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ネット小説大賞準グランプリ受賞短編+作品置き場

外道転生者【キラー】

作者: monaka
掲載日:2021/05/28


挿絵(By みてみん)





「笑えねぇ冗談だな」



「お願いします! 何とかしますから!」



「死ぬか、払うか選ばせてやるって言ってるだろうが」



「あと一日だけでいいので待って下さい! 必ず、必ずお金は用意します!」



 いつだってこうだ。


 どこの世界でも一緒。金の無い奴等はいつだってこう言う。


 あと一日あと一日と先延ばしにして結局払えず俺みたいな選ばれた人間に多大な迷惑をかける。



「ダメだ。貴様の言葉なんて信じられるかボケ。今すぐ耳揃えて払え」



「お願いします、今手持ちがないんです! 明日になれば必ず用意しますから!」



「じゃあ俺が四六時中てめぇを監視してやろうか? 用意できるんだよな? 本当に用意できるなら俺が監視してても問題ねぇはずだな? 用意できなきゃバラして内臓売り飛ばすけど問題ねぇよなァ?」



「そ、それは……ッ!」



 ほらまたその顔だ。



「俺が居たら困るって顔だなァ? どうせ適当言って逃げるつもりだったんだろう?」



「そ、そんな訳……」



「もういいようるせぇ。今死ぬか一日俺に付きまとわれてから死ぬか選べ。それが嫌なら金を出しな」



 大抵の場合ここまで脅せば……。



「わ、分かりました……今は、これしかありませんが……」



 男が出して来た金をあらためると……。



「三分の一はあるじゃねぇかよ。なんでさっさと出さねぇんだ? まぁいいや。足りない分は他で埋め合わせしてもらうわ」



「ま、待って下さい! 残りは必ず、必ず一週間以内に……!」



「……明日金が用意できるはずだったのにおかしいなァ? もうテメェの言葉は聞かねぇ。確かお前綺麗な嫁さんと娘が居ただろ。貰ってくぜ」



 それなりにいい値段で売れるだろ。



「そ、それだけは! それだけはご勘弁を……!」



「あーもううるせぇ、もういいから死ねよ」



 俺は愛剣を抜き、目の前にいる男の首と胴を切り離した。



「へへっ。テメェの臓器と嫁と娘でおつりがくるぞ。良かったなァ?」



「貴方、今の音は……き、きやあぁぁぁぁっ!!」



「おっ、早速玩具が向こうからやって来たな」



 その後は勿論有言実行で、嫁と、奥の部屋に居た娘をきっちり奴隷商人に売り飛ばした。



 適当に解体した男の臓物を闇市で売り払ったが、二束三文にしかならない。



 かなりの酒飲みだったらしく臓器はほとんど価値が無いと言われ無駄な労力を使ってしまった。


 処理が遅く鮮度が劣化していた事も原因だと言われたがこれについては後悔は無い。



 解体の手間に比べて大した金にならなかったのは腹立たしい事この上ないが、その分嫁と娘は売り払う前に十分楽しませてもらったので構わない。


 このせいで死体の処理が遅れたんだけどな。



 しかし女は思ったよりも高く売れた。特に娘の方。


 あの男に貸したはした金がこんな大金に化けるとは……。


 世の中馬鹿ばかりで楽しいなァ?




