銀色の子供4
ユキは白い闇に染まった道を必死に走っていた。
しかしどこまで行っても降り続ける冷たい雪に覆い隠された世界は数メートルほどしか見通せず、さらには景色も変わり映えせず、自分が前に向かって進んでいるのかすらわからない。
すでに一歩を踏み出すたびに踝まで埋まってしまうほどに積もった雪の中では歩くことさえ重労働で…寒さで体温も奪われていくためにどんどん消耗していく。
それでも気力を振り絞り、とにかく前に進んでいたがそれが続いたのもほんの数十分…ついには立っていることすらできなくなり、雪の中に倒れた。
もはや冷たさすら感じることはなく…零れた涙も白の中に消えて流れた事実すらなくなっていく。
「カナちゃん…」
その名をか細く呼びながら呼びながらユキは数時間前の事を思い出していた。
あの時…いう事を聞いていればよかったと。
────────────
拾われてから一週間ほど。
ユキは子供特有の適応力故かその場所での生活にだいぶ慣れてきていた。
働き者かつ元気が有り余っている様子で家の中をぱたぱたと走り回っているカナレアについていきながら、掃除等の手伝いをして過ごしていた。
はじめは基本寝ているばかりの銀髪の女の事が怖くて仕方がなかったが、側で眠って以来そこまで恐怖を覚えることは無くなった。
睨まれていると思っていた目も、本を読んでいるときやご飯を食べているときも変わらないことから、ただ単に目つきが悪いだけだとわかってからはなんとなく気が軽くなったのだ。
そもそも女はユキがやってきてから一度も言葉を発しておらず、またなんらかのアクションを起こしてくるわけでもなく、ただただそこにいるだけのような状態だ。
恐怖を維持しろ…というにも無理があった。
ただ一度だけ…ユキの方から話しかけたこともあった。
たまに女が読んでいる本が気になり「あの…わたしも…よんでいい…ですか…?」と恐る恐る問いかけてみたが、返ってきたのはやはり沈黙だった。
「だ、だめですか…?」
それでも勇気を出して食い下がってみたのだが、女はのそりとソファーから立ち上がり、本を閉じてユキの横を通り過ぎて行ってしまった。
「…」
やっぱり嫌われているのだろうか…そう肩を落としたがカナレアの「ママは喋らねーから誤解されるかもしれないけどユキを嫌ってないから―でーじょーぶでーじょーぶー」と言われていたことを思いだし、もう一度だけ声をかけてみようとさらに自らを振り立たせ女の後に続いた。
そうして寝室…と言っていいのかわからないが、ソファーの置いてある部屋から扉を二つ抜けた先にあったのは本棚が所狭しと敷き詰めれらている部屋だった。
「わぁ…」
ユキは本が好きだった。
碌に自由も与えられなかったユキだったが、閉じ込められていた物置部屋に捨てられるようにして置かれていた本を読んで文字の中に没頭している間は辛いことを忘れられたから。
キョロキョロと辺りを見渡し、目を輝かせていると女は来るときと同じように何も言わないままユキの横を素通りしていく。
その手には…ソファーの上で読んでいた本が持たれているままだった。
「あ…もしかして案内…してくれた…?」
本をしまうでも、新たなものを手に取るでもなく、ただ来て帰っただけ。
かなりわかりにくいが本が置いてある場所を教えてくれたのではないだろうか?当然それを問いかけても肯定も否定も返ってくることはない。
いやなら怒るだろー?とはこれまたカナレアの言だ。
何も言われないのならおそらく許されているのだとしてユキは時間も忘れて本を漁ったのだった。
「んもー!お前ら本ばっかり読みやがってー!私ちゃんばかり仲間外れみたいじゃんかーっ!」
「か、カナちゃんも…本を…読めば…」
「いやー!眠くなるっ」
そんなおふざけを交えた雑談もできるほどに溶け込んできた中でその時がやってきた。
