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お久しぶりの主人公視点です!

 私は非常に困っていた。

このありとあらゆる事態に対して冷静に、クールに、スマートに対応できることで有名なブラックドラゴン界隈屈指の頭脳派キャラであるこの私がだ。


今日は珍しく私はひとりぼっちのロンリードラゴンだった。

うさタンクも朝からいなかったし、ノロちゃんやアザレアともノーエンカウント。

妹も今日は「遊ぼう」と言ってこないし、暇なので散歩に繰り出してみれば外でも誰にも会わなかった。


偶然って重なるものだなぁと一人でおやつを片手に歩いていると背後から「おねーちゃん」と声を掛けられたので振り向いた。


問題はここからで、私は声をかけてきた女の子の事を全く知らなかったという事だ。

身長はリンカちゃんより少し低いくらい…つまりはそこそこ小柄だ。

人間の年齢で言うのなら10代前半…くらいだろうか。


髪がびっくりするほど真っ赤っかで、ずっと見ていると目がおかしくなってしまいそうなほど、とにかく赤い。

さすがにここまで目を引く髪色をしている女の子なんていくらなんでも忘れないはずだ。

つまりは初対面のはずで…ただそこで気になるのはこの子は私の事を「おねーちゃん」と呼んだことだ。


いくら向こうも小柄とはいえ、私のミニマムぼでーに比べれば巨人もいいところである。

その私を「おねーちゃん」と呼んだという事は何かそう呼ぶきっかけがあったのではないかと考えてしまう。


ただたんなんとなくに呼んでみただけ、もしくは私の内側から醸し出されるお姉さんドラゴンオーラを感じ取ってしまったのかもしれない。

ふっ…やはり見た目がどうなっていようともわかる人にはわかるのだ。


とはいえこの知らない女の子に声を掛けられたという状況に対して私はどうするべきなのか…ひとまずクッキーをサクサクしながら間を持たせる。

うーん、おいちぃ。


「どうしたの?おねーちゃん。どうして黙ってるの?」

「もぐもぐ…いや、どこかで会った事あるかにゃあって」


「んふふふふふ!どーだろーねー?あったことあるかなぁ?ないかも?おねーちゃんは会ったことないって思う?」

「んー…」


実のところ確かに初対面…だと言い切ることができない。

なんというか…そう、この子に「おねーちゃん」と呼ばれたことがある気がするのだ。


ずっとずっと…昔から感じていたよくわからない懐かしさ。

私を「おねーちゃん」と呼ぶ誰かの声がずっと私の中のどこかにあって…それが今これまでになく浮かび上がってきている。


それは音として残ってるわけじゃない。

誰の、どんな声色で、どんな抑揚で、どんな発音なのか全くわからない。

でも確かにあるもの。


ある時はネムに感じたそれ。

またある時は妹にも感じた。

でも彼女たちに「姉」と呼ばれても謎の懐かしさを刺激されるだけで、それが私の中のものと一致はしていなかった。


でもこの子の声は違う。

ぴったりと…私の中の私を姉と呼ぶ声に一致しているような気がした。


「…どこかで会ったことある?」

「どうだろうねっ」


「むむむ…もぐもぐ…」

「んふふふふふ!おねーちゃん考えながらお菓子食べてる!おもしろーい!あははははは!」


よく笑う子だなぁ…ずっと笑みを浮かべて声をあげて笑ってる。

ただなんとなくだけど違和感を覚える。

必死に笑ってると言うか…なんというか…。


嫌々笑っているというよりかは笑いたいけど笑えなくて…なんとかそれらしいものを無理やり浮かべてみてるみたいな?自分で言ってて意味が分かんなくなってきた。

そもそもなんでおそらく初対面…?な子のそんな細かいところまで分かると言うのか。

どう考えてもわかるはずないので私の思い込みだろうと思うので気にしないことにする。


「名前を聞いてもいい?」


顔は覚えてなくても名前を聞け知り合いならばピンとくるかもしれない。


「名前かぁ~なんだと思う?当ててみてよ!おねえちゃん」

「おっと…」


まさかの返しにびっくりして思わずクッキーを二枚一気にサクサクしてしまったでござる。

こやつ…先ほどから質問を質問で返してくる…いったいどうしてほしんだ。


