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ep.32 マレー沖海戦1

「glorious isolation作戦発令! 全艦隊出撃せよ!」


蒸気機関特有の黒い煙を吐き、戦闘艦だけで160隻にも及ぶ大艦隊がオーストラリアから出撃していく。


「先鋒の哨戒艦隊からの定期連絡は?」


「現在マレー沖を北上しているということです」


大所帯の本隊がいきなり敵と遭遇すれば大混乱が予想されるため、一つ艦隊を先行させている。


「故障した機をさっさと格納庫に片付けんか! 発進間隔が大幅にずれとるぞ!」


哨戒艦隊司令、マイケル・パット・マイルズ准将は偵察のエキスパートで、対モンゴル戦では敵飛行船を真っ先に発見し続けることで一躍有名になった。

そして、今回引き連れているのは、旧式重巡洋艦を改造した軽空母オーダシティ及びその同型艦と、近代化改修により最新の防空能力を備えたレパルス級巡洋戦艦一隻、同じく防空能力が向上したフッド級巡洋戦艦一隻、そして軽巡一隻と駆逐艦三隻である。

旧式重巡洋艦の改造、と聞くとショボく聞こえるが装甲の問題で一線を張るのが厳しくなった重巡洋艦をじっくり丁寧に改造したもので、元々が巡洋艦なため速力も早い。


最新の艦艇ではなくても、哨戒任務に何隻も軽空母や巡洋戦艦を投入できるのはさすが大英帝国といえよう。


「海中に怪しい反応があります。念の為迂回をしたほうが良いかと」


「本隊が昨日総攻撃を受けたばかりでは敵潜の可能性はかなり低いと思うが...一応迂回するとしよう」


「おもーかーじ」


号令を受けて、艦隊が右に十五度旋回する。

今まで数々の敵の罠を見破ってきた男が遂に、教皇国海軍の罠にハマってしまったのだ。


「魚雷音聴知! 右舷から魚雷!」


「全艦回避行動! 余裕があれば艦載機をすべて飛ばせ!」


各々が左右に旋回し回避を試みる。また同時に旋回が収まったタイミングで軽空母から航空機が発艦する。


「左舷の駆逐艦二隻が被弾! 大幅に傾斜しています! ですがそれ以外の艦艇に命中弾はありません!」


「敵潜の位置はわかるか!?」


「この辺りは水深が低いのにも関わらず全く魚雷の方向には反応がありません!」


「少し前にあった反応とは全く逆...ま、まさか奴らは誘導魚雷を...いやならば命中弾が少ないのはおかしいな」


「ぜ、前方からも魚雷です!」


「回避は間に合わぬか...艦首付近の乗組員は退避! 急げ!」


横からの魚雷を回避するため最大速力の32.5ノットで航行していたことが災いし、軽空母は二隻とも被弾。巡洋戦艦も一隻が被弾。その他の駆逐艦や軽巡洋艦も多数被害を受けた。


「第三甲板、浸水止まりません! このままでは傾斜が...」


「...旗艦をフッドに移す! 艦長、後は頼んだ」


「はっ!」


「...沈んだ艦の生存者を救助した後、オーストラリアに撤退する」


傾斜が8度に達する頃、内火艇で司令部要員が巡洋戦艦フッドに移動。

奇しくも最後の1人が内火艇からフッドに乗り込んだとき、オーダシティは無煙火薬格納庫が爆発。キールが真っ二つに折れて沈没した。またその同型艦も復旧不可能と判断され、10分後に雷撃処分された。

一方、同じく被弾したレパルス級巡洋戦艦は、衝撃で機関が故障したもののそれ以上のダメージは無かったため巡洋艦二隻に曳航されて無事帰還した。


ーーーーーー


「命中した隻中、隻を撃沈できました。潜望鏡を出していないので艦種は正確には特定できませんが、おおよそ着底時の反応から重巡洋艦二隻と軽巡洋艦一隻、駆逐艦三隻と思われます。沈まなかった一隻は恐らく戦艦か正規空母かと」


「新型魚雷を耐えるとは中々やるな...潮時だ、敵の撤退にタイミングを合わせて撤退するぞ」


「了解」


予め機関を切って待ち伏せていた教皇国海軍の潜水艦は、ソナーに反応を見るや否や装填してある全ての魚雷を発射する自動魚雷発射装置を巧みに配置し、大戦果を上げた。勿論軽空母艦載機のマートレットが空を飛び回って索敵しているのだが、ソナーを搭載していないマートレットに潜望鏡を出していない潜水艦を見つけるのは至難の業である。

ちなみに、最初に英艦隊が気付いた反応はこの潜水艦のものである。


ーーーーーー


「哨戒艦隊から緊急連絡! 複数の敵潜に攻撃を受け敗退した、とのことです!」


「あの用心深さでは英国随一のマイケル提督が破れたか...」


「敵はよほど高性能な潜水艦を投入したのでしょうか...」


「いや、我々の基地に現れる潜水艦はなんとかソナーで探知できていた。しかもマレー沖はかなり水深が浅かったはずだし、おそらく性能の問題ではなく予想できないような待ち伏せを受けたのだろう。それに敗退と言っても、ある程度の損害を負って撤退してるだけという可能性もある」


エルビス・ラッセル・ウィンウッド中将は、言わずと知れた大艦巨砲主義の従従な信徒であり、戦艦が海の覇者であると信じていた。とはいえ中将まで上り詰めただけあり、航空援護の無い戦艦が無力であることなどはしっかりと理解している。故に、VT信管の開発や戦艦の護衛用の使い捨て軽空母導入を提唱してきていた。

しかし、彼は祖国が80年前にUボートに苦しめられたことなどすっかり忘れた、というよりも当時損害をほぼゼロにした護衛空母の存在の影響で、航空機による索敵網の中での潜水艦など恐るるに足らず!と信じていた。

これは彼が特別ではなく、英海軍の軍人の一般常識となっていた。

そしてこの過ちが今回の戦争にて致命的な敗北の原因となるが、それは随分と先のことである。


「航空隊を向かわせろ。まぁとっくに敵はいないと思うが、撤退中に攻撃を受けないとも限らん」


「はっ!」


命令を受けて数十秒で艦隊中に無線が届き、対潜用の追加装備を施してあるハリケーンが順次発艦していく。

ハリケーンは哨戒艦隊のマートレットとは違い、追加装備によって小型の曳航ソナーを獲得しており、いくら小型の低性能ソナーといえど英海軍が誇る大量の空母で多数を効果的に運用すれば、駆逐艦と連携するまでもなく潜水艦を発見できる。実際、平時に教皇国の潜水艦が挑発しに来たときも即発見し追い返していた。


「先の戦いでは遠距離からのミサイル攻撃などというクソみたいな戦術のせいでハリケーンを敵潜の元に送り込むことができなかったが、今回こそは海の藻屑にしてやる!」


世界最強と謳われた英海軍は、教皇国軍の潜水艦数隻に対し本気を出した。


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