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第一話「不満」

 俺の現在は【魔術師】と呼称される職業に就いていた。それは低確率で魔力が宿った人物にしか就くことの出来ない職業で、魔術を扱える奴は命を張って任務に当たる義務を遂行しなければいけない。中でも魔術師は一般人と違って政府から特別な法令が出されており、それを守らない奴には厳しい罰が下される決まりで縛られていた。罰は大きく二種類に分けて与えられることが多く存在している。

 一つ目は術式の使用が出来ない牢獄で下された罪状の規模で定められた日数を過ごすことが挙げられた。牢獄に入れられた魔術師で逃げ出せた実例はなくて、そこは厳しく管理が行き届いた環境が整っている。多くは仕事に復帰する猶予が残された奴が入る場所なので、牢獄で過ごしている間は筋トレをメインとした活動が求められていた。そうやって身体が鈍らない程度に鍛錬を積ませて仕事が再開できる余地がある。

 二つ目は魔術師が最も恐れている罰として掲げられていた。それは殺処分である。これは罪状が非常に重くて生かしておけない立場に陥った魔術師に下る罰則だった。それが下される時は殆どの魔術師は行方が眩んでいることが多い。しかし、居場所が突き止められた時点で即座に殺す実例が多く存在する罰則で魔術師に伝わっていた。なので、魔術師は政府が出した法令を守る傾向が多く存在している。


 しかし、俺はそんな法令に対して不満を抱いていた。何で俺たちのわような人間が非術師を救うことが義務であるのかに疑問を抱く。やはり、魔術で世界を征服して非術師を従わせる方が魔術師は効率が良いと考えているのだった。けど、それを親友である永見慎司は否定する。


「人間の多くは助け合って生きているんだ。どんなに弱くたって人間に変わりがないことは紛れもない事実なんだよ。だから、魔術師は非術師を助けて平和の維持に務めることが大切になる」


「それなら何で非術師は恩義を知れない奴らが多いんだよ? その事実が俺に不満を抱かせていることはお前だって知ってるだろ? 恩義はどんな人間にだって必要とするべきなんじゃねぇのか?」


「それは言えているかも知れない。けど、僕たちは実際にこなした任務の数だけ報酬が出ている。つまり、利益がない訳じゃないだろ? そこは目を瞑って置くところだよ」


「——はぁ。これだから慎司は甘いんだよな」


 そんな感じで俺は慎司の話に呆れていた。しかし、実際に報酬を得ていることは確かな話である。もしも、魔術師が利益の出ない仕事だったなら、とっくに辞職して転職するのが妥当だと考えていた。それに魔術師と言う職業は任務をこなす上で術式の使用が許されている。つまり、魔術師である限りは力が行使できる立場にあると言える。しかし、それでも非術師の態度は非常に腹が立ってしょうがない事実だと思われた。


 俺の名前は氷城冷斗。これでも現在は二級術師として任務を遂行していた。二級術師の多くが自然発生または不正術師による召喚で出現する魔獣の討伐を任せられている。しかし、俺の場合は今年で進級試験に合格を果たせば、階級が上がって準一級術師の枠を手に入れることが出来る予定だった。それを目指して今は修行や任務で実力を高めることを努めている。そうやって俺は魔術師の中でも上位に上がるための努力を惜しまかった。


 準一級術師は特に犯罪者を相手に任務が与えられる傾向が多い。それも、最近では犯罪組織の結成が大きく世間に不安を生じさせていることが撲滅の一手を進める活動を推奨していた。しかし、犯罪組織に所属する不正術師の中でも幹部に位置する輩はとても強くて、準一級術師が派遣される理由になっている。準一級術師でも倒せない奴が存在する中で上層部は魔術師の育成が必用であると判断した時から魔術学校の設立を進める手段を取った。


「へぇ? 師匠が講師になるんですか? それは結構なことですね?」


「あぁ。しかし、魔術師の存在は公には公表されえていないことが理由で関係者以外は敷地内に入れない規定が定められるらしい。関係者以外と言っても、多くは非術師が対象になる予定だと聞かされている。やはり、親御さんが非術師だった場合は本人が他言しないことを条件に術師生は生活費が免除される。すでに魔術師の仕事をこなしている俺たちの時はなかった話だけど、そこは大目に見てくれると助かるよ。これも日本が平和であり続けるための策なんだ」