「お兄さんって転生者のキラーさんですよね?」



「あぁん? なんだテメェ」



 今日の稼ぎでたらふく美味い物を食い、いい女を抱き、美味い酒を飲んで気分よく帰っていた時の事。



 人気の無い路地裏でガキに声をかけられた。



「俺が転生者だって誰に聞いた?」



「皆噂してますが、そうじゃなくても見たら分かりますよ。キラーさんとても強そうですし」



 俺の名はキラー。


 ここでは無い世界で死亡後にこの世界に転生してきた俗にいう転生者というやつだ。


 転生者は一般人どもより身体能力が数倍優れているのが通例である。



 そしてこの世界は強い者が弱い者から全てを奪い取る事が当然の世界。


 強ければ勝ち、弱ければ死ぬ。


 そういう場所だ。



 まさに俺の為にあるような世界だった。


 前世の記憶は有しているが、こちらで役に立つかといわれるとそうでもない。


 ただ純粋にこの力が俺の幸せに貢献してくれていた。



 弱者から奪って得る幸せというのはあまりに甘美で、真面目に働いて馬鹿な上司の言う事にひたすら頭を下げ続けていた日々が嘘のようだ。


 まぁ俺はそんな生活が嫌になって仕事をやめ、好き勝手にやりたい放題やった結果捕まって死刑になった訳だが。



 この世界では俺は強者だ。


 誰にも俺は裁けない。




 俺はこの世界で好き勝手に、弱者から全てを奪い尽くして最高に幸せな人生を送ると決めていた。



 決めた、というよりも……そうせざるを得ない。


 こんな世界で力を持って生まれたら奪うだろ普通。弱者は強者に食い物にされる為に生きているんだから。


 弱者は全て俺の玩具であるべきだ。



「……で、転生者の俺になんの用だガキ。俺は今日機嫌がいいからな、さっさと消えれば許してやるが……」



「実はいい話を持ってきたんです」



「おい、聞いてるか? 消えろよ。俺はガキが大嫌いなんだ」



 弱者の癖によく騒ぐからな。



「キラーさん、貴方程の人が今程度の稼ぎで満足なんですか? そんなはずありませんよね? 転生者の力があれば貴方は簡単に大金を手に入れる事が出来るんですから」



 ……何者だこいつ。


 見た目は十四~十五歳程度、といったところか。


 髪の毛は片目を隠したいわゆる鬼太郎ヘアーだ。鬼太郎なんて言ってもこの世界の奴等にゃ分からんだろうがな。


 しかし毛色は金色だ。いかにも貴族のお坊ちゃんといった風貌で身なりもなかなかに上等な物を着ている。



 ……金持ちの倅ならばいいように使って金を搾り取るのもアリか。



「へぇ? そこまで言うからにはテメェには金儲けの算段が有るってのか?」



 どうせ下らねぇ事を依頼してくるに決まってる。


 いじめっ子や気に入らない奴を殺せだとかな。


 世間知らずの坊やが運良く転生者を見つけたら金をチラつかせて殺人を頼む。この世界じゃ何もおかしい事ではない。



 良いね。非常に良い。


 こっちからしたら弱者の代表のようなクソガキを始末するだけで大金が手に入る。おいしい仕事だ。



「キラーさん、僕と……魔物を殺しませんか?」



「……なんだと?」



 魔物を殺す? このガキと一緒に? 馬鹿げている。



「テメェ……俺は笑えねぇ冗談が大嫌いなんだ」



「冗談ではありません。僕はキラーさんのように力はありませんが魔物を殺す知識とサポートスキルがあります」



 この世界には魔物という化け物共がいる。


 前に生きた世界では魔物という存在はゲームや漫画の中にしかおらず、その力もピンキリで、雑魚も居ればとんでもなく強いのもいるイメージが強かった。


 しかしこの世界では……初心者向けの雑魚、なんて優しい魔物など存在しない。



 俺が全力を出せばなんなく倒せるだろうが、その性質はやっかいな物ばかり。油断は出来ない相手だ。


 出来れば関わりたくない。



「テメェみたいなガキに何ができる。どうせ俺の後ろで震えてるだけだろうが」



「いえいえ。こう見えて僕も転生者なんですよ」



「……なんだと? だったらテメェで魔物狩りをやりゃいい。俺を面倒に巻き込むんじゃねぇ」



「転生者というのはこの世界に生まれ落ちる際にギフトを持って生まれます。残念ながら僕は戦闘向きではないのですよ。その代わり、魔物の弱点が分かりますし戦闘に関してのサポートスキルを所持しています。強力な……それこそキラーさんのような方と一緒で初めて真価を発揮できるのです」



 こいつが転生者だというのが本当だとしたら、確かに良い話かもしれない。


 この世界には転生者と呼ばれる人間が現状二十人ほどいるらしいが、全て個人で動いていると聞く。


 転生者同士が出会う事自体滅多にある事じゃないからだ。



 転生者同士で組めば更なる金儲けも可能だろうが……それにしても危険が大きすぎる。



「気乗りはしないな」



「理由を聞いてもよろしいでしょうか?」



「まず一つ、テメェが転生者である保証が無い。二つ、戦闘が俺任せなのが気に入らねぇ。三つ、いくら稼いでも折半じゃ俺が得した気分にならん」



 金髪のガキは「ふふふ」と笑いやがった。



「何がおかしい」



「いえ、失礼。噂通りの人だなと思いまして。まず転生者の証ですがこれに心当たりはありますよね? 転生者の身体のどこかに入っている紋様です」



 そう言ってガキは服を少しはだけ、首元を見せてきた。


 そこにはダイヤ型の模様が扇状に三つ並んでいる紋様があった。



「その紋様……確かに俺にもある。それが転生者の証だと?」



 俺の場合は額にある。俺は転生者の印を堂々と見せて歩いていたのか?



「ええ、転生者はもれなく、身体の一部にこの紋様が現れます」



 それは初耳だな……。俺以外の転生者と会ったのも初めてだから知らなくて当然だが。


 こいつはいろいろ詳しいのかもしれない。


 転生者だとしたら相手の年齢も当てにならないし、甘く見ない方がいい。



「次に、戦闘はキラーさんに頼る事になりますが基本的にはただ切りつけてもらうだけで十分です。それまでのお膳立ては僕がしますから。ただこの身体は魔物と戦うにはあまりに非力でして」



 転生者は身体能力に優れている物だと思い込んでいたが、俺がそっち方面に特化していただけなのか?


