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幼女ドラゴンは生きてみる  作者: やまね みぎたこ
銀色編

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わけてみる

 銀色の龍。

まるで死んでいるかのように氷の棺の中で眠っている銀髪のおねーさんは間違いなくそれだった。


せーさんの思っていた通り…ここには龍がいたのだ。


「でもどうなってるんだろーこれ」


棺には継ぎ目がなく、開けることができそうにない。

そもそもこの人は…ほんとうにただ眠っているだけなのだろうか?


死んではいない。

それはわかる…理由は説明できないけど、生きてるってなんとなくわかる。

だけど一目見た時にそう思ったように…死んでいるように見えるのだ。


顔には血の気がないし、呼吸もしているようには見えない。

たぶんだけど普通の状態ではない。


「んー…」


ひとまず棺に張り付いて銀龍さんを観察してみたけど、なぜ死んだように眠ってるのかがわかった。

どうやら体内にある魔力をかなりの量放出し続けているみたいだ。


目を凝らしてみると銀龍さんの身体から今この瞬間も魔力が流れ出て広範囲に広がって行ってるのが分かる。

たぶんこの銀聖域を覆っていた結界の維持のためだろう。


空腹で突破ができたけど、なかなか凄いものだったからその維持に魔力を使っているせいで…それがたたって生命活動がほとんどできていないっぽい。

それで死ぬことはないだろうし、僅かだけど結界の維持に使う魔力量よりはこうして眠っていることで回復する魔力のほうが多いみたいだしいずれ目を覚ますだろう。


でも数年以内には起きる…なんて感じではない。

早くても10年くらいかかりそうだ。


「でもせーさんの事もあるしそれは困るよねぇ…うーん…あれをやるか~…?」


なぜ銀龍さんが眠っているのかは分かった。

でもすぐには起きそうではない。

そうなるとせーさんからの依頼がこなせなくなるし、今の状態が銀龍さんにとってもいいものではないように思う。


そして私にはこの現状を打開する手段が一つある。

でも…一つ問題と言うか気にかかることがあった。


「母にめったなことでは使うなって言われてたんだよなぁ…どうしたものか…」


私には一つ特別な力があった。

いや…それを特別なものだと私は思っていなかったのだけど、母を含めくもたろうくんや皆からしてみれば特別な力らしく、そして母に「それはなるべく使うな。そして他人に知られるな」と口を酸っぱく言われていた。


なんやかんやで優しかった母が真剣な顔で何度も何度も言ってきたから私もふざけずにそれは守っていたのだけど…これはその「めったに」とか「なるべく」から外れる状況ではないだろうか。


かなり切羽詰まってる様子だったせーさんからの頼みだし、なによりこの銀龍さんは母のお友達だったみたいだし…それにここには私以外誰もいない。

他の人に見られる心配はないという事だ。


「それなら…母ごめん!今だけ許してね」


私はひとまずその部屋を後にし、先ほど目を背けて離れたキッチンに向かい辺りを物色した。

すると凍り付いたお肉や野菜なんかが出てきたので拝借。


あまり関係ないけど痛んでるかな?と思いきや、ただ凍っているだけではないようで長く放置されていただろうに新鮮さを保っていた。

これなら力が付きそうだ。


私が今からやることはとてもお腹がすく。

なのでご飯がないとやってられないというか無理なのだ。


おそらくここの主である銀龍さんのために動くのだからこれくらいは許してほしい。


「よしっはじめませうー。まずはちょっと失礼いたしまして…」


魔力を右手人差し指の爪先に集中させ魔素で細長い爪を形作り棺を突いて穴をあけていく。

結構硬かったけど数分で私のちっちゃいおててが入りそうなくらいには開けれたので手を突っ込んで綺麗な銀髪を一本だけ拝借…それを飲み込む。


こうすることで相手の魔力の形がよくわかる。

妹を「おもてなし」したときにもやったやつだ。


ちなみにこれも私はできて当然だと思っていたけれど、普通はできないらしく「んなこと出来るかい」と母に呆れられたのはいい思い出だ。


それは置いておいて魔力の形が分かったのなら私の魔力をその形にして流し込んであげればいい。

つまりは足りない分の魔力を私が補うということだ。


これにはいろんな利点があって曰く私から魔力を分けてもらった子たちは体の不調だった部分が治ったり、疲れが飛んで元気になったりとまるで「命を分けてもらったみたい」な感覚があると言う。


