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新たな目標を定めてみる

 くもたろうくん大暴走事件から数日。

あの後私はくもたろうくんを連れてお屋敷まで戻り…気が付いたらぐっすりと眠っていた。

そして目が覚めると体は元のミニマムなぷにぷにぼでーに戻っていて…安心したような、がっかりしたような感じだ。


ちなみにアザレアは「よかった…本当にもどってよかったぁあああああああああ!!」と泣いて喜んでいた。

私が無事に戻ってきてくれてよかったって事だとは思うのだけど、なんとなく少し違う気もするのはどうしてだろうか。

ドラゴンだから人間の機微は分からないのだ。


そしてその日から色々と大変だった。

私がご飯を食べていた場所はもはや小さな教会になっているんじゃないか?ってくらい豪華かつ、神聖?な感じにされており、若干落ち着かない。


領民がくれるご飯や物品もグレードがアップしており、もはやお供え物のレベルだ。

いったい皆どうしてしまったのだろうか…ドラゴンわからないことが多すぎて震えちゃう。


あとはアザレアからはあの時何があったのかだとかいろいろと聞かれたけど、私にもわからないのだから答えられないし、センドウくんもよく私に会いに来てくれるようになって髪を一本くれないかだとか、皮膚を少し採取させてくれないかだとか言ってくるようになった。

断る理由もないので普通に上げている。


そしてウツギくんは私を見ると逃げるようになったのでなんとなく追いかけまわしている。

そんなことをしているともはや目が合っただけでお菓子を放り投げてきて、気が付いたらいなくなってる…みたいな感じになってしまった。彼はねアザレアのお兄ちゃんだけあって奇行が目立つよね。


ちなみにくもたろうくんはまだ目覚めていない。

死んではない…のだけど、身体にそうとうな負担がかかっていた上に重度の栄養失調だったらしく、ニョロちゃんがつきっきりで看病してくれている。


そうやって変化してしまった周りの環境に少しだけ疲れてしまい…私は今ノロちゃんのところでぐーたらと体を休めていた。


「のろちゃーん」

「なんで…しょう…」


「おむねはだいじょうぶ?」

「はい…もんだいは…ありま…せん…」


あの日、私は確かに導かれるままにノロちゃんの心臓を食べた。

あれは夢だったのではないかって思えたけれど、センドウくんの診察によると、ノロちゃんから心臓が喪失しているのは確からしい。だというのに、ノロちゃんはこうやって平気な顔をしていて…もう何が何だかわからない。


まぁ本人が大丈夫と言っているのだし、私が気にしすぎても逆に悪いかもしれない。

こうして一緒にいるかぎりは普通に元気そうだしね。

ほどほどに気にしながら、今はまったりタイムを満喫しよう。


「あ、そういえば…これなんだろう?」


私はしまっていた赤黒い石を取り出してみた。

あの時…靄を吐き出していたくもたろうくんの目を潰した後でいつの間にか握っていた変な石で、妙な力…というかノロちゃんに似たような不思議な力を感じている。

もしかしてノロちゃんなら何か知っているだろうか?


「ねーねーノロちゃん。これなにかしってゆー?」

「…それは…死の呪い…呪骸(じゅがい)と呼ばれる…ものです…」


「じゅがいー?」

「はい…それは…この世界に満ちる力…絶対的で…普遍的なもの…それそのものが…力として…形を与えられたもの…それを取り込めば…あなた様はさらなる力を得ること…でしょう…」


「ふーん?」


…うん、いらない。

力なんて今となってはいらないもの過ぎる…母が生きているならばこれをもって挑戦した可能性が少しはあるかもしれないけれど…まぁとにかくいらない。

食欲もわかないし、どうしようかなこれ。


「…もしいらないとおっしゃるのなら…私が…預かりましょう…」

「いいの?」


「はい…もとは…私の…一部…ですので」

「え、そうなの!?それじゃあノロちゃんにかえしたほうがいいにきまってるよ!はい!」


呪骸をノロちゃんに差し出すとそれはフワリとひとりでに浮かび上がって…ノロちゃんの身体に吸い込まれるようにして消えた。

そして変化が起こった。


「ノロちゃん!?おめめが!」


ノロちゃんの瞳が存在していないほうの目…眼帯が付けられたその場所から血が滲み始めた。

慌てて眼帯を剥ぎ取って確認すると…そこになかったはずの瞳があった。


「あれ!?めが!どういうこと!?…いや、一部ってもしかして…「じゅがい」がことばどおりノロちゃんのからだのいちぶってこと!?」


こくりとノロちゃんが頷いた。

なんてこった…まさかそんな秘密があったなんて…。


「じゃあノロちゃんのからだがそうなってるのも…」

「私の…身体は…呪骸となって…各地に…」


「た、たいへんだ…!どこにあるかわかってるの!?取り戻しに行かなくちゃ!」

「いえ…その必要は…ありません…」


「あるよっ!」


なんだかわからないけれど、ノロちゃんの今の状態に対して出来ることがあるのならやってあげたい。

呪骸を取り戻すことで身体が治るなら取り戻してあげようじゃないか。

…ってまってよ?もしかしてだけど…。


「わたしが食べちゃった心臓って…」


おそるおそるノロちゃんのほうを伺うと…ノロちゃんはゆっくりと首を横に振った。


「あれは…ちがいます…呪骸は私の身体なれば…心臓に宿りしは…存在そのもの…魂と言ってもいいかもしれません…」

「…よけいに悪いのでは」


どう聞いても余計に悪い。

なんとか吐き出せないか試してみるべきではないだろうか。


「あれは…あなた様のものです…それを愛しき伴侶様であるあなたに…お渡しすることが…私の…使命でした…それはあなた様にとって必要であり、ゆえにあなた様の物なのです…ですからどうか…どうかそのまま…お受け取りくださいませ…」


そのあとも何度か質問や問答を繰り返したけれど、呪骸についてはノロちゃんは何も言わず、ただ一貫してあの心臓は返さないで欲しいという事だけを主張し続けた。

それは間違いなく私の物なのだからと。


意地でも譲る気はないらしく…こうなったらノロちゃんの身体を全て取り戻してやろうと私は決めた。

そうすれば心臓が足りないことに違和感を覚えて、やっぱり返して欲しいって思ってくれるんじゃないかって。

うん…そうしよう。


こうして私の目標にノロちゃんの身体を全て取り戻すという新たな項目が追加されたのだった。

次回から新章「聖白編」がはじまります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 安心と信頼のアザレアさん もしメアちゃんがそういうの読み取れる子だったらどうする気だったんですか貴女…
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