 運の悪い野郎だぜ。



「そして最後、僕は稼ぐためというよりキラーさんと一緒に仕事がしたいという気持ちの方が強いので報酬は多くを望みません。……そうですね、九対一でどうでしょう?」



「……ほう? なかなか身の程をわきまえてるじゃねぇか」



「それはそうですよ。キラーさんがその気になれば僕なんてあっという間に肉の塊でしょう?」



 そう言ってガキは笑う。



「魔物から取れる素材は非常に高額取引される物が多いですから、今よりも数段稼げるとお約束しますよ。僕に力を貸してくれませんか?」



「……一体何を殺る?」



「そうですね……石竜などどうですか?」



 石竜。冗談じゃねぇ。


 石竜といえば全身岩石で出来ていてどんな剛腕が切りつけても剣が砕けておしまいと聞く。


 そんな危険な魔物に俺をぶつけてどうしようというんだ。



「この話は無かった事にしようぜ。石竜に喧嘩売りにいくほど馬鹿じゃねぇよ」



「忘れましたか? 僕には魔物の弱点が分かります。勝ちまでの方程式は僕が用意します。キラーさんはそれをただ待って、とどめの一撃を入れてくれればいいんですよ」



「とても信じられんな……」



「もし危険だと判断したら僕を置いてすぐに逃げてくれて構いませんよ? キラーさんほどの身体能力があれば逃げるだけならどうにでもなるでしょう?」



 ……確かにそれはそうだが……。



「石竜の角と牙は非常に高額で取引されています。それらを持ち帰ったならば……」



「知ってる」



 角だけで豪邸が三軒は建つだろう。


 何やら王室が竜からとれる素材を集めているという話を聞いた。


 その関係で特別な恩賞が出る。



 それこそ角と牙、そしてついでに肝など、石竜を討伐して素材を持ち帰ったとしたらかなり乱暴な金の使い方をしていたとしても二年は遊んで暮らせるだろう。



「本当に……勝算はあるのか?」



「勝算、なんていう曖昧な物ではなくキラーさんが居れば数分で確実に殺せます」



 そう言って笑うその子供の笑顔は、俺が言うのもなんだがなかなかに悪人のそれだった。



 悪くない。善人ぶってる糞野郎共より悪人の方が余程信用できる。



「お前名前は?」



「僕の名前ですか。僕はレリックといいます。もしこの話に乗って頂けるのならば、明日の朝街の入り口まで来て下さい。今夜はこのくらいにしておきます。お時間取らせてすいませんでした」



 ペコリとお辞儀をして闇に消えていくレリック。



 一晩ゆっくり考えた。


 たらふく酒を飲み気分よく酔っていた筈なのに、妙に目が冴えてなかなか眠れなかった。



 不安も不審感もまだある。


 しかしあのレリックというガキの知識は今後役に立つ気がしていた。


 うまい事手懐けて利用してやればいい。


 骨までしゃぶってやる。



 そう決めたらやっと心地の良い眠気がやってきて、翌朝俺はレリックとの待ち合わせ場所である街の外へ向かった。



「キラーさん、おはようございます。きっと来てくれると思っていました」



 レリックの傍らには立派な馬車。



「馬車はこちらで用意させてもらいました。操縦は僕がやりますのでキラーさんは中でゆっくり休んでいて下さい」



「お前そんな事も出来るのか」



「役に立つでしょう?」



 違いない。こいつは使える。



「石竜がこのあたりに出るなんて聞いた事がねぇが遠いのか?」



「そうですね……ここから馬車で半日、そこから徒歩で二時間といったところでしょうか」



 遠いな。しかし行けない距離ではない。



「よし、じゃあ案内しろ」



 馬車はかなりいい仕立てで、横になれる椅子まであるわ上等なクッションだわで至れり尽くせりだった。



 以前馬車に乗った時とは違い乗り心地もいい。俺は横になってしばらく眠る事にした。





「キラーさん、キラーさん起きて下さい」



「んぁ……もう着いたのか?」



 レリックの声で目が覚めると、どうやら目的地に到着したという訳では無いらしい。



「少々問題が発生しました」



「どうした……?」



「アシッドベアが出ました」



 なんだと……? アシッドベアといえば特に狂暴で知られる魔物だ。


 俺の身体能力ならば倒す事はわけないだろうが、奴の爪には特殊な毒があって少しでも傷を負わされたら一巻の終わりと聞く。



「そんな面倒な奴の相手なんてしてられるか。回避して進めないのか?」



「いえ、ここは僕が役に立つと証明するいい機会です。安全な戦い方を教えますので始末して頂けませんか? 素材も手に入りますし」



 安全な戦い方……? そんなもんがあるなら是非教えてもらいたい所だが、そんな都合いい話が……。



 しかし、アシッドベアから取れる素材というのはかなり魅力的である。



 馬車から顔を出すと、確かに前方、まだまだ距離があるがかなりでかい個体がこちらを見ている。向かってくるのも時間の問題だろう。




「作戦があるなら聞かせろ」



「作戦なんて大層な物ではありません。キラーさんはただその辺に落ちている拳大の石を思い切り投げつけてくれればそれで構いません」



 ……投石だぁ? そんなもんで倒せりゃせわねぇぞ。



「いいですか? アシッドベアの急所は鼻のすぐ上の部分です。キラーさんはただ思い切り石を投げてくれればあとはこちらのスキルで軌道を修正します」



 軌道を、修正……?