カナレアが難しい顔をしながらうろうろと部屋中を歩き回っていたのだ。
「か、カナちゃんどうしたの…?」
「んー?いやー…そろそろご飯がな―食材が足りなくなるかもってー」
「え…」
「なんかご飯の減る量が増えてな―。おっかしいなー…いつもならまだもつはずなんだけどなー…あ」
何かに気が付いたかのようにカナレアがしまったという顔をしたが、すでに遅くユキは申し訳なさそうな顔で俯いた。
そう、いつもに比べて食料の消費が多い理由など一つしかない。
頭数が増えたためだ。
そしてユキは魔族の特性故か、見た目に反して大食いな部類だった。
自分の存在が迷惑をかけている…ユキの頭のなかで血の気が引く音が聞こえた気がした。
「い、いや!消費が早いなってだけで別に何か問題があるわけじゃないんだぞっ!?だからそんな落ち込んだ顔するなってっ!大丈夫だから―」
「でも…あの…いつもはどうやって食材を…」
「んー?もちろん外にだぞ?畑にいろいろ植えてるし、お肉は魔物とか動物からとかー。あとは山菜かなぁー。でも今ちょっとタイミングが…」
「タイミング…?」
「ほらー少し前から吹雪いてきてるだろー?ご飯取りに行くのもちょっと大変だよなって…まぁ私ちゃんくらいになれば平気なんだけどなっ」
そう言ってカナレアはどこからともなく血のように真っ赤な頭巾を取り出して被って見せた。
「むふふふ…この雪避けかっこいいーだろー?紅き鮮血の魔女…レッドデビル…いや、レッドフード…いいや、リトルレッド…?なぁどれがいいと思うー?」
「…リトルレッドは嫌、かも…理由は分からないけど…」
「ふむん?じゃあそれだけはやめとくかー。まぁともかく今はやることがあるから、それ終わったらなんとかご飯取りに行くよー。ママにも言っておかないと―」
「あ、あの!それ…私が…いく…!」
気が付けばユキはカナレアを引き留めてそう口にしていた。
「いや危ないってー。大人しくお留守番しとけー?なー?」
「い、いや…だって私のせいだか、ら…せめて自分の分くらいは…」
それはほとんど強迫観念に駆られての言葉だった。
自分を置いてくれているこの場所で迷惑になりたくない…不興をかえば捨てられてしまうかもしれない。
生贄として捨てられた身だ。
ここを追い出されれば行く場所などない。
だから自分がやらないと…そうやって自らを追い込んでいく。
「ばっかおまえー吹雪なめんなー。まじやばいからなー」
「わ、わたし!本でいろいろ…読んだから!」
本の部屋には天候について記されたものもあった。
そこには当然吹雪についての説明も書かれており、有効な対策を含む情報は頭に入っているから大丈夫だと。
しかしカナレアは決して首を縦に振ることはなかった。
「な、なんで!」
「危ないからってずっと言ってるだろー。いいから私ちゃんとママに任せておけってー。子供なんだから甘えとけー」
「カナちゃんだって子供じゃん!」
「でもお姉ちゃんだから―。いいから大人しくしてろーお留守番だー。これ以上いう事聞かないならマジギレすっからなーわかったなー」
そこで話は打ち切られてしまった。
だが…ユキはそれを聞くわけにはいかない。
迷惑だけはかけられないのだから。
そうやって一人で外に出て…そして白い闇に飲まれた。
当然の結果だ。
いくら本で読んだと言っても小さな子供が抗えるほど自然は甘くない。
最初は良かった。
しかしすぐに自分が来た方向を見失ってしまった。
足跡など付けたそばから消えていくし、どっちから来たのかとオロオロしている間に方角を見失い、どうしようもなくなった。
でも立ち止まるのが恐ろしくて…無暗に歩き回るのはいけないと本に書かれていた気もするが、大人しくなどしていられなかった。
恐怖に飲まれてしまいそうで…止まれなかった。
馬鹿なことをした。
