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ep.35 マレー沖海戦4

「敵艦隊射程内に入りました!」


「全艦全ての対艦誘導弾を発射! この一撃を持って英艦隊を壊滅させる!」


レイテ沖に展開した第ニ、第三艦隊は保有している全ての対艦誘導弾を発射。

対艦誘導弾を搭載しているのは八八艦隊計画以前の旧式戦艦か軽巡洋艦や駆逐艦といった補助艦艇が主であるが、二艦隊合わせて60隻を誇る大艦隊から発射された対艦誘導弾は総数150発にも及んだ。


「全艦突撃! 対艦誘導弾着弾とともに敵艦隊中枢に突入する!」


更にゼーアドラー級25隻が魚雷を投下するべく低空で侵入する。


「て、敵空中戦艦を確認! 全艦が長魚雷を抱えています!」


「対空戦闘用意! 全艦載機を上げろ!」


本来誘導弾が着弾した後に交戦を開始する予定であったが、誘導弾よりも図体のでかいゼーアドラー級は着弾前に上空の哨戒機に発見されることとなった。


「対空砲命中するも効果認められず!」


「しゅ、主砲もぶっ放せ! 徹甲弾! 炸裂弾ではなく徹甲弾だ!」


VT信管付きの127mm砲は大量の命中弾を叩き出したものの、下手な重巡洋艦よりも強固な装甲を誇るゼーアドラー級には効果がなく、英艦隊は主砲での迎撃を試みる。


「命中! 爆発しながら墜ちていきます!!」


「この調子で落とせ! 副砲も徹甲弾に切り替え!」


さすが世界最強と謳われた英海軍と言うべきか、対水上艦用の徹甲弾を複数命中させることに成功。


「敵空中戦艦、魚雷を投下!」


「全艦回避!」


しかし現実は無情にも、6隻のゼーアドラー級が被弾したところで魚雷が投下され、ゼーアドラー級は撤退。


「耳が...耳がぁ!」


「誰か止血帯を!!」


「右舷浸水止まらん! 左舷に早く注水を!」


主砲発射の爆煙で回避行動が思うに取れず、密集隊形を取っていたこともあり多数の艦が被弾。


「司令、この艦はすでに...」


「旗艦を他の艦に移す。最寄りの艦h」


「敵ミサイル多数飛来! 着弾まで20秒!」


各艦の対空機関砲が鉛の壁を形成するも、その壁は10個程度の光点を生み出しただけであり、残り百十数発の誘導弾が次々に襲いかかる。


「艦隊が...我が帝国の最新鋭艦達が...」


「司令、戦闘継続は不可能です。撤退命令を...」


「駄目だ! 誇り高き我らに撤退の2文字は無い! 機関が生きている艦はこのまま突撃! さっさと復唱せんか!」


「え、は?...はっ!」


この一見正気を失ったかと疑う行動には、味方のみならず敵をも動揺させることとなった。


「敵艦隊、停止した艦を放置し残存艦で突撃してきます! およそ6割です!」


「なんだって...? 奴らはアホなのか...いや、そんなことより砲撃戦の用意だ。敵主砲の射程まであと数キロしか無いぞ! 戦艦と重巡を前に! 装甲が薄い艦は下がらせろ!」


「了解!」


教皇国海軍はいくら大艦巨砲主義とはいえ、対空誘導弾の運用を目的とした紙装甲の艦艇が半分程度を占めるため、砲撃戦では戦力として機能する数を一気に減らすこととなった。