「それは結構ですけど、本当に他言しない約束なんて守りますかね?」


「さぁね。しかし、育成が大きく裏目に出る可能性も考慮した上で実施することを決めたんだ。これで問題が生じた場合は上層部が責任を負うつもりはあるみたいだよ? ま、それがないように俺たち教師が生徒の監視を任されているんだけどね?」


「精々頑張ってください。俺は準一級術師を目指すための修行で忙しいんです。だから、そこまで手は貸せませんよ?」


「分かってる。冷斗も進級試験の合格に向けて頑張れよ?」


 そうやって俺は師匠でもある光条閃也と別れた。この後は俺も任務が入っていたので、現場まで送ってくれる車と待ち合わせたところに走って行く。すでに約束の時間まで三十分を切ったことを時計で確認したところで到着を急いだ。


 そして待ち合わせの時間を迎えた時点で例の車に乗り込む。約束した時間を守れたことに一安心するが、これから向かう場所は二時間を掛けて移ると運転手が教えてくれた。到着するまでの間は睡眠でも取って準備を整えて置く。やはり、睡眠不足は大きく任務に支障を来す原因になるかも知れないことを考慮した上でそう言った対策を取った。そして到着した時は起こすように声を掛ける。運転手はそれを了解してくれた。なので、俺は安心して眠りに入る。


 そうやって俺が眠っている間に現場まで到着した時点で運転手が起こしてくれた。俺はすぐに目を覚ますと、そこで車から降りてから並みの魔力を感知する。これは今回の任務で相手する魔獣の魔力だと察した。車は魔獣の被害を受けないように少し距離を取った場所に停めている。多少の距離が空いた先までは自身の足で向かうしかなかった。


「では、行って来るよ」


「お気を付けて行ってください」


「分かった」


 そんな感じで俺は徒歩で現場を目指した。原版が見えて来たところで感知した魔力が強まていることが分かる。そして例の魔獣が視覚で捉えられる範囲まで来ると、そこで俺は術式を展開させる態勢を整えた。


「すぐに終わらせよう。この程度なら大した時間はいらないだろう」


 俺が扱う術式は【冷却】と呼称されている。これは全身から冷気を発散させて凍らせると言った術式だった。全体で発散できる冷気は掌で触れた箇所でも唐家tyさせられる。もちろん殴った対象にも凍結を及ぼすことが出来た。


 そんな術式から放たれる技は魔獣の生命を絶たせるほどの効力を発揮察せる。魔力を拳に込めて冷気を帯びさせた。すると、俺の魔力が感知できた魔獣が自分の存在を知る。そして真っ先に仕掛けて来る攻撃に対して一瞬で壁を作って防御した。魔獣が吐き出したブレスは風が伴っていたが、冷気で凍らせて作った壁が妨げになる。ブレスが止んで魔獣に隙が出来ると、壁を瞬時に閉じて接近を試みた。距離を縮めて魔獣がすぐ目の前まで迫ると俺はあらかじめ拳が帯びていた冷気で殴り付ける。それが魔獣を殴り飛ばすと同時に触れた箇所が一気に凍結して行った。それを強烈な打撃で粉砕して魔獣は粉々になる。


「こんなもんか?」


 俺は余裕で魔獣の討伐を完了させると、車が停まっている場所に向かって歩いた。魔獣が出した被害はこの後で修復作業が行われるだろう。しかし、それは俺の役割ではなかった。だから、俺は任務を遂行させたことになる。


「ご苦労だった。活躍は見せてもらった。君は準一級術師を志望しているみたいだけど、きっと十分な素質が見られると判断できる。これによって進級試験を受けることを認める。一週間後に進級試験の開催を宣言する。試験内容は召喚で呼び出した魔獣を制限時間内にすべて討伐することだ。しかし、これは一次試験に過ぎない。まだ予定では三次試験まで受けてもらう予定を入れて置く。精々試験当日は遅刻しないようにお願いしたい」


「了解です」


(やっと待ち望んだ試験だ。この日をどれだけ待ち侘びたことか。やはり、これがせいかって奴なのかも知れないな)」


 そんな風に俺は進級試験を受けることが決定した。この試験は一週間後に開かれる予定である。これを合格することで俺の準一級術師の道は達成されるのだった。確か三次試験では準一級術師を相手に一戦を交える内容だった気がする。それが合格に至る際に問題となる点だった。

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