いや…ここまでくればやっぱりこの子は私の知り合いで、それをど忘れしている私に内心怒り心頭なのかもしれない。

だからこんな悪戯を仕掛けてきているという可能性。


だとすれば悪いのは間違いなく私だけども、どうしたものか…。


「うーん…」

「うーん?」


だめだ。

どれだけ考えてもやっぱりこの女の子の事は思い出せない。

というかやっぱりどう考えても知り合いじゃないと思うんだよね。

いくら何でもこんな特徴的な子を忘れるわけはない…はず。


考えても無駄だと思ったことは考えるな。

母の教えの一つだ。

なので直球で答えを伝えてみる。


「…初対面だよねん?」


果たして彼女の返答はいかに…!?


「んふふふふふふふ!」


答えは沈黙…ではなく笑い声。

質問への答えとしてはどっちとも取れるし、その笑みが正解!という笑いなのか、もしくは怒り心頭からくる笑いなのか…なんにもわからぬ私こそがコンフュージュブラックドラゴン。


「ねーねーおねえちゃん!じゃあ私の名前を呼んでみてよ!」

「はぇ~…?」


知らない名前をどう呼べと。

先ほどの質問で私がこの子の事を知らないor覚えていないという事は伝わったはずなのにどういうことなんだ…?

このおなご…この私をここまで困惑させるとはなかなかやりおるわ。


「なんでもいいからさ、ほらとりあえず呼んでみて?」

「なんでもいいって…うーん…私に適当に名前を呼ばせるとあれだぞ、「あかちゃん」とかになるぞ」


赤いからね。

ここは母から受け継いだブラックドラゴン伝統の名付け方式で行かせてもらおう。


「うーん…それはちょっとどうかと思うなぁ」

「でしょうとも」


ほらほら嫌なら名前を名乗りたまえ。

あまりにも自然に名前を教えてもらう流れに持って行けた自分の才能に酔いしれながらサクサクとしていたところ、なぜか女の子が私に向かって手を伸ばしてきた。


「んむ?」

「うふふふ!だってねおねーちゃん、此方…ううん、わたしね?赤くないもん」


瞬間、一瞬だけ視界が揺れた。

めまいがした…と言うのだろうか。

倒れるほどじゃないけど…瞬きをするくらいの本当にわずかな時間で私の視界には大きな変化があった。


先ほどまで広がっていた目が痛いほどの赤が…先の見通せないほどの、塗りつぶしたような黒に変わっていた。


「あれ…髪の色が…?」

「うふふふふ!本当に変わった!すごいすごい!やっぱりほんとうに「そう」なんだ!あははははは!」


女の子が私の手を掴んで一緒にくるくると回り始めた。

突然踊りたくなったらしい。

うんうん、子供はそれくらい元気でなくちゃね。


「おや?」


なにかおかしい。

なにか違和感がある。


目の前には満面の笑顔で私の手を握る黒髪の女の子。

でも「赤」が見える。


踊ってくるくると回ることで私たちの長い髪は風に煽られて舞い上がるわけだけど、当然それはどちらも黒くなければおかしい。

なのに視界の端にちらちらと赤い髪が見えるのだ。

これはもしかして…私の…?


「あ」


ふと女の子が気の抜けた声と共に動きを止めた。

するともう一度、視界が揺れて世界が元に戻る。

女の子の髪は先ほどまでの光景が夢だったかのように赤に戻っていて…当然私の髪は黒いまま。

夢だったかのようというか、本当に夢?


「直接触れ合ってもこの程度かぁ~…ほんとうにここまで差がついちゃったんだねぇ…うふふふふ!かわいそうなおねえちゃん」


するりと女の子が私の顔に両手で触れてきて、至近距離で目を覗き込まれる。


…私はやっぱりこの子の事を知っている。

思い出せないし、記憶のどこにも引っかからないけれど…何故かそう感じた。


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― 新着の感想 ―
なんか会話をミスって爆発する3秒前!!3....2.....1...
これは知り合いと誤認させて警戒心を緩ませる誘拐犯の手口ですね、まちがいない ノロちゃん!アザレアさん!早く見つけないと不審者に連れ去られますよ!
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