言葉にすればそんな一言で済まされてしまう愚かな行動。
後悔したところでどうにもならない。
ふと何かの気配を感じた。
もしかしたらカナレアが来てくれたのかもしれない…わずかな体力を消費して顔を上げる。
そこに鋭い牙を持った獣がいた。
牙の端からは口を伝って涎のようなものが垂れていて、その獣がユキの事を何だと思っているのかは明らかだ。
食べられる…。
逃げなくてはいけないのに体はすでに動かず、声を上げることもできない。
凍り付いていく意識の中…ユキの頭の中にそれまでの短い人生が映し出されて流れて行った。
幸せとは言えない数々の記憶達…そんななかで得た一瞬の温もり。
おそらくそれは…幸せと言えるものだったのだろう。
もしもそうならば…ここで自分が消えることで彼女たちの迷惑にならないで済む。
「…どうせ…いらない子だもん…それが一番いいんだよね…」
自分を愛してくれた人など一人もいない。
ならもういいんじゃないかとユキは諦めて迫りくる獰猛な牙に身をゆだねることにした。
涎と食欲に濡れた牙がユキの腹を食いちぎろうとしたその瞬間――獣の身体が突如として弾き飛ばされた。
「え…」
何が起こったのか、獣をじっと見つめていたユキにもわからなかった。
本当に突然魔物が弾かれたのだ。
それ以上に説明できることがない。
いったいなにがどうなったのか…ユキがやったことではない。
数日前にカナレアが魔法を教えてくれるという話になったのだが、やってみたところ驚くほど才能がないという事が分かった。
魔族なのに珍しいなーとのことだったが、結局自分はやはり欠陥品で…捨てられるべくして捨てられたのだと自嘲したのを覚えている。
だからユキが何か土壇場で力を目覚めさせた…という事でもない限り魔物が突然吹き飛ぶなどありえないのだ。
そして死を受け入れかけていたユキにそのような軌跡が起こせたはずもない。
ならば?
その答えが出るよりも早く背後か乱暴に襟首を引っ張られて持ち上げられた。
「あ…」
それは銀色の狼のような女だった。
吹雪の中にあっても白に染まらない…強く気高く美しく輝く銀。
女はユキをいつものように鋭い目で見つめると、小さな体を抱えたまま雪の中を静かに歩きだす。
「なんで…」
助けに来てくれるとは思わなかった。
助けてくれる理由がわからなかった。
自分は突然現れた食料を無駄に消費するだけの余所者なのに、なぜ助けに来てくれたのか。
きっとそれを問いかけてみたとしても…銀の狼は何も言わないのだろう。
それでも問いかけずにはいられなかった。
「な、んで…たすけ…に…」
「…」
やはり答えはなかった。
冷たい風が流れていく音だけが白い闇に吸い込まれていく。
「――」
「え…」
風が空を斬る音に交じって、小さな声が聞こえた気がした。
聞き間違えにも思えるほど…小さなそれだったけれど、確かに聞こえたはずだ。
女の方から…間違いなく声が聞こえたはずなのだ。
なのに気のせいだと思ってしまうのは…聞こえてきた言葉があまりにも予想外のものだったから。
だからその意味を問い返そうとした時だった。
「うぉおおおおおーい!ママー!こっちにはいないー!そっちはー!?」
女が歩いていた方角からうっすらと赤いシャボン玉のようなものに覆われたカナレアが文字通り空を飛んでやってきたのだ。
見ると雪はカナレアの纏っているシャボン玉に当たると瞬間的に蒸発しているようで、浮いているのも合わせてかなりの魔法の腕前だという事を感じさせた。
おそらくこれがこの場所でも食料を調達できているカラクリなのだろう。
「…」
「あ!ユキ見つかってるじゃん!さっすがママ―っ!まってろー今温めてやるからなっ!」
そうカナレアが言った直後、ユキの身体がふんわりと暖かい何かに包まれた。
それで完全に緊張の糸が切れてしまったのか、女の腕の中でユキは意識を手放した。
