ここでのお代わりは自由とする! 幾らでも食べてくれ!」
そんな一言がその場で響いた瞬間の参加者はとても早く料理が食べたくて見入っている雫がいた。しかし、雫の我慢はこちらにも十分と伝わることが理由で先に飯を箸で掴んで口に頬張る。
「う〜ん! 美味しい!」
「そうだろ? 術式を用いた料理が得意で世間でも注目を集めた一人として数えららているわ。後でお礼ならして来ると良いよ?」
「そうします!」
そんな風に雫がお礼がしたい気持ち抱けるほどの料理が食べられたことは俺にも及んでいる事実が自分の行動を起こさせる。それは俺もお礼を言いに行くことを決めて一緒に連れて行ってもらう決心だった。
そして夕食でもデザートが用意される。その一品は【桃】でかなり美味しく頂けた。俺は元から桃が好きだったこともあってすぐに食べ終わってしまう。桃は二個目が頂けたので、遠慮なく食べさせてもらった。
「お腹が膨れたね?」
「そうだな? 後は明日に備えて身体を休めるだけだ」
「その前にお礼して来ないとダメだよ。早く行って来ようね?」
「分かった」
ここは二人で厨房に向かって行く。そこで自分が作ったご飯を食べる様子が窺えた料理人さんを見付けて雫が真っ先にお礼の言葉を送った。
「今回はご飯の用意をしてくれてありがとうございます! とても美味しかったです!」
「俺からもありがとうございました」
「別に構わないんだよ。そこまでする必要なんてないのにね?」
「しかし、美味しく頂けたことは事実です。そこは感謝している点でした」
「それは良かった。この三日間は私が作ることになるから残りの二日間も良く味わって食べてくれると嬉しいよ」
「「はい!」」
その後で俺と雫は広間に戻った。そこではトランプでババ抜きをして遊んでいる参加者が窺える。それに加わっていない人は二人ほどいたことを聞いて俺は入らなかった。雫は一ゲームが終わった後で入る予定を告げる。
そして肝心の俺は広間から離れた場所に来ていた。そこは本が沢山置いてある場所だと分かる光景が広がる。そこで俺よりも前に来た鉄雄が一冊の本に手を出していた。
「んぅ? お前も来たのか? ここは術式が纏まった資料が山ほどあることはあらかじめ鋭利かは聞いていた通りだ。お前が来た理由も同じなのか?」
「いいや。俺は単純に彷徨いていただけ。そこまで本に興味があった訳じゃない」
「それなら良いんだ。読書を強要するつもりはない」
「分かったよ」
そうやって俺は本の並んだ場所から離れて行く。その後は広間の隅にある一般の人が利用する冷蔵庫を開いて飲み物を頂いた。それは俺たちのために用意された飲料で、真っ先にオレンジジュースを開けて飲んでみる。俺は元々オレンジジュースが好きで、いても好んで買って飲んでいた。
そしていよいよ就寝の時間が来た時に鋭利さんが全員に声を掛ける。すぐに寝ることを強いられて布団に入った俺は目を閉じて睡眠に入った。そうやって俺の疲労感を取り除いて明日に備えることを優先した。
次の日。俺は誰よりも早く起床する。昨晩は十分に睡眠が取れたことから今日はとても目覚めが良かった。それに眠気にも余裕が出来たことで二日目の合宿に関しても頑張れる元気で溢れている。
そして俺が広間に顔を出した瞬間に自分よりも前に来ていた鋭利さんの挨拶が向けられた。それを俺からも挨拶で返してお互いが起きた証を示すことが出来たと思う。
その後から起きて来た残りの参加者とも挨拶を交わして今日が始まったような雰囲気が周囲に漂っている感じがした。まだ眠そうにしている雫や華絵流が目を擦りながらあくびをする瞬間を見た鋭利さんは二人に向けて心配する様子を見せる。
「二人とも大丈夫か? まさか夜更かしなんてしてないよな?」
「してないです」
「私は朝に弱いんですよ。朝の時間帯はいつもこんな感じなんです」
