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幼女ドラゴンは生きてみる  作者: やまね みぎたこ
銀色編

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番外編 アザレア耐久実験

ごめんなさい!また少し忙しくて執筆できていないので、話がぶつ切りになりますが、どこかで出そうと思っていた番外編を先に出します!

後ほど話数をずらしたりするかもしれません!

――チッ…チッ…チッ…。


何やらリズムのおかしいような気がする古びた時計の音が流れていく中、二人の人物が真剣な顔で向かい合っていた。


「…それで例の件はどうだい?実行に移せそうかな」


先に口を開いたのはあまりにも肉感的な身体つきをした女だった。

白く、そして出るところは出すぎなぐらい出ており、そのくせ閉まるところは閉まっている…そんな女はその身体をあえて見せつけるような服を…もはや服と呼んでいいのかすら疑問を覚えるほど布面積の少ないそれを着ていた。


もはや自らが口から放った声で振動して揺れているようにさえ見る胸を片腕で支えていた。


「ええ…何とかなりそうではありますねぇ…しかしやはりリスクが…」


その向かい側にいたのは男だった。

健康的な女とは正反対に、どこまでも不健康そうで目にはクマが、そして手足は何らかの拍子に簡単に折れてしまいそうなほどに細い。


身に纏った白衣はぼんやりと薄汚れており、どこからどう見ても不気味としか思えない…そんな男だった。


「おいおい、今更リスクがどうのはないだろう?僕はキミをある種信頼してこの話を持ち掛けたんだ。わかるだろ?僕はこの話を「キミ以外」の誰にもしたことはない。長年連れ添った相棒に、母親にさえも話したことがないのにだ。なのにキミはリスクだどうだとつまらないことを言うつもりなのかい?」

「ひっひ…!勘違いしてもらっては困りますよぉ…私はねぇあなたの話を聞いた時、改めてこの地に来てよかったと思いましたよぉ?えぇ…その結果何が起ころうとも私はこれをやり遂げようと思いましたとも…それが例え悪いことを引き起こそうともねぇ…」


「ふっ…キミならそう言ってくれると思っていたよ」

「ええ…当然でしょう…」


二人の不気味な笑い声が時計の音と混ざり合い、不協和音を作り上げた。

しかし、不思議とそれは一つの音として調和しているようでもあり、それがこの二人の間にある「何か」の暗示のようでもあった。


「しかしぃ…何事もリスクと言うもは考えなくてはいけません。ちなみに私が言っているリスクとは私たちの計画で起こる不都合…ではなく、それをやり遂げるまでに降りかかってくるものの事です。特にこの城の主であるアザレアさんを欺き、騙し、隠すのですからねぇ…わかっているでしょう?彼女にバレれば間違いなく潰され、そして二度と同じ真似はできなくなるでしょう…この地に二人そろって居場所を失くす可能性も…いいえ、間違いなく失くすでしょう。何か対策がいりますねぇ…と」

「アザレア…そうアザレアだ。彼女少しおかしいとは思わないかい?」


「ええあの方はいつだって様子がおかしいですねぇ」

「いや、そういう意味ではなく」


女は拳を握りしめ、それを見つめる。

しなやかで、それでいて柔らさも感じ取れる美しい手だ。

しかし女のそれはひとたび暴力として放たれれば大抵のものは一撃のもとで粉砕される。


「だけどアザレアは何度この僕が全力でしばきあげても翌日にはケロッとしている。僕どころか母にやられてさえ同様だ」

「…まぁ私もいくら何でもおかしいとは思いますがねぇ…しかし毎回お仕置きを受けた後はメアさんに「よしよし」されてるみたいですからねぇ…そうなると彼女はまぁ復活するでしょう…普段の様子を見ても間違いないと確信できるほどには」