「敵艦隊単縦陣で突撃してきます!」


「ならば我々は単横陣だ! T字戦法を取るぞ! 決して敵の圧力を一点に集中させてはならん!」


八八艦隊計画で生まれた最新鋭の戦艦二隻を中央に配置し、その横を重巡洋艦と旧式戦艦で固める。


「敵艦発砲!」


「ふん、この距離で当たるわけg」


「アドミラル・ヒッパー轟沈! 魚雷発射管に命中したようです!」


「しょ、初弾から命中だと...」


「ブラウンシュバイク被弾! 艦橋が吹き飛んでいます!」


「な、なんだこの命中率は...まさか敵は誘導砲弾の開発に成功したとでも言うのか...」


司令官が嘆いている間にも次々に重巡洋艦が被弾し、大破もしくは轟沈した。


「反撃だ! 当たらなくとも良い! 撹乱しろ!」


「撃ちーかた始めぇ!」


艦橋上部に備えられた測距儀からのデータに基づき主砲が放たれる。


「誤差修正完了!」


「第二射撃てぇ!」


教皇国海軍では交互撃ち方が採用されており、素早い連射を可能としている。


「夾叉しました!!」


「この調子で敵艦をg」


旗艦のビスマルク級ニ番艦ティルヴィッツに衝撃が走る。


「被害報告!!」


「第二主砲に被弾! 弾薬が誘爆しました! 浸水も発生! あ、キールも折れているとのこと!」


「クソ...この艦は駄目か。総員離艦!」


(後ろにいる補助艦艇を戦艦と戦わせるわけにはいかんな...)


「全艦撤退! 生存者を救助した後、教皇国本土まで撤退せよ!」


ーーーーーー


「敵艦隊撤退していきます」


「うむ、ならばこちらも一時後退し、補給した後に再度侵攻しよう」


「今なら敵は総崩れです! 好機を逃さず攻勢に出るべきです!」


「確かに正面の敵艦隊は撤退した。だがこの先のフィリピンは入り組んでいてゲリラ戦を仕掛けられると厄介だ。しかも敵の対艦ミサイル部隊が地上にいる可能性もあるし、魚雷艇やミサイル艇などから攻撃を受ける可能性も高い。ここは一度体制を立て直すべきだろう」


「はっ!」


ーーーーーー

「後方からワイバーンロード接近!」


「増槽投棄! 全速で突破しろ!」


「艦尾に被弾! 出力維持できません!」


「総員離艦!」


モンゴル軍の主力航空戦力は、神聖ザユルティ法皇国などの原住民勢力でも多数が運用されているワイバーン、そしてその改良型のワイバーンロードであった。

通常のワイバーンは時速250km程度に一式陸攻並みの機動性と、複葉機でも勝てそうなレベルであるのだがワイバーンロードは時速300kmを誇り、尚且つ機動性も双発戦闘機並みである。

ここまでなら通常の戦闘機と変わらないのだが、特筆すべきはその兵装だろう。

魔鉱山に生息するワイバーンは体内に大量の魔力を貯めこんでいて、高火力な魔法を放てるのだ。発射にかかる時間さえ確保できれば一撃でシュバルベ級すら破壊できる、と言えば凶悪性がわかるだろう。


「敵竜母発見!」


「何としても落とせ! 刺し違えても構わん!」


さらに、航空機とは一線を画すのが空中での発着艦が可能な点である。ある程度デコボコした飛行甲板を用意し速度を調整してやれば、二足のワイバーンはいとも簡単に着艦してくれるのだ。


「クッソ、かなり硬いぞ」


「エンジンを狙え! 装甲を貫通できなくともエンジンノズルを破壊することは可能だ!」


しかし、ワイバーン以上に厄介なのはシュバルベ級のコピー艦である。元々対空砲に耐えながら地上攻撃を行うために開発されたシュバルベ級は12.7cm砲にも耐えるように設計されており教皇国軍はそれに何度も助けられてきていたのだが、彼らは敵になって初めて恐ろしさを理解した。


「ビスマルク級はどこだ!? あの強固な装甲がなければこの状況を打破できんぞ!」


彼の言うビスマルク級は海軍の戦艦ではなく、空中戦艦のビスマルク級である。


「全艦が機関を故障したらしい!」


「なんだってこんな時に...」


教皇国悪夢の一日と言われたこの二十四時間は、未だ半分に差し掛かったところであった。





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