「それは今後の活動が不安だな? 正規術師はいつ頃に任務が言い渡されるのかが分からない職だ。それも準備一級術師ともなると、任務に必要とされた時は真夜中や早朝でも連絡が来るぞ? これまで奇跡的にそれがなかったようだが、今回の合宿に参加した奴は多くなって来る傾向が強く出るだろう」
「分かってますけどぉ……」
雫が少し苦痛のような空気を漂わせる。それは朝になって来る任務に対する苦手意識が起こした不安が感じられた。しかし、実際にこのメンバーは特に強くして積極的に任務の参加を希望したかった奴を集めるための合宿であると鋭利さんは告げる。つまり、俺たちは不正術師と対峙する可能性を高める場所に来ていると理解した方が良かった。
「まぁ、俺は上等ですよ。何せ準一級術師になった理由は多くの活躍を見せたい一心が強いですからね? これぐらいで苦痛を訴えることは弱者だと思われ兼ねません」
「さすがに鉄雄くんはやる気が見られら発言を平気で公表する勇気があるね? そこは私としても感心させるところだよ」
「任せてくださいよ!」
そんな感じで前に出て行く鉄雄の姿を見た瞬間に今はアピールして期待を背負う行いが信頼に繋がるのだと悟った奴は目の色が変わる。やはり、ここでやる気を示して置くことは今後の信頼を大きく揺るがすことが今の様子で分かった時から進んでアピールする奴が増えた。
「その発言は私にも言えることがあります。こう見えも鉄雄や燐真と同等のフィジカルを持ち合わせた私なら不正術師を相手にしても楽に仕留められるでしょう。鉄雄だけがやる気で満ちていると思うことは止めてください」
「同感だ。俺でも不正術師は倒せます。この場に呼ばれたのだって向こう側が決めた人材の集まりなら俺にも期待が込められている可能性は高いですよね?」
「それは言えている。今回の合宿に参加したメンバーは少なくとも期待が込められた人材と今後の活躍を積極的に行って欲しいと願った人たちが開いた会になる。だから、例えば準一級術師になったばかりの冷斗はこれから見せ場が出来る人材として呼ばれた可能性がある。だから、この先で上層部に見せて置く能力は積極的に披露すると良いかも知れないな?」
「ならほど。分かりました。頑張ります!」
(少なからず期待されていることには変わりがない。だから、ここで鍛えた分だけ任務で発揮して活躍することがアピールに繋がるんだな?)
そんな風に考えた俺は一気に目指す場所が定まって来た現状を迎える。そして俺の今後が任務に必要となる期待を背負って行くことは分かり切った話だった。しかし、実際に俺が持つ術式は一度でも決まってしまえば後の攻略法は簡単だと考えられる。それを成立させるためには術式の展開速度が問題の鍵を握っていた。それがどうにか極限まで高められると今後は有利に進められる。
俺が巡らせた思考は目標を見付けた。後はそれを身に付ける努力を惜しまないことが上達を促すのだろう。だから、まずは合宿で鍛え上げることに集中する必要があった。
そして俺たちは今日の予定を告げられる。今日は実技に関する鍛錬を積んで行こうと考えているらしかった。それもお互いの弱点を見付けるための交戦を行って浮き出た答えを補修する特訓に移ることが目標となる。
「では、話した通りの課題をクリアして行くよ! ここで課題が見つかった奴はその解決を目指して取り組んでもらう。そこに辿り着くためには一戦を交えることから始めるのが一番だ! 分かったなら対戦相手を決めて早速交戦だよ!」
そんな指示が出た時に他は周囲を見回してどんな相手が当たるのかを予測しているようか様子が窺える。それは俺にも言えることで出来るなら燐真や鉄雄なんかと当たりたい気もした。しかし、この二人は強いと評価されているところがあるので、俺が相手した場合はちゃんの通じるのかが不安である。それだけの強豪とも呼称できる相手を選んだ行くのは少し勇気が必要だと思った。けれど、それが相手に出来ないと俺はいつまでも弱い状態が続くと確信している。