「あぁ…アレはありとあらゆる意味で化け物だ。それも放っておいたら危ないタイプの」

「…」


「そこでだ、一つ実験をしてみようと思う」

「ほほう?」


女の言葉に男が目の色を変えた。

実験…それは男の中で好きな言葉ランキングの上位に食い込む言葉だったからだ。


「彼女がどこまで耐久力があるのか…いや、どこまで追い込めば行動不能まで追い込めるのかをまずは知りたい」

「ふむ…いくつか手段は考えられますがあまり直接的な手は取りたくはないですねぇ…「お仕置き」ならともかく意味もなくそういう行動に出るべきではないですよぉ」


「ああ当然だ。いくら僕でもそこまで身勝手な理由で暴力を振るおうとは思わない。それに先ほどの話もあるし彼女からの好感度が下がるような真似はなるべくしたくない…そこで僕は考えた。アザレアの耐久力を調べつつ、さらにそのアザレアにとっても理がある手段を」

「ほほほほほう?如何にして?」


「まずは窓を開ける」

「ほう?」


女が締め切られていた部屋のカーテンを開き、窓を全開にした。


「そして火事に注意しつつ焚火を始める」

「部屋の中だというのになんと大胆な事でしょう」


テーブルの上に女が器用にレンガを積み、その上に器用に木の枝を置いた後に魔法で火をつけた。


「そしてさらにその上に上質な獣の肉が乗せられているフライパンを置く」

「なるほど、次はタレですかな?」


「その通り。この白神領で有名なお店から拝借してきた秘伝のたれをお肉にかけて焼いていく…そうすると…」


次の瞬間、女が言い終わるよりも早く小さな影が開け放たれた窓から高速回転しながら部屋の中に飛び込んできた!

小さな影は女の手の中にあったフライパンから肉を奪い取り、ゆらりと立ち上がる。

その姿はまさに腹をすかせた獰猛な獣…いいや、ドラゴンだ。


「もぐもぐ…おいちぃ!おいちぃ!」

「とまぁこんなふうに一本釣りの成功となるわけさ」

「なるほどぉ」


小さな影は肉を食べ終わるとゆっくりと振り向き…。


「ところで何してるのん?妹にセンドウくん」


と満足そうな顔で言った。


─────────────────


「あ~…なんで仕事って片付ければ片付けるほど増えるのかしらね…ほんと意味わかんないわ」


ズレた眼鏡を成しつつ、痛む気がする頭を押さえながらアザレアは自らの屋敷の廊下を歩いていた。

その目の下には化粧で誤魔化しきれていないほどの隈が浮かんでおり、彼女を襲っている疲労の大きさを感じさせていた。


「あ~…本当にダメ…死にそう…こんな時メアたんがどこからともなく現れくれたのなら…疲れなんて吹き飛んでいくのに…そしてあの柔らかぽんぽんに顔を埋めて思いっきり深呼吸させてもらえれば天国にだって行けるのに…」


そんな普段と何も変わらないボヤキをこぼしながら身体を引きずるようにしていると廊下の角からそれは現れた。


「あ、アザレア~みてみて~」

「え…」


一瞬それをアザレアの脳は理解することを拒んだ。

目の前に現れたそれの情報を処理できなかったと言ってもいい。


だが人間と言うのは突発的に訪れた何かに対して情報をシャットダウンできるようにはできていない。

どれだけ時間がかかろうとも一度目で見てしまったものは情報として脳に伝わり、そして理解してしまうのだ。

それがどれだけ危険なものだとしても。


アザレアが見たのはウサギだった。

いやウサギではない…しかし名前を付けるのなら間違いなくそれはウサギだ。


二足歩行するウサギ。

より正確に言うのならうさ耳のついたモコモコとした着ぐるみのようなものに全身を包み、顔の部分だけが露出しているメアの姿だった。


次の瞬間、アザレアは膝から崩れ落ちた。

そして地上の民が天より舞い降りた神に手を伸ばすかのように震える手を伸ばす。


「うさちゃんなの…?どうして…」

「えっとねセンドウくんが暇つぶしにお裁縫してみたからってくれたのー」


「そう…あぁ…なんてこと…こんな…」


アザレアの頭の中でソロバンがとんでもない勢いで弾かれていく。

どこの予算をどう削ればセンドウに対し数か月は遊んで暮らせるだけの褒賞を与えられるのかと人知を超えた速度で計算されていく。


その計算速度はもはや人間のそれを超越し、次の瞬間には世界を構成する心理さえ読み解けそうなほど高速化したがそれは指先に伝わってきた「もふっ」とした感触によって阻まれた。


