ep.17 総力戦2
帝国水軍艦隊司令 山本 亮太
「撃って撃って撃ちまくれ〜!」
満州で修理及び武装化を完了した艦隊計隻は法皇国軍事施設を整地していた。
ちなみに艦隊の内訳としては、
武装輸送艦八隻(弾薬満載)
装甲フリゲート艦十二隻(火砲満載)
増加装甲付きフェリー三隻(弾薬満載)
試作型火力投射フリゲート艦一隻(魔導ロケット満載。スラヴァ級みたいな感じ)
戦車揚陸艦二隻(弾薬と74式戦車4両搭載)
である。
未だ数両しかない74式戦車と共通部品を増やし量産性を高めた105mm連装砲を輸送艦にまで搭載し、雑多な小火器、いや雑多な鈍器で立ち向かう法皇国兵をなぎ倒す。
稀に高火力な魔法を放ってダメージを与えてくるものがいるが、それでも無視できる程度の損害だ。
唯一艦隊の驚異となりうるワイバーンは離陸前に破壊され尽くしているし、地下に隠してあるワイバーンも滑走路が無くてはロクに離陸できない。
たとえ1,2匹離陸できたところで、ハリネズミのように搭載してあるボフォースに撃墜されるだけだろう。
「まだ戦車は出さなくてよいのですか?」
「今出してもハッチこじ開けられてリンチされるだけだろう。それを避けようと速度を出すと天安門の二の舞だし」
「では使うつもりはないと?」
「いや、敵が戦意を失ったときにあれに乗って政府関係施設に突入する」
「なるほど。いや失礼しました」
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法皇国軍 地下司令部
「司令代理、被害報告がまとまりました」
(本来の司令である軍務尚書はゴンドラに乗っていた)
宮殿、城壁が破壊され軍事施設としての機能喪失
外務局、消滅
近衛軍ワイバーン滑走路、使用不能
空軍ワイバーン滑走路、使用不能
運河警備隊、壊滅
魔法研究所、唯一の通路である橋が使用不能
各所の警備部隊、通信途絶
一方地下ワイバーン格納庫は健在であり、
空軍ワイバーン50匹中、32匹生存
近衛軍ワイバーン18匹中、12匹生存
陸軍支援ワイバーン(性能が低い高齢ワイバーン)30匹中、30匹生存
と、ワイバーン自体はそこそこ残っているが、滑走路が壊滅し出撃不能。
幸い法皇国は常備軍がワイバーン騎士と警備隊だけでありそれ以外は予備役なため、攻撃を受けていない居住区から招集すれば軍の再編自体は容易である。
ただ上空は敵の飛行機械が居座っており、戦力を集結させればすぐにバレてしまう。
つまり打つ手なし...
「私は宮殿に向かう。護衛を数人手配しろ」
「危険です! 今外に出れば確実にバレます!」
「彼らは直接驚異になりそうなもの以外は攻撃しないようだから問題ない」
「う...」
20分後
「...というわけでありまして、戦況を覆すのは不可能です。仮に一時的に優勢になれたとしてもその後法皇国が存在してる保証がありません」
「なんということだ...この法皇国が...
(数十秒の沈黙)
和平だ...なんとか国家を維持したまま講話できるようまだ余裕があるうちに交渉だ」
皇太子トリスタン・レ・ブリアンソンは現実主義者であり、どっかの東條みたいに精神論を唱えたりはしなかった。
ーーーーーー
帝国水軍艦隊司令 山本 亮太
「司令、大きな旗を掲げた非武装の集団が近寄ってきます。先頭にいるのは、衣服から推察するにかなりの上位階級です」
「白旗では…ないな。だがおそらくこの世界での降伏を表す旗だろう。全艦に通達! あの集団に決して攻撃するな!」
「一応砲は向けておきますか?」
「そうだな、一応そうしておこう。それにしても外交というのは戦争より緊張するな」
この時の法皇国軍の交渉役はヴェルナー・フォン・パウル退役大将、元帥である皇帝も軍務尚書も亡き今、残存する軍関係者の中で最高位であった。
「な、砲を向けただと?...」
彼の護衛が困惑する。
「いや、いくら非武装でもこの人数をあまり近づけたくないのだろう。ここで止まるぞ」
彼は生来の軍人で幼少期から戦場に出ていたため、敵意が無いことがすぐわかった。
しかしこの判断は間違っていた。
「あんな遠くで止まりやがった...仕方ない、戦車で上陸するぞ」
こうして今戦争最大の悲劇が幕を開ける。
クレーンで戦車揚陸艦から降ろされた74式戦車がパウル中将のもとに向かった。
その時...
ズッガーン
戦車が大爆発。砲塔が吹っ飛びまさにびっくり箱。
「な、戦車が攻撃されたぞ!」
「反撃だ! 撃てー!」
実はこのとき、地下ワイバーン基地の航空爆弾が混乱により無造作に積み上げられており、それに74式戦車のエンジンから放出される大量の魔力が注入され爆発したのであった。
だがそんなことはこの時誰も知らないため、多くの兵士は攻撃だと断定。
兵たちは怒り狂い、かろうじて爆発を逃れた非武装の法皇国兵をミンチにし、その後ありったけの即応弾薬を法皇国にばらまいた。無論、居住区にも飛んでいった。
法皇国からの応戦も激しい。
居住区で待機していた予備役兵が火炎魔法を一斉に放ち、
格納庫が攻撃され、温存していたワイバーンもやむを得ず離陸。艦隊に対し攻撃を開始。
とはいえ偶然格納庫の出口の前が道だったワイバーンしか離陸できなかったため、
すぐに二式複座戦闘機に無力化された。
即応弾薬を撃ち尽くし、予備弾薬を運び出そうとして一瞬砲撃がやんだ頃、ようやく司令の指示が入った。
それまでも呼びかけていたが、発砲音と着弾時の爆発音で全く聞こえていなかったのだ。
「もういい! 十分だ! 攻撃をやめろ!」
こうして後に水軍の黒歴史となる事件は終わった。