「僕の力では一瞬怯ませるのが関の山ですがキラーさんがやれば間違いなくアシッドベアは気を失うでしょう。そうしたらすぐに腕を切り落とし、無力化してください。そこからはどうにでもなります」



 冗談だろ? と言いかえそうとしたがレリックの表情は至って真面目だった。



「いいだろう。やってやるよ。その代わり石が効果無しと分かったら俺だけでもこの場を去るぞ」



「その時は僕を置いていって構いませんよ。そうはなりませんがね」



「良い度胸だ。それだけ自信があるならやろうぜ」



 そう言っている間にもアシッドベアはこちらに歩を進めている。


 初めて見たのか馬車を警戒していたようだが、中に人間が居ると見るやドタドタと一直線にこちらへ走ってきた。



 俺はレリックの言う通りその辺の石を拾い、思い切り投擲。



 我ながら相当な剛速球だった。しかし、コントロールは皆無で、このままではアシッドベアの遥か頭上を通過していくだろうと、そう思ったのだが……。



「ギョアァァッ!」



 目を疑うほどの軌道変化。俺の投げた石はアシッドベアの頭上で急降下し、奴が言っていた鼻のすぐ上の所に勢いそのままにクリーンヒットした。



「……さ、アシッドベアは気を失いました。後は目を覚ます前に始末してしまいましょう。腕は手首より少し上あたりから切り落として頂けると都合がいいです」



 ……はは、こんな魔物と対峙してこの冷静さ。


 このレリックというガキはどこか狂っている。


 普通の人間ならば、それなりに腕に覚えがある者でも遭遇しただけで死を覚悟するような相手だというのに。



 そこから先はあっさりとした物だった。


 レリックはまず腕を、と言っていたが俺はアシッドベアが目を覚ますのが心配だったのでまず首を切り落とし確実に始末して、それから両手を切り落とす。



「慎重なのですね。本当は気管の傍に通っている筋もいい素材なのでほしかった所ですが……今回は爪と内臓だけで良しとしましょう」



 そう言うやレリックは懐から短刀を出し、アシッドベアの腹を掻っ捌く。


 そこから高値で取引される内臓を取り出し、マジックストレージに放り込んだ。



 マジックストレージというのは魔法の素養がある者なら大抵使える異空間の保存庫みたいなものだ。入れられる量は個人差があるらしい。


 俺には縁の無い物なので詳しくは知らんが。



「……よしっと、めぼしい素材は回収しました。ではこの先に川がありますのでそこで少し手を洗わせて下さい。そこからは徒歩になります」



 ……こいつは、使えるなんてもんじゃねぇ。


 敵の弱点を見抜き簡単に討伐できる方法を俺に伝え、俺が始末する。そして解体はレリックが出来るときたもんだ。


 マジックストレージまで持っているならある程度素材運搬にも困らない。


 こいつ単体では役に立たないのだろうが俺が居れば話が別だ。



 アシッドベアから回収した素材だけで一週間は遊んで暮らせる。



「石竜もこの調子でいけるのか?」



「もう少し厄介ではありますがキラーさんと一緒ならすぐですよ」



「ふ、ふふ……そりゃすげぇ。お前正式に俺の相棒になれよ。分け前は七対三まで出す」



「それは石竜討伐してから考えてもらうので構いません。それに報酬も八対二で構いません」



 そう言って笑うレリック。



「はは、俺達良いコンビになれるぜ」



「……だといいですね」



 こいつの腹に一物あるような所が逆に気に入った。



「人間野心を持ってなんぼだ。せいぜい俺を利用するといい。俺はお前を利用して私腹を肥やしてやるからよ」



「痛み入ります」



 ニヤリと笑うその表情。


 この笑顔だ。普段の笑顔とは違い、時折見せる闇を抱えた笑顔。


 身なりのいいぼっちゃんがする顔じゃねぇ。


 これは間違いなく悪党の顔だ。



「お前本当は何を企んでるんだ?」



「おや、興味がおありですか?」



「隠そうともしねぇのな」



「隠し事などしてもキラーさんにはバレてしまいそうですしね」



 こいつが一体俺を利用して何をしようとしているのか興味はある。



「なんだよ、聞かせてみろ」



「それは石竜を討伐してからにしましょう。正式にコンビを組み、大金を手にし、祝杯でもあげながら」



「いいだろう。じゃあさっさと石竜のところまで案内しな」



「かしこまりました」



 再びレリックはあの笑顔で応えた。





 レリックの案内で歩く事約二時間。


 当初説明を受けていた通りの時間で目的地に到着。


 そこはそれなりに険しい山の中だったが、そこだけ木々がなく岩肌が剥き出しになっている妙な場所だった。



「こんな所に石竜が居るのか?」



「ええ、普段はこの岩石に紛れています。ほら、よく見て下さい。あれが石竜ですよ」



 レリックが指さした方向を見ると、確かに岩肌とは少し色味の違う岩がある。しかし、巨大だ。



「おいおい、俺が思ってたのよりだいぶでかいが本当に大丈夫なのか?」



「勿論です。ここからはボリュームを落として下さい。石竜は耳が悪いのでそう簡単には起きませんが細工をする前に起きられてしまうと手が出せないので」



 そう言うとレリックは音もたてずにひょいひょいと岩肌を駆け、石竜のすぐ目の前まで行ってしまった。



 あの胆力はどこからくるんだ?


 それとも頭のネジがいくつかどっかいっちまってるのか?