それから。
目覚めたユキはカナレアによる軽い検査ののちに驚くほど怒られた。
マジギレしたカナレアを舐めるなとの言葉の通りにそれはもう怒られた。
人はここまで怒ることができるのか…そしてここまで怒られることができるのかと思うほどに。
ユキは人から怒鳴られることには慣れていた。
魔族のもとにいた時、彼女が話した者たちはみんな怒っており、そして幼いユキを怒鳴りつけていた。
自分がなぜ怒鳴られているのか、なぜ怒りをぶつけられているのか…それすらもわからないまま、ただただユキはそれに耐え続けた。
これはその時と同じ…いや、それ以上の怒りをもって怒鳴られている。
だが…その怒りは今までとは違いユキの心に深く深く届く。
なぜならカナレアはまっすぐにユキを見て怒っていたから。
理不尽で一方的な怒りではなく、真実彼女を心配しているからこその怒りだったから。
だからユキは泣いた。
ごめんなさいと口にし、わんわんと泣いた。
どれだけ心配をしてくれていたのかを知り、自分の馬鹿さ加減を反省し…そして「家族」だからこその怒りに涙した。
「いや…うん、今回はでも私ちゃんも気遣いができてなかったなっ!そうだよなーいつまでもお客さん扱いだと居心地も悪いよな、うん…お姉ちゃん反省だー。よぉしユキにも家のこと何かしてもらうようにするぞー」
というわけでユキにもなにか家族としての役割が与えられることになった。
しかし魔法がほぼ使えないユキは外界からは隔絶されているこの場所において出来ることは限られている。
簡単な家事を割り振ることはできるが、それで納得ができるかと問われればユキはやはり首を捻るだろう。
だがある日、ユキは意外な才能を見せることになる。
「いやぁ…ママがユキを助ける時にはったおした魔物を回収しようと思ったわけだけどもなー…まさかこうなるとはなぁー」
「…」
「うんしょ、うんしょ…」
カナレアと女は呆然とユキの姿を見ていた。
吹雪が収まり、魔物の死体を食料として回収したかったが、カナレアの魔法では様々な理由から大きな魔物を運ぶのは難しいのでみんなで運ぼうという話になったのだが、なんとユキが自分の体格の2,3倍はある魔物を一人で背負って見せたのだ。
それもその状態のまま、軽々と歩いていくではないか。
「インテリだと思ってたのにまさかのパワー型だったとはな―…騙されたなー…」
「…」
「なぁーユキ…重くないのか―?」
「う、うん…これくらいなら大丈夫みたい…?」
これまで生贄として閉じ込められ、様々なものを抑圧されながら育てられていたユキは当然、なにか極端に重たいものを持ったことなどなかった。
だからこれは自分でも驚いてしまったのだが、とにかくそこまで重さは感じない。
それどころか自分にこんな力があったのかと感動を覚えているほどだ。
「…これなら薪割りとかの重労働系は任せてもいいのかもなー…いや、そこらへんのは私ちゃんとママもやるけどさ…でも我が家の力担当は決まったなっ!」
「…」
「うんしょ、うんしょ…こ、これくらいなら…まかせて…!」
こうしてユキはようやく家族の一員となれたのだった。
これまで感じたことのないぬくもりと幸せを噛みしめながら、おだやかな日常というものを享受していく。
だが、幸せな事ばかりではなかった。
この場所で長く生活をするという事は…ユキもそれを見ることになるという事だ。
何か大きな音がしてカナレアが教会を飛び出して行った。
その背中を追っていくと…ユキがこの地に初めて降り立ったのと同じ場所に…小さな亡骸が転がっていたのだ。
「カナちゃん…この子供って…」
「…」
カナレアはユキが来た時に生きていることに驚いていた。
この場所に外からやってくる者は…神への捧げものと送り込まれてくる「宝」たちはそのほとんどが命を落とすのだと。