うさぎメアがアザレアの胸の中に潜り込み上目遣いで語り掛ける。


「あのねー妹がアザレアに見せてきてあげたらって。私はちょっと変だって思うんだけどアザレア的にはどーお?」

「ふっ…神」


その言葉を最後に全身の穴という穴から血を噴き出し、アザレアは意識を失った。


────────────


数時間後。

ふと目を覚ましたアザレアは自分がベッドの上にいることを理解した。


そして仕事に疲れすぎていつの間にか寝てしまい…あまりにも幸福に満ちた夢を見ていたのだと自嘲気味に苦笑いを漏らす。


「やれやれね…我ながら末期だわ」


そうして上半身から身を起こしたアザレアが見た者はネコだった。

いや、それはネコではなかったが、では何かと聞かれればネコだとしか言いようがなかった。


「あ、アザレア起きた~。だいじょうぶ?疲れて倒れちゃったんだって。無理しちゃだめだよ?」

「あ…あぁ…あぁあああ…!!」


ベッドの上に乗り、心配そうな顔でアザレアを覗き込むメア。

その頭部には黒い猫耳が装着されており、腰のあたりからは黒い尻尾さえ見える。

そして服装はフリフリとした給仕服…いや、メイド服となっていたのだ。


「ネコさん…ネコさんなの…?なんで…メアたんいったい何がどうなってそんなことに…」

「ん~?これもセンドウくんと妹がアザレアの疲れが取れるから着て行けって~…あ、えーと…なんだっけ?…元気出してにゃん?」


次の瞬間、アザレアは全身の穴の開いていない部分からも血を噴き出し意識を失った。


────────────


そして翌日。

女と男…ソードとセンドウは真剣な顔つきで再び向かい合っていた。


今回の議題は…何を隠そうアザレアの事だった。


「センドウ」

「…はいぃ」


「…やはりアレは化け物の類なのでは?」

「私もそんな気がしてきましたよぉ~ひっひ!」


アザレアが二度目の気絶をした後もソードとセンドウはありとあらゆる「狙った服」をメアに着せてアザレアのもとの送り込んだ。

その旅にアザレアは大量の血液を体外に放出しながら暗闇に誘われていくが、それで追い込まれるどころかどんどん肌つやが良くなり、髪もキューティクルを輝かせながら復活してくる。


血をどれだけ失おうがカサカサすることもなく…ただただ元気になっていく。

最終的に目を血走らせ、涎をたらしながらメアに突撃してきたのでこれ以上はまずいと向かってくるアザレアにカウンターでソードが蹴りを叩きこんで事なきを得た。


そして次に目を覚ました時には昨日の出来事はすべて夢だったと思っているようで、肌をつやつやとさせながら今日も仕事に励んでいる。


「…やはり僕らの最大の障害は彼女だ。もしもの時のために何とかあの怪物を無力化する手段を考えないと」

「えぇ…難しい課題になりそうですがやって見せましょう…私たちの計画のために」


「僕らの計画のために」


ソードとセンドウはがっしりと力強く手を握り合う。

すべては二人の壮大な計画のために…偉大な悪だくみために。


こうして二人とアザレアの戦いの火ぶたがアザレアの知らないところで切られた。

無敵のアザレア。

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― 新着の感想 ―
[一言] これが…死なない彼女(不審者のすがた)… …この実験と同じことすればとりあえずしばらく無力化できるのでは?
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