 奴の場合は後者な気がする。やはりこいつはどこか狂っている。



 ちょこまかと石竜の周りを歩き回ると、レリックがこちらに戻ってきた。



「細工は流々、後は仕上げをなんとやら、です」



「もう奴を倒す準備が出来たっていうのかよ」



「ええ、後は適当に石でもぶつけて起こしてやればいいだけです」



「トドメはどうやって刺す?」



 それが一番重要な部分だ。俺を連れて来たという事は俺の力が必要なのだろう。



「それはまだ大丈夫です。とりあえず起こしてしまいますね」



「あ、おい!」



 レリックは何も説明せずその辺の石を掴むと石竜に向かって投げつけた。



 投げた石はそれほど大きい物ではないので、ごん、と音がするのみ。到底ダメージを与えられるような物ではなかった。



 しかし、奴を目覚めさせるには十分だったようで今まで岩石に見えていた部分にギョロリとした眼が現れる。



「で、でけぇ……!」



 俺の身体より大きいのではないかと思うほどの目玉。


 どうやら石竜というのは身体に比べて頭が巨大らしい。


 前足は短く、その分後ろ脚が巨大で全てを支えている。



「グギャゴグォァァァァァァ!!」



 咆哮。



 まるで大気は震えているような、気迫、そして殺意。



 不覚にも足が竦んでしまった。


 全力で逃げようにも足が動かない。



 このままでは殺される、そう思った。思ってしまった。



 しかし、隣でレリックがぱちんと指を鳴らすと、その状況は一変する。



 石竜の周りで大爆発が起き、石竜の足元が崩れ、完全にその場にひっくり返ってしまった。



「グボガァァァッ!!」



 そしてその場に図太い火柱が上がる。



「……い、いったい何をしやがった……!?」



「石竜の周りに爆薬を仕掛けて爆破しただけですよ。指向性高めの爆薬を地中へ向けて」



 その場で爆薬による落とし穴を作ったような物か……?



「だとしてなんであんな事になる……?」



「石竜は体のバランスがとても悪いんですよ。とにかく頭が重い。飛べもしないしそのバランスの悪さから長時間動き回る事もしない。基本的にはああやって寝てるわけです。僕は頭のあった方に多めに爆薬を仕掛けました」



 ……結果、驚いた石竜は足元が爆薬でグラつきバランスを崩し、ぽっかりと空いた落とし穴に頭から落ちて見事にハマってしまったわけだ。



「最後の火柱はなんだ?」



「あぁ、石竜のブレスですよ。竜族の中でも威力の高いブレスで、かなり厄介なんです。ただ怒るとすぐにブレスを撒き散らして対称を焼き殺そうとするので、今回はそれが裏目に出てしまったわけですね。思ったより馬鹿だったのでキラーさんがトドメを刺すまでもありませんでした」



 ブレスを吐こうとした所で落とし穴に頭から落ち、穴の中で自らのブレスに焼かれたのか……。



 自分が体内で生成した炎が外皮を焼くというのもよく分からんが、どちらかと言うと酸欠などに近いのかもしれない。



「ほら、簡単だったでしょう? 最初から起きていたら少々面倒でしたがこの時間帯なら寝ていると思っていました」



「……俺は何もしていないじゃないか。楽なのは助かるが」



「キラーさんの出番はこれからですよ。さすがに石竜は僕じゃ捌けません。奴の身体の切れ目、刃物が通りやすい場所を教えますのでキラーさんの力で割いてもらっていいですか?」



 また笑顔。


 しかし今回は子供らしい屈託のない笑顔だった。



 こいつにとっては石竜討伐など遊びのような物なのだ。


 あの爆薬を用意できるだけの横の繋がりと金を持っていて、それでも俺とこんな所まで来る理由。



 それはどう考えても快楽的な魔物討伐が目的としか思えない。



 やはり狂っている。


 しかしこいつに付き合う事で俺は大金を手に入れる事が出来るわけだ。



「どうです? キラーさんのお眼鏡に適いましたかね?」



「ふ、ふふ……いいね、最高だよお前」



 俺達はまさに持ちつ持たれつ、最高のコンビになれるぜ。今確信した。




 さすがの俺でも石竜の巨体を捌くのにはなかなか時間を要した。


 しかしレリックの指示は的確で、必要な素材等は一通り回収する事が出来た。



 そして驚くべきはレリックのマジックストレージの容量である。



 本人は、「魔物に対して有効な能力はあまりないのでこれくらいは役に立たないと」とほざいていたが、詳しくない俺でも分かる。


 こいつの魔力量は異常だ。



 あれだけの巨体ともなると取れる素材もかなりの大きさ、量になったがそれをぽいぽいと無造作に放り込んでまだまだ余裕がありそうだった。









「お前は最高の相棒だぜぇ……」



「もう酔ってるんですか? こんな事ならお酒は帰ってからにするべきでしたかね」



 解体で疲れた俺にレリックは労いの酒を出してくれた。


 ストレージ内にそんな物まで用意してあったとは優秀である。



 かなり度数の高い酒だったようで一気に酔いが回ってしまった。



「ほら、もうすぐ馬車に着きますからもうちょっと頑張って下さい」



「おぉ……後は、任せたわ。街に着いたら、飲み直しだぞ、いいな?」



「はいはい分かりましたよ。ではそれまでゆっくり休んでいて下さいね」



 馬車に乗り込み、横になる。



 あぁ、これは本当にいい拾い物をした。


 俺の未来は明るい。


 こいつと組んでガンガン荒稼ぎしてやる。


 そうすれば……一生、遊んで……くら、せ……。











「キラーさん、起きて下さい」



「……あ、あぁ……頭いてぇ……もう、着いたのか?」



「もう寝ぼけないで下さいよ。良く周りを見て下さい」



 段々と頭がはっきりしてきた。


 ここは……どこだ?