そして鋭利さんは対戦相手の選択を取り敢えずくじで決める方針を取った。それが相手を決めて行くことをスムーズに進めらる方法であるが故に運勢が問われる結果が生じる。しかし、そこで相手が弱かった時は仕方がないと思うべきであるかに意義があった。
「決まったかな? それでは第一戦の組は前に出なさい!」
「初めは私よ?」
「ほう? 相手は同性か? これは楽しくなりそうだ」
「こっちだって負けてならないのよね?」
「その言葉はすぐに崩れて後悔することは決定された運命だな?」
「良いわ。こっちは調整して相手するわ」
「本気で来ないのか? それでは瞬殺してしまうぞ?」
「そんなに自信があるなら退屈させないでよね?」
そんな感じで二人が前に出た。二人は雫と咲子さんだった。この組み合わせはきっと雫が不利になることは分かっているが、それでも彼女は勝利する自信があるらしい。その自信を砕けるだけの実力は咲子さんに出来ることが予測した結果だった。しかし、雫の一戦で分かった行動パターンは上空に逃げて遠距離からの攻撃を喰らわせる戦術である。雫は相手を水の中に閉じ込める技で窒息を狙って来ることで戦闘に勝利する希望を見出したけど、そこで一度だけ俺に敗れている結果を残した実績があった。これは少しだけ期待して見届けたいと思う。
そしていよいよ始まろうとしていた決戦が幕を開ける頃に迫った。この一戦は恐らく咲子さんが有利に思えてしょうがない組み合わせだと考えている。咲子さんの言っていた情報が正しければ、彼女のフィジカル強度は燐真に匹敵するほどだと口にしていたことが勝率を高める理由になった。しかし、咲子さんは遠距離の相手に攻撃を届かせられなかった場合は雫が上空に逃げた時になって勝利する手段がなくて敗北が決まる恐れがある。つまり、これはどっちが勝利を収めるのかは現時点で分からなかった。どんなに強くても攻撃が的中しなかった時はどうやって勝利は望めない。雫の飛行能力をどう攻略するかが勝利に繋がって来ることが言えた。果たしてどっちの勝利で終戦を迎えるのかが見どころである。
貴方に勝つ方法ならあるわ! 貴方が遠距離に弱いことは知っている! ならば、そこを突くことで勝率は変わる!」
「上下に逃げて勝とうなんて甘い考え方は止めなさいりこっちはちゃんと攻撃を的中させる策があるのよ」
「なっ⁉︎ 飛行を攻略する方法があるのか⁉︎」
「ええ。精々空から撃ち落とされないようにね?」
そうやって両者が言い争いを繰り広げるうとに審判を担当する鋭利さんが位置に着いた。そこで双方の言い分を聞いた後で一戦が始まる合図が出る。
「二人とも真剣に相手しなさいよ? どっちが勝っても実力差は後でも埋められる可能性が高いわ! この一戦はあくまでも実技試合の段階に過ぎないのよ!」
お互いの視線がぶつかり合う中で勝利する奴を予測で決める側の判断は術式か体格が決め手となることは多い。しかし、今回は両者に敗因が付き纏っていることが原因で勝者が定まらなかった。そんな中で二人の戦術を予測しながら観戦する試合はとても緊張感を生じさせる。けど、それは今回の一戦で驚愕させる工夫が勝敗を分ける鍵となった事実は確かだった。
「では、始め!」
始まる合図が出された瞬間に変身する雫が空を舞い上がろうとした時だった。それが及んでしまう前に咲子さんが距離を縮めて飛んだ足を掴んで見せる。そして体重を落として身体が落ちた瞬間を狙って上に乗り出した。
「これでお終いよ! 呆気なかったわね!」
「そんなぁ⁉︎ 間に合わなかった⁉︎)
「これで勝負は決まったわ」
「畜生ぉ!」
そうやって咲子さんは上空に向かって逃げる雫を最初から落下させる方法で行くことを決めていた戦術の勝利が窺える。さすがに咲子さんの移動速度は早くて、逃れることは出来ないと判断しても問題なかった。
そんな感じで実技試合が始まったばかりである。この一戦は正直に言うと意味がなかったように思えた。瞬殺では克服する点が見つからないで終わってしまったことが、今回の無意味が生じる結果になる。つまり、この一戦ね判定することは出来なかった。