逆に私は死ぬほど疲れるので本当に命を分け与えてるんじゃないかと思うけどそんなはずはない。

そんなことができたら凄すぎるからね。

なにより母のように死にゆく誰かを救うことはできないのだからきっと違うのだろう。


ただ皆のそんな言葉を信じてしまったからなのか母は本当に使うな見せるなと何度も何度も言い聞かせてきた。

そんな言葉を破るようで少し申し訳ない気持ちがあるけれど…今回ばかりは許してほしい。


「うん…準備できた。じゃあいくよ…ちゃんと起きてよね銀龍さん」


棺に手を翳して魔力の形を変えて銀龍さんに注ぎ込む。

うまくいっているようで放出した魔力はどんどん銀龍さんの中に取り込まれていき、逆に私のお腹はものすごい勢いで空いていく。


たまらず勝手に頂いた凍り付いた食材たちを凍り付いたまま齧って飲み込み補給…作業を続けていく。


それにしても不思議だよね。

実は私がこうやって放出している魔力は大した量ではない。


いや人間や魔物にしたら多いかもしれないけれど、私のような龍からしてみれば微々たる量だ。

母と遊んでいたときなんてこの何倍もの量の魔力を贅沢に使ってドンパチしていたものだ。


だけど昔からこれをするとわずかな量の消費でも今みたいに私自身はどっと疲れる。

若干意識が持っていかれそうになるほどだ。


こういうのもあるから皆は命を分けてもらったとか言うのかもね。


とか考えているうちに銀龍さんの身体に魔力がいきわたったのを感じた。

どうやら成功したようだ。


「ふぅ…ちかれたぁ…もぐもぐガリガリ…」


凍り付いた野菜を齧りながら一息つく。

新感覚の氷菓子みたいで美味しいかもしれない。


黒神領に戻ったらセンドウくんに頼んでごはん凍り付かせマシーンでも作ってもらおうかなぁ…もぐもぐゴリゴリ…。


考え事をしながら食べていたせいか氷の破片がポロっと棺の上に落ちて小さく音をたててしまった。

おっと行儀が悪いことをしてしまった。ごめんなさい。


破片を拾おうと棺の方に目を向けると…いつの間にか、うっすらと目を開いた銀龍さんと目が合った。


「あ、おはようございます?」

「…」


挨拶をしてみたけど銀龍さんは寝起きがあまり良くないのかぼんやりとしたままだ。

…やけに目つきが悪いのは怒ってるわけじゃないよね…?ぼんやりとしてるだけだよね?


ちょっとドキドキしながら銀龍さんの反応を待っていると、小さくその口が動いた。


「――ぁ………ゕ……」


あ、か?よく聞こえなかったけどそんなことを言われた気がする。

どういうことだろうか。


赤…じゃないよね?だって私は誰がどう見たってブラックなドラゴン。

じゃあ何だろうか?途中が聞こえなかっただけで別の言葉の可能性が高いよね?


むむむ…推理するのだメア。

こんな時、自分ならなんというかを考えるのよ。


長き眠り…目の前には知らない黒龍系ミニマム幼女…ここから導き出されるセリフはただ一つ…!


――「あ」、おな「か」が空いた?


これしかない。

寝起きだもんね、仕方がないよ。


寝ている間にご飯なんて食べれないのだからお腹がすくのは当然なのだ。


うんうんと私が納得に頷いていると棺が突然砕け…銀龍さんがその綺麗な銀髪を揺らしながら立ち上がった。

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― 新着の感想 ―
[一言] それ眷属とか生み出してません…? ブラックドラゴン、すごくそういうことができそう
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