 薄暗い、廃墟のような部屋。



 それに、これは……。



「おい、レリック……これは何の真似だ?」



「何の真似も何も。僕の本当の目的はこっちでして」



 俺は部屋の中心で椅子に座らされ、ロープでぐるぐる巻きに固定されていた。



 身動きが取れない。



「テメェ……なんのつもりだ!?」



「だから、僕の目的はこれだって言ってるじゃないですか」



 そう言ってレリックは俺の剣を掲げた。



「お、おい……なんの冗談だよ」



「あれ、分かりました? 勿論冗談です」



 レリックが剣を降ろす。



「お、驚かせやがって……笑えねぇ冗談は嫌いだって言っただろ。早く縄を解け」



 まったく、こんなガキみたいな事をするとは……。いや、年相応と言えば相応なのか?



「僕が殺してもつまらないので特別ゲストを用意してます。さ、この剣でサクっと好きなようにやっちゃって下さい」



「……あ?」



 俺が括り付けられている椅子の背後から、誰かが前に歩み出た。



「お、お前……」



「……貴方に人生をめちゃくちゃにされた女です。娘も来ていますよ」



 女の言葉の後に、俺の背後から若い女が。



 この二人は、俺が殺した男の妻と娘。


 奴隷商人に売り飛ばしたはずだ。



「キラーさんが商人に売ったあとすぐに二人とも僕が買い取ったんですよ」



「な、なんでそんな……」



「勿論二人に貴方を殺させる為に決まってるじゃないですか」



 冗談じゃねぇ……! こんな所で死んでたまるか!


 やっぱりレリックの野郎は悪党だった。


 しかも想像の数十倍質の悪いタイプの……。



「さぁ、奥さん。それとも娘さんにしますか? どちらでもいいのでこの剣を取って下さい」



「私が殺す。この男、絶対許さない……」



 そう言ってレリックから剣を取ったのは娘の方。



「ダメよ。罪は私が背負うわ」



 母親が娘から剣を奪い取る。



 どうでもいい、そんな事はどうでもいいから早くこの状況をどうにかしないと……!



「レリックゥゥゥ!!」



「怖い怖い。これだから転生者は嫌いなんですよ」



「テメェも転生者だろうが!」



「まぁそれはそうなんですけどね。でも僕は転生者としての力はありますが制限がありますし、なにより転生前の記憶が無いんですよ。何せ赤子の状態で死んで転生したもので」



 赤ん坊で死んで転生……?


 そんな事があるのか。


 いや、そんな事どうでもいい。



「なんで俺と組んで魔物討伐なんて……!」



「え、そんなの決まってるじゃないですか」



 レリックは笑った。


 あの、悪人面で。



「キラーさんが喜ぶ所を見たかったからですよ♪」



 こいつ……! 大金が手に入ると思わせ俺が舞い上がるのを見て楽しんでやがった……!?



「僕はね、キラーさんみたいなのが喜びの絶頂から絶望の顔に変わる様を見るのが大好きなんですよ」



「この腐れ外道が……!」



「あはは♪ キラーさんがそれ言います?」



 畜生。畜生!


 なんでこんな縄が千切れねぇんだ!?



「特別な縄、じゃないですよ? キラーさんが弱ってるんです」



「なん、だと……?」



「アシッドベアーの肝と爪から取れる毒、そして石竜の牙を砕いた物と血液を少々……これをきちんとした分量で配合すると良い感じの神経毒が作れるんですよ。意識を保ったまま体の自由を奪うような、ね」



 こいつ、アシッドベアと戦わせたのも最初から……?


 わざとアシッドベアが居る所へ連れて行ったのか!?



「毒についてはついで、ですけどね。どうせキラーさんにはそこまで効果が続きません。貴方は解毒スキルも持っているようなので」



 解毒スキル……? 今まで毒なんて食らった事無いから知らねぇよそんなの……。


 こいつ人の所有スキルまで見抜く事ができるのか?



「さ、早くしてくれますか? あまりモタモタしているとキラーさんが復活してしまいますよ? せっかく舞台を用意してあげたのに演目を見せてもらえない、なんて事はありませんよね?」



 演目。


 俺が虐げた人間が俺を殺す様が演目だと?


 それを見たいというだけの為にこれだけ回りくどい事をやったってのかよ……。



「お前……狂ってるよ」



「……知ってます♪」



 レリックが再びあの笑顔をして、ついに母親の方が動き出した。



「わ、私が……! この外道を、殺す! 主人の仇!!」



 剣が振り上げられ、俺の肩口に向けて振り下ろされる。



 ふざけるな! ふざけるなふざけるな! こんな所で死んでたまるか! こんな、俺の玩具だった女に殺されてたまるか!


 俺はお前らみたいな下等な生き物とは違う。


 絶対に死なない! 生き残る。


 こんな所で死ぬ男じゃ……ねぇ!