また一つ…あの場所に墓石が一つ増えた。
カナレアはやらなくていいと言ったが、ユキも一緒に冷たい「きょうだい」を丁寧に弔う。
久々にやってきた墓場には、それほど雪が積もっておらず定期的に誰かが掃除をしているようだった。
「なぁーやっぱりこんなのおかしいと思わないかー」
「うん…」
「あれでもな、ママはとっても悲しんでるんだ。だから何度もやめさせようとしたし、いろいろと対策を考えてみたりもしたんだー。でもあいつらはどんだけダメなことだって教えてやっても、相手に出し抜かれてはいけないってあの手この手でこんなことを繰り返す…正直な話、この場所を覆っている結界の維持もかなり限界なんだ。ママが寝てばかりなのもそのせいだ」
「…その…ここから離れようとは…おもわないの…?」
「なにか離れられない理由があるらしいー。そして結界を解けば今度はママを巡って争いが起こるだけ…私ちゃんたちは静かにしていたいのにそれもできなくなる…ならなんとかしよう。それしかない」
「うん…そうだね」
カナレアとユキはお互いに見つめ合い、こくりと頷いた。
それから数年後には彼女たちの「ママ」は数日に一度しか起きていられないようになり、そこからさらに一週間に一度、二週間、三週間と寝ている時間は伸びていく。
このままやがては二度と目覚めなくなってしまうのではないか…そんなことは許せないと二人の子供は立ち上がる。
家族を守るため、それを脅かす悪を倒すために。
こうして巫女と聖女は生まれた。
────────────
「ん…にゃ…?」
「おやぁ起きましたかぁ~?魔聖女さまぁ~」
魔聖女ユキ・レクイエムが気が付くと椅子の上で丸まっていた。
どうやら眠っていたようだと身体を伸ばしながら姿勢を正すと、暫定的に使用人としたエクリプスが水を運んでくる。
「ありがとー」
「いえいえー…それにしてもよかったんですかぁ~?私みたいな余所者を突然そばにおいて~?」
「う、うん…」
「裏切るかもしれませんよぉ?」
「別に…裏切られて困ることもないし…だ、だいじょうぶだよ」
「ですかぁ~…ところでなにやら寝言を口にしてましたけどぉ~何か夢でも見てたんですかぁ~?」
夢…そう言えばなにか懐かしい気分になっていることにユキは気が付いた。
昔の夢でも見ていたのだろうか?
「何か見ていたのかも…?で、でも忘れちゃった…」
「まぁ夢なんてそんなもんですよねぇ~…にしてもこんなのんびりしてて大丈夫ですかぁ?人間さんたちは攻めてこないんですぅ?」
おそらくエクリプスは人間たちがここを目指して進軍していることを知っているのだろう。
だからそれとなく伝えてきているのだろうが、ユキとてそのことは知っていた。
知っていて誰にも伝えていないのだ。
「う、うん…だいじょうぶ…」
「…そうですかぁ」
まだ動くつもりはない。
もっともっと引きつけなくては…その方が混乱は大きくなるのだから。
────────────
人間たちが進軍を開始したのとほぼ同時刻。
銀神領の地を二人の男が新たに踏みつけた。
一人は困惑顔の青年。
もう一人は黒いコートのようなものを纏い、目深く鍔の広い帽子をかぶった中年の男だった。
「あ、あの…ここは一体…?」
青年が戸惑った顔のまま中年の男に問いかける。
男は帽子に手を当てると、見るだけで他者を不安にさせるような不気味な笑みを浮かべる。
「銀神領さ。呪骸を使った転移は初めてかね?なかなか便利なものだろう?」
「呪骸…先ほどのの不気味な玉の事ですか…あれはいったい…それに銀神領って…」
「くっくっく…そう、我々の本日のお仕事の場所にして、キミの「適性検査」の会場となる場所さ」
「適性検査ですか?あの…いったいここでなにをすれば…」
「決まっているだろう?――皆殺しさ」
男は帽子で顔を隠し、積もる雪を踏みにじりながら歩き出すのだった。