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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十一話
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第十一話13

「……っと失敬。どうしたね、何か忘れも……っ!?」

 言いかけたところで彼女は奇天烈なステッキをクラウドに突きつけた。

「……何の真似だね?」

「フフ、これまで随分手こずらせてくれましたわね、クラウド先生?アズールのネットワークにハッキングするなんて大したものですわ」

「さっきの少女……ではないみたいだね」

 彼女の口ぶり、そしてさっきまでのおどおどした彼女とは別人と感じるほどの大人びた表情、姿は違えどその風貌は紛れもなくあの方しか見えなかった。

「ええ、ちょっとこの子の体を拝借しましたの。あの坊やに監視カメラを付けていたら思いもよらない獲物に巡り会えましたわ。まさかアタシたちを嗅ぎ回っていた人間がミカドの者ではなくスクールの、しかもいち教師がやっていたなんて考えもしませんでしたわ。目的はなんですの」

 そして彼女はさらにぐっとステッキを彼の喉元に突きつける。

「そのスクールのいち教師であるわたしを探していたとは至極光栄なことだ。だが、わたしの目的を言う前にどうかあなたの名前をお聞かせ願いたい」

「フフ、どうせ消えてもらうんですもの、名前ぐらい教えてあげますわ。アタシはアズールのリーダー、マリア。冥土の土産に覚えておきなさい」

 マリア、彼はその名前を耳にした瞬間ふるふると肩が震え始めた。

「やはり……やはりやはりやはりやはりやはりぃぃぃ……!!!」

「……っ!?」

 彼の狂ったような歓喜の叫びに彼女は一瞬たじろいだ。そして彼は両手で彼女のステッキを掴み、先端を喉元へと差し出した。

「マリア様、ああマリア様!このわたしめに罰を与えてくださるとは何という至極!!これほど嬉しいものはありません!!本当は御自らあの鞭で処罰していただきたかったが、この際構いません!さあ!その武器でわたしを罰してください!!」

「ぃっ!?」

 さっきまでのクールな雰囲気とは打って変わり、自ら罰を求める偏愛狂人へと変貌してしまった。

 その思いもよらぬ変貌ぶりに彼女もつい変な声が出てしまった。マリアという名に恐れおののいて命乞いすると思っていたがこれは予想外の展開だった。

「マリア様、このわたしをお裁きください!あなた様のお力になれるようアズールにハッキングし続けていたこのわたしにお慈悲の鉄槌を!さあ!さあ!!」

 喉元にステッキの先端を突きつけながらぐいぐいと迫る彼に一瞬たじろいだものの、彼女はいつもの調子に切り替えニヤリと笑みを浮かべた。

「それなら……」

 彼女はステッキに仕掛けられたレーザー光線を撃つ……ことはせず渾身の回し蹴りでクラウドを壁に向けて吹っ飛ばした。

「くはっ!?」

 不意を突かれた蹴りをもろに喰らい、クラウドは気を失った。

「ふう……、あなた程度の者、殺すまでもありませんわ。それに、シスカを匿ってくれたお礼もありますしね」

 そうして彼女はふふっと笑みを浮かべ、部屋を後にした。

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