「うおぉぉぉぉぉっ!!」



 女の振り下ろした剣が俺の肩に振り下ろされ、めり込み、止まる。



「えっ……えっ? う、動かない……!」



「はぁ……はぁ……残念だったなァ? 時間切れだ。テメェら覚悟しやがれ……!」



 俺の気持ちに呼応するように体内の代謝が激しく加速し、毒を完全に消し去った。



 力が、戻る!



 筋力で女の剣を受け止め、傷を負ったものの致命傷は避ける事が出来た。



 縄を引きちぎる。


 剣を離してへたり込んだ女をしり目に、俺は自分の肩から剣を引き抜いた。



「ふ、ふははは! これで形勢逆転だな。レリックゥゥ……お前とはいいコンビになれると思ったのによォ……俺の期待を裏切りやがって……ただで済むと思うなよ……」



「ひ、ヒィィィ!!」


「お母さんっ!!」



 女共は無様に地面にへたり込んだままサカサカとゴキブリのように這って俺から距離を取った。



「ザマぁねぇなァ? お前らは俺がレリックをぶっ殺した後にまた楽しませてやるからよォ……ちょっと待ってろや」



 レリックに剣を向け、その首を一薙ぎで……あれっ?



「何も持ってない腕を振り回して何をしているんです? そんなので僕を殺すんですか?」



 俺の手に剣が握られていない。



「馬鹿な、おかしい。こんな、何が……!?」



「僕の転生者としての能力は多岐にわたるのですが、魔物に対してはサポート的な物しか役に立たないんです。それは言いましたよね?」



「おまえ、何もんだよ……なんで、そんな……」



 レリックは、いつの間にか俺の剣を握っていた。



「僕も全く戦えない訳じゃないんです。むしろ戦闘スキルは山ほど持ってるんですよ。……ただ、転生者相手にしか効果がないだけなんです」



「そん、な……」



 何かの間違いだ。


 俺が、こんな所で、こんなガキに……。



「だからこんな事も出来るんですよ」



 目の前がぐるんぐるんと回転した。


 足を払われた? それとも投げられた? 分からない。何も分からなかった。


 目が回るなんて感じる間もなく俺は地面に頭を叩きつけられていた。



「うがっ……!」



「ほら、ご自慢の身体能力で抗ってみて下さいよ。それとも逃げますか?」



 そうだ、逃げよう。こんな奴相手にしてられるかっ!



 立ち上がって一目散にその場から逃げ出そうとしたが、既に出入り口の前にレリックが立っていた。



「……逃げられると、思ってました? ざんねん♪」




「畜生ッ! お前を殺して、俺は、俺は下等な奴等を見下して生きるんだァ!」



「救いようのない馬鹿ですねぇ」



 ぐちゃり。



 俺は再び地面に転がされていて、右腕の感覚が無かった。



 生暖かい液体が顔に触れる。



「ひっ……! お、俺の腕が……!」



「あ、すいませんつい切ってしまいました。もっと楽しもうと思ったのに。どうしましょう、まずは爪でも全部剥がしましょうか」



 レリックが俺の前まで歩いてきて頭を踏みつける。



 見下すな。俺を、見下すんじゃねェ……!



「えいっ」



 爪が一枚剥がされた。



「い゛っ!」



「痛いですか? でも腕が切り落とされるよりは痛くないんじゃないですか? ほら」



 もう一枚剥がされる。



「や、やめろ……、やめてくれ……!」



「え、なんでです? 嫌ですよ。まだ爪は沢山あるんですから」



 この野郎……、絶対、絶対殺してやる……!



「いいですねぇまだそんな顔が出来るんですか。ゾクゾクしてきちゃいましたよ」



 レリックは俺の手足の爪残り十三枚をたっぷり時間をかけて剥がし終わると、今度は指の肉を一本ずつそぎ落とし始めた。



「……たの、む……もう、やめ……」



「どうしてですか? 強い者が弱い者の玩具になるのがキラーさんのやり方では? だったら今の貴方が僕に口答えする事自体間違ってると思いませんか?」



「くそっ……、俺が、今までそうして来たから、同じ目にあっても……仕方ないって言いたいのかよ……ッ! テメェが俺を裁くつもりか!?」



「違いますよ?」



 レリックはあっけらかんと言い放つ。


 こいつの頭の中が何も分からない。



「今のはキラーさんの考え方を借りて説明しただけです」



 奴は俺の髪の毛を掴んで無理矢理自分の方を向かせ、グイっと顔を近付かせて言った。



「悪党を裁いてやる! なんて高尚な趣味は持ち合わせておりません。言ったじゃないですか、僕はただ貴方みたいな人が絶頂から絶望に転落するのを見るのが好きなんです。ただ、それだけですよ? だからほら、もっと楽しませて下さいよ」



「か、金か? 金なら出す! だから」



「……あまり失望させないで下さいよ。キラーさんは悪党としてもっと殺意に満ちていてほしいですねぇ。そもそも石竜の角と牙は僕のストレージに入ってるんですよ? これ以上お金が必要だと思いますか?」



 ちくしょう……ちくしょうっ! 俺はずっとこいつの掌の上で踊らされていた。


 情けない……悔しい。


 涙が溢れる。それすらも情けなく、悔しい。



「それは俺の金だっ! 誰がテメェになんて渡すかァッ! 俺は死なねぇ、お前を殺して……」



「あはっ♪ やっぱりキラーさんはその方が似合ってますよ。でもいくら騒いでもダメです。今日キラーさんは死にますしこれからもっともっと楽しんでゆっくり殺してあげますからね♪」



