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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十一話
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第十一話10

 嘘でしょ、何でこの二人がここにいるの……?

 集合場所の倉庫の奥から現れたのは見覚えある顔の二人、同じクラスメイトの倉持勇斗と笹本高史だった。二人とも白いスーツのような服を着てそれぞれショットガンを持っていた。

「お前君塚だよな?何でここでそんなコスプレしてるんだ?」

「ひひひひひ人違いです!?ぼくはどこにでもいる月の魔法戦士プリティリリィ……」

「どこにもいねえよそんなヤツ!?なあお前君塚だろ?同じクラスの」

「勇斗よくわかったね、全然違いすぎてわかんなかったよ」

「そりゃわかるよ、コイツ裏でそういうのやってるの知ってたし」

 うぅ……、クラスの人には隠してるつもりだったのにバレちゃってる。ましていつも陽キャなグループにこの二人に……。

「わ、笑うなら笑いなよ!ぼくみたいな陰キャがこんなイタい趣味してるって!?」

「はぁ?いいじゃねえか他人の趣味がどうとかなんて。それに前々から思ってたけど君塚って結構可愛いんだから、もう少し胸張ってもいいんじゃないか?」

「…………えっ?ほええ!?」

 彼からの思いもしない言葉につい変な声を上げてしまった。まさかぼくのことをか…かかかか可愛いとかそんなぁ!?

「はぁ……これがもっとうまく活かせてたら彼女なんて簡単にできるのに……」

「高っちなんか言った?」

「いや別に。無自覚は罪だなぁって」

 その答えに倉持は「?」と首を傾げた。「まぁバレたところで僕らもコスプレしてるからおあいこじゃないかな。確か、『異能バトルは未開の地で』とかいう……」

「えっ!?その衣装やっぱり『バトみか』のホムラとシエンのなの!?ずっと見覚えあるなって思ったらやっぱりそうだったんだねっ!特に左肩のところのエンブレム、再現率高過ぎでしょ!それとやっぱり欠かせないのが……!」

 と言ったところで、ふと我に返った。ああ、またオタクの血が疼いちゃった……。こういうとこ、引いちゃうんだろうなぁ……。

「やっぱお前も知ってたか!いや~あれあまりにマイナーすぎて誰も理解してくれなかったんだよ。高っちも反応薄いし……。やっぱレイヤーやってるだけあってわかってるなぁ」

 と、引かれるどころかむしろ感心されちゃった……。今まであまり話したことなかったけどなんだ、こんないい人だったんだ。「ね、ねえ倉持くん!よかったらぼくと……!」

 と、ぼくが言いかけたところで奥の大きなドアがバン!と勢いよく開き、外からぞろぞろと屈強な男たちが入ってきた。

「えっ!?な、なになに!?」

「ちょ、ちょっとこれ絶対やばいやつなんじゃ!?」

「おい!いいから逃げるぞ!」

「逃げるってどこに!?」

「待たせたなお前たち!」

 突然のことにぼくたちがあたふたしていると、ドアの反対側にあるデッキから一人の女性が現れた。

「「「おおおおおおおおおおおお!!」」」

 彼女の声に呼応するように屈強な男たちは雄叫びを上げる。地鳴りのようなその雄叫びにぼくたちは怯えるように耳を塞いだ。 金色の髪を靡かせて現れたその女性はぼくたちより大人っぽく、露出の高い黒のエナメルの服を着たグラマラスな人だった。

「あの人って……誰?」

「知らない……俺たちを連れてきたマリアさんはもっと小学生みたいに小さかったんだけど」

「そうだよね、なんとなく雰囲気は似てるけどもしかしてお姉さんなんじゃない?」

 とりあえずぼくたちはあの人はマリアさんのお姉さんだ、という認識で一致した。じゃあぼくたちを連れてきた妹さんはどこにいるのだろう。

「このアズールを結党して早数年、駒は完全に出揃った!決行は今夜、お前ら!誰一人ヘマをするんじゃねえぞ!!」

「「「おおおおおおおおおお!!」」」

 それはまるで一昔のドラマで見た暴走族の集会のようだった。これから別のグループと決闘に行くかのように。

「んっ?ああお前たち無事に任務を果たしてきたようだな。皆聞け!コイツらはアタシがチキュウという星から連れてきたサポートメンバーだ。あの坊やの仲間だから皆仲良くするように!」

