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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十一話
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第十一話11

「……おい起きろ。……おい」

 誰かが俺に問いかけてる。一体誰だ?随分低い声で問いかけてるものだから俺に言ってるのかすらわからなかった。起こすならもう少し大きい声で起こせよ。

「いつまで死んだフリしている。とっとと起きろ」

 と、ソイツは突然ビタン!と俺の頬に躊躇なくビンタを喰らわせた。

「痛ってえなてめえ何しや……!?あれ、俺生きてる……?」

 俺が飛び起きたところで自分が生きていることに気がついた。確か俺、根暗な男に突然脳天を銃で撃たれて……。

「っ!?」

 俺は慌てて額に手を当て、傷痕がないことと血が付いていないことを確認した。周りを見渡すとそこは眩しいくらい真っ白な部屋で、俺はその真ん中に置かれているベッドの上で寝かされていたようだ。そしてその傍らにはさっき俺を撃った根暗な男がこっちをじっと見つめていた。その死んだ魚の眼のような覇気のない表情が少し不気味に感じた。

「お前、さっき俺を撃った……。偽装だったってことか」

「理解が早くて助かる。そうだ、お前をあの場から連れ出すにはこうするしかなかった。シスカとレナには悪いことをしてしまった」

「そうだ……、あの二人はどこだ!まさかミカドに連行されてないだろうな!?」

「自分の心配より二人のことを気にかけるとはな。安心しろ、あの二人には指示があるまで軟禁という名目で自室に待機させている」

 それを聞いて俺は安堵の深いため息をついた。俺が撃たれて気を失う間際、二人の悲鳴が聞こえたからな。

「確かお前、クラウドとか言ったな。あのシスカを雇ってあげたりこうして俺を連れ出したり、何を企んでる?」

「ほう、そこまでわたしのことを知っていたのか。ならば話は早い。単刀直入に言ってわたしはミカドの意向など一ミリも加担する気はない」

 意外……というよりやはりという気持ちがピンときた。ただそれをして彼にどんなメリットがあるのかと疑問符だけが浮かんだ。

「それはアンチテーゼと見ていいのか?」

「好きにしなさい。わたしは自分の信じた道をただ選んでいるだけ。その過程で君を救い出したまでのこと」

「そうかい、でもいいのか?他の教師に目をつけられたりしないのか?」

「君は本当にお人好しだな。そんなこと、適当に理由をつければ何とでもなる。これでも少しはスクールの中では信用されているのだが」

 信用されている人間がスクール内で爆発起こした実験したりいきなり拳銃で撃ったりしないだろ……。

「それで、俺をここに連れ出してどうする気だ。まさかこれから人体実験でも始める気じゃないだろうな?」

 冗談めいて彼に問いかける。何せ今俺の両手両足首に拘束具が付いていないのだから。

「人体実験ではないが君に関するデータは先に抽出させてもらった。少し見させてもらったが、確かにこれは興味深いデータだった」

 ふっと恐怖心が襲い俺は頭を触った。だがやはりどこも異常はわからなかった。

「俺の記憶を抜き取ったのか……?」

「抜き取ったわけではない、君の記憶をコピーしただけだ。しかし君のいた星……チキュウとか言ったか、文明こそ遅れているものの我々と見た目の変わらない人種、生活に適した環境……フッ、ミカドが欲しがるわけだ」

 クラウドは独りぶつぶつと呟き納得している。それが若干不気味に感じた。

「ところで一つ気になる映像があったのだが、どうして君の記憶の中にマリア様が映り込んでいるのだ?」

 唐突に彼の口からマリアというワードが出てくる。確かに他の惑星に何の脈絡もなくタルーヴァの反乱組織アズールのマリアが出てきたら不思議がるのも当然だろう。

「ああ、マリアのことか。アイツ裏切り者のシスカを殺すためにわざわざ地球まで来たんだよ。それを俺たちが撃退したら何故かこっちに居座っちまって……。でもアイツがいてくれたおかげでミカドから命救われたし、こうしてタルーヴァまで連れてきてくれた。アイツには感謝しかな……っ!?」

 と、マリアのことを話していると突然クラウドが俺の口を手で押さえベッドに叩きつけた。

「っ!?!?」

「アイツではないマリア様だ、言葉を慎め小僧」

 ずっと死んだ魚のような眼だったクラウドが殺気だった眼に豹変し俺を睨み付けた。えっ、何でそこで怒るんだ?

 俺はなんとか彼の手を払い除け、

「悪かったよ、さっきから何なんだアンタ。アズールの一員なのか?」

「いや、わたしはアズールの情報を傍受し崇拝するマリア様のために動いているただのスクールの教師だ」

 いやいやいや、普通の教師が暗殺組織の情報傍受しねえよ!?

 そういえば以前リディアたちがコイツの研究室に向かったら爆発したって言ってたけどこれってアズールに加担するための武器作りしてたんじゃ……。

 それにマリア『様』を崇拝してるって、コイツかなりの狂信者なんじゃねえか?

「つまり、マリア……様が計画していることも大体知っているってことか?」

「ああ、だがここ最近マリア様の声が聞けなくて仕方なく幹部どもの会話を聞いていたが……なるほど、そのチキュウにいては傍受も出来んわけだな」

 と、一人納得したように頷いていた。

「それで、君はミカドに乗り込んでリディア君を救いに行くというのだな」

「ああ、だけどこれからどうやって行くべきか……」

 シスカとレナとも離ればなれになってしまい、これからどうすべきかわからず路頭に迷っている。俺一人ミカドに向かったってまた捕まるのがオチだ。

「その心配はなさそうだぞ?」

 と、クラウドが言ったすぐ、この部屋の扉がすっと開きだした。

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