 そう言ってレリックは俺の手の甲の肉をそぎ落とした。骨が剥き出しになる。



「い゛ッ!!」



「気を失ったりしないで下さいよ? ……あ、そうだ貴女達もやりますか? 今なら抵抗されませんよ?」



 部屋の隅の親子にレリックが声をかけるが、二人はガタガタ震えながら首を激しく横に何度も振った。



「……あんなに恨んでいたくせに。つまらない人達ですねぇ。キラーさんからもお願いしてみた方がいいんじゃないですか? あの親子に」



 何故俺がそんなバカげた事をしなきゃならないんだ……。




「……仕方ありませんね。では引き続き楽しみましょうか」











 いったい、どれだけの時間が経っただろう。


 本当ならとっくに失血死していてもおかしくない。


 不思議な事に俺の身体からはあまり血が流れていなかった。



 意識は朦朧としているものの、失う事もなく地獄だけが続いていく。












「……もう悲鳴もあげてくれないんですか?」



 こいつは俺に回復魔法をかけながら少しずつ肉を削っていたらしい。


 いっそ気を失う事が出来たらどれだけ楽だっただろう。



 既に俺の両手両足は削り切られ、ほとんど骨だけのような状態になっている。


 もう俺はお終いだ。


 さすがに諦めるしかない。


 言葉通り、手も足も出せないのだから。


 でも問題無い。


 俺には次がある。



 だから早く終わってくれ……。













「なんだか飽きてきましたねぇ」



 どうして俺は胴体と頭だけの達磨状態にされて生きているのだろう。


 どうして……。



「なんとか言って下さいよ」



「こ、ころ、して……くれ」



「……はぁ、他の人よりは随分楽しめた方ですがキラーさんもこの程度でしたか」



 もう、嫌だ。


 死なせてくれ。


 そして俺は……次の転生で、次の命こそ、本当にクズどもを見下ろして幸せに生きるんだ。



 だから。



 だから……。



「はやく、殺せ!」



「……来世に期待」



 ……。



「……と言ったところですかね? 転生者は転生する際神に言われるらしいですね。選ばれた特別な魂だから死んでもまた別の命に転生させると。まぁ僕の場合は赤子の頃だったのでよく分かりませんけれどね」



 そう。俺達転生者は来世が約束されている。


 この人生では下手打ってこんな事になってしまったが次はこうはいかない。


 もっとしたたかに、そして圧倒的に、情け容赦なく他者を虐げて生きるんだ。


 俺にはその資格がある。



「とてもいい事を教えてあげましょうか」



「なに……を?」



「僕は転生者相手じゃないとほとんど能力を発揮できません」



 それはもう聞いた……。



「そして、僕は転生者の命を終わらせる事が出来ます」



「だから、早く……」



「おやぁ? 殺してしまっていいのですか? もう一度言いますよ? 僕は転生者の命を終わらせる事が出来ます」



「何を言って……あっ」



 嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!



「そうですその顔です。僕が一番見たかったのはその顔ですよあはっ♪」



 レリックの顔がぐにゃりと歪む。


 なんて汚い笑顔なんだ……!



「選んで下さい。手足の無い達磨のまま生きるか……それとも来世も何もない死を選ぶか」



「嘘だ……冗談に決まってる……!」



「残念ですけど転生者の輪廻を断ち切るのは僕の力の一つですから。僕に転生者の紋様を切られたらもう二度と転生する事はありません。だから貴方はあの親子に殺されておくべきだったんですよ」



 あの親子に殺されていれば俺には来世があった。


 だがあの時点でこの命を諦める事なんてできなかった……。


 当然だろう? だって、だってこんな規格外の馬鹿が存在するなんて……。



「キラーさんは醜く今世にしがみ付いたせいで来世がなくなっちゃいましたね。……で、キラーさんの答えは殺してくれ、でしたっけ?」



「や、やめ……」



「……僕の答えを知りたいですか?」



 レリックが再びあの笑みを浮かべる。


 分かってる。


 こいつの答えなんて……。



「イ・ヤ・で・す♪」



「お前は、お前はいったいなんなんだ……!」



「そうですね、僕は貴方みたいな外道を専門に殺す事を楽しみに生きているだけの小市民ですよ。言うなれば……」



 またあの笑み。



 剣の切っ先が俺の額からぬぷりと、入ってくる。



「嫌だ、た、たすけ……」








「外道転生者キラー。なんてどうです?」




 ……笑えねぇ冗談だ。








お読み頂きありがとうございます。

普段はドタバタ多めのTSファンタジーなぞを書いておりますが、たまに陰鬱な物が書きたくなるので完全に趣味作品として投稿いたしました。


外道転生者キラーはいかがでしたか? 実の所レリックというのは偽名でして。

レリック=rellik=killer

そうは読まんやろ、って突っ込みは無しでお願いします(笑)


もしよろしければ下の方にある☆を感じたままの数で構いませんので★にしていって頂けると嬉しいです☆彡


短編としては長めの1万5000文字もお付き合いくださってありがとうございました( ◜◡◝ )


作者の別作品もよろしくね!

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