 と、リーダーの女性がぼくらを紹介すると皆こちらに振り向き一斉に一礼をする。あまりにも統率が取れていてぼくたちはつい硬直してしまった。

「あ、どうも……よろしくです」

「「「よろしくですっ!!」」」

 なにこれ怖すぎる!?

「あ、あの……リーダーさん。俺たちは一体何を?」

「何を畏まってる?ああこの姿を見るのは初めてか」

 と、リーダーさんの体が突然光り出しあっという間にぼくが見た幼女の姿に変貌した。

「……ふう、この姿の方がよろしかったかしら?」

 急にSFチックな変身にぼくらはぽかんと口を開けていた。

「すげえ、ホントにマリアさんだ……」

「「「いえあああああああああああ!!」」」

 すると屈強な男たちはマリアの幼女姿を目の当たりにするとさっきよりも大きい歓声を上げた。ガッツポーズをする者、天を仰ぐ者、そして泣き叫ぶ者もいた。

「この人たち、もしかしてこっちのマリアさんの姿の方が……」

「何も言うな、今は喜ばせておけ」

「さて、こちらの駒が揃ったところでまだ肝心なことを話してませんでしたわ。あなたたちの使命はこの二人を無事に合わせること。そのためには誰一人ヘマは許されませんわ。皆さん、気を引き締めなさい!!」

 と、マリアさんの背後にプロジェクターのようなスクリーンが現れ、そこには二人の男女が映っていた。一人はさっき会った進藤くんと……え、リディアさん!?

「おい、あれって進藤じゃね!?それに隣の子って……」

「確かこの前教室でいちゃいちゃしてた彼女さんだよね。でもどうしてあの二人が……」

 この前ってぼくがリディアさんと会ったあの日のことかな。やっぱり二人って付き合ってたんだ。

「ぼ、ぼくにもまだよくわかんないけど二人はこの星にとって大事な存在みたい。さっきマリアさんからの指示で悪い人たちから進藤くんと一緒にいたメイドさんを助けに行ってたんだ」

「え、アイツ何でそんなアクション映画みたいなことしてんの?そんなトラブルメイカーなヤツだったっけ?」

「いつもぼけ~っと窓の外見てるイメージしかなかったけど」

 進藤くんってみんなからそう見られてたんだ……。

「進藤くんはともかく、リディアさんがここで出されるってことは……」

「彼女がここの星の人……」

 ざわついているぼくらを余所にマリアさんは話を進めていた。

「そういえばあの星にいたとき素晴らしい物語を聞きましたわ。愛し合う男女が突然偉い人間たちによって引き離され一年に一度しか会うことを許されないという悲しいお話。ああ、なんて不条理なことでしょう……」

 きっとそれって織り姫と彦星の話だろう。マリアさんはそんな話に少しうっとりしながら話している。

「皆さん、この運命に引き裂かれたこの二人をもう一度会わせてあげましょう!それが、我々アズールの勝利に繋がるのです!!」

「おおおおおおおおおおお!!!」

 進藤くんとリディアさんが巡り会わせるだけでどうして勝利に繋がるかわからないけど、ぼくらもとりあえず屈強な男たちと一緒に雄叫びをあげた。

「いい返事ですわ。では、ミッションスタートです!!」

 その号令とともに男たちは一斉に持ち場へと散らばった。

 残されたぼくたちはぽか~んとしながらがら空きになった大広間を眺めていた。

「そういえば、あなたたちには次のミッションのこと話してませんでしたわね」

 いつの間にか下の階に降りてきたマリアさんがぼくらの方へと歩いてきた。

「マリアさん」

「初ミッションご苦労様。見事な働きぶりでしたわ