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幼女ドラゴンは生きてみる  作者: やまね みぎたこ
紫色編

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202/212

掘り進んでみる

「え?せーさん帰っちゃうの?ヴィオさん連れて?」


あまりにも見事すぎる状況説明セリフを口に出した私こそ漆黒系ドラゴン幼女。

ここ最近は激動の日々で、その忙しさも落ち着いてきたかな?と日々を暇に過ごしている…なんてことはなく、紫神領で行方不明になったまま未だに帰らないノロちゃんを探して私は連日で黒神領の探索を行っていたのだけど…やはりどこにもいないようで気配すら感じない。


これまでもふらっとどこかに行っちゃうことはあったけど、ここまで長い間帰らないのは初めてだからさすがに心配になってきたところでどこかに行こうとしているせーさんとヴィオさんを見かけたので呼び止めたのが始まりだった。

聞けば二人はこれから白神領に行くそうで、今まさにせーさんがゲートを開いたところだった。


「ええ、少しばかりお仕事をしないといけないので。紫は付き添いのようなものです」

「そうなんだ。あ、じゃあ私もついて行っていい?」


ノロちゃんは白神領にも行けるはずなので、もしかしたら…という事もあるよね。

少し前にネムと戦うために連れて行ってもらった際に落とし物とかしちゃって探してるのかもしれないし。

もしくは食べ歩きとか。


「…構いませんがしばらくの間、私たちは構えませんよ。それにまだ復興作業中ですし面白いものは何もないですよ」

「うん、大丈夫。一人でうろうろするからー」


「うろうろ?まぁ危ないことをしないのなら連れて行くくらい構いませんよ。準備をしてらっしゃいな」

「あい!」


元気よく返事をしてみたものの、皆大変そうだし、せーさんは忙しそうなのでそこまで長居をするつもりもない。

なので荷物は最低限で干し肉5キロだけにしておこう。

ほんとはもっといっぱい持っていきたかったけど、すぐに帰るからおやつ一回分くらいで大丈夫でしょうとカバンにおやつを詰め込んでいるとヴィオさんがにゅっと覗き込んでくる。


「メアちゃんって同じものを一度にたくさん食べられるタイプ?」

「う?」


「だってほら、干し肉なんてそんないっぱい食べると飽きるでしょ?味が変わるもんでもないでしょうし」

「んー…確かにたくさん食べるなら味変とかはしたいけどー」


「でしょ?」

「でもたくさんは食べないから大丈夫だよ。飽きない」


「え?でもこれ全部干し肉なんでしょう?」

「うん。これだけしか食べないから。飽きるほど量はないでしょ?」


顔がベールに覆われてるから確かな子とは言えないけど、おそらくにっこりと笑って、それっきりヴィオさんは何も言わなくなってしまった。

もしかしてお肉食べたかったのかな?と多少惜しく思いながらもヴィオさんに少し干し肉を分けようとしたのだけど、普通に断られてしまった。

曰くあまりお肉は好きではないとのこと。そんな生物が存在するの!?と驚愕を覚えた私だった。


そんなこんなでたどり着きましたのは白神領。

せーさんは復興作業中と言っていたけれど、私が最後に立ち寄った時に比べて格段に綺麗になっているように見えた。

ちなみに私もなるべく抑えたとはいえ被害を出した一翼ではあるのでせーさんに復興を手伝うと申し出て、瓦礫を運ぶくらいはできるよ!とアピールしてみたけれど、「メアみたいな小さな子供が瓦礫を持ち上げるとみんなびっくりするから」と断られてしまった。

私はこれでもセンチメンタルなドラゴンなので罪悪感が凄い。何かできることはないだろうか。


「メア」

「う?」


「私たちはこれからお仕事を済ませてきますが、一人で大丈夫ですか?」

「あい大丈夫ですん」


「何かあれば教会に行ってください。話は通しておきますから」

「またねメアちゃん」

「はーい、ばいばーい」


さて…1人になってしまった。

ひとまずは当初の予定通りにノロちゃんを探そう。ついでに復興関係で困ってる人と書いたらお手伝いしたほうがいいかもしれない。

そうしよう!…と意気揚々と旅に出たのが数時間前。成果は一切なし!!


ノロちゃんの痕跡どころか気配すら感じないし、そこらへんで瓦礫の撤去とかしてる教会の人にお手伝いを申し出てみると「子供にそんなことはさせられない」と断られてしまう。

なにも成せず、なににもなれず…このままではただ面積を圧迫してるだけのお邪魔ドラゴンだ。

そんなのこの私のプライド…いや、【誇り】が許さない。


…なんてカッコつけてみたところで何か起こるわけでもなく…とぼとぼと干し肉を齧りながら観光をしていた時だった。


「…ん?なんか…嫌な感じ…」


歩いてると急に肌がぞわっとした。

べっちょりとしてて…それでいてザラザラとしてる空気が肌を撫でて気持ちが悪い。

これは…。


「呪骸の気配…?どこから…?」


このあまりにも嫌すぎる気配は間違いなく呪骸だ。

ネム…というかスピちゃんに取り付いてたやつは回収したはずだから、さらに別のものが近くにあるみたい。

むむむ…これは探しておいた方がよさそう。

私は平気だけど、どうやら呪骸は普通の人たちは触ったりするだけで危ないらしいからね。

…もしかしてこれはお手伝いしたことになるのではないだろうか!?それに呪骸を集めることはノロちゃんの身体を集めることでもあるわけだし、回りくどく間接的だけど二つの目的を達成できるのではないだろうか。


「ようし!そうとなれば呪骸を探していきまっしょい!」


ぞわぞわとする己の肌を頼りに気配を探りながら歩く。

…わざわざ不快な思いをする方にって言うのが心底嫌だけど、そんなこと言ってられないからね…我慢しますとも。

本当に嫌なんだけどね!!!


…歩いてて気が付いたけど、嫌な気配は下の方から感じる…気がする。こう…もやもやとしたものが沸き上がってくるように感じるというか…。

もしかして地面に埋まってるのだろうか?そうなると少し面倒だにゃぁ…こうなればまたアレの出番だ。

以前も大活躍した母直伝のダウジング!前回はお野菜で代用したけど、今回は干し肉。

折れないように少しだけ曲げて…両手の装備!これによって地面に埋まっているお宝を見つけ出すのだ!


そして数分後。私は教会に保護されていた。

先日の騒動で親を亡くして精神を病んでしまい、奇行に走った子供と思われたらしく…親切な人たちがここまで運んできてくれたのだ。

いたたまれないが過ぎる。

気をしっかり持つんだよと渡されたお菓子が染みるぜ…。


ただ私の中の尊厳のようなものを犠牲に呪骸の位置が大まかに特定できた。

この下だ。

もう少し範囲は絞らないとだけど、近くにあるのは間違いない。

…これがダウジング効果…!やっぱりすごい技術だぜ。


そうとなれば善は急げ。

こっそりと教会を抜け出し、さらに途中でおそらく復興作業に使っているであろう「つるはし」を入手。

一際嫌な気配を感じさせる場所が教会の外、すぐ近くの何もない場所だったので勢いよく突き立てて穴掘りを開始。

ひたすらに無心で嫌な気配に向かって掘り続ける。


カンッと途中で土から鉄?のような何かに変わったので魔素でつるはしを補強してカンカンと何度も打ち付けて掘り進める。

無心…無…私は境地に達しようとしていた。

穴掘りの境地…掘り進めていくうちに穴と一体化し、掘るという行為さえ己を広げるための一振りとする。

そう…この瞬間私はブラックドラゴンという枠組みを捨て去り、穴掘りの神へと至ったのだ。


しかしそんな時間は無心でいたからなのか一瞬で終わりをつげ、無情にも穴は開通し道となってしまった。

それと同時にぶわっと溢れ出す呪骸の嫌な気配…そこでようやく私は己の使命を思い出し、穴掘りの化身…いいや化神からブラックドラゴンへと戻った。


すると開通した穴の向こう側で両手を縛られてる人間のお兄さんが呆然としながら私を見つめていて…ばっちりと目が合ってしまった。


「だ、だれ…?」


それはこっちも聞きたい。

そして位置が微妙にずれてる。


ひとまず下に降りて方向確認…うん、こっちの真横の壁の向こうだ。

また上から掘りなおすのはめんどくさいし、最短距離とは直線だと母も言っていたのでここはまっすぐに進む。

ハードルは飛ばずに破壊しろ、壁は壊すためにあるし石橋は渡らなくても壊せと教えられて育ったのがこの私。


「うぇーい!」


必殺のつるはしアタックで壁を破壊し、隣の部屋にこんにちは。

そこでまたもや別の人間のおじさんさんと目が合ったけど…同時に濃い呪骸の気配。

間違いない、このおじさんが呪骸を持っている。


さて…じゃあひとまず回収しますかぁ~。

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― 新着の感想 ―
上だけじゃなくて横も掘り抜いてますねこれ… そっかぁ…穴掘りの神なら結界ぐらい掘り抜けるかぁ… 食べて開通させようとしなかっただけ成長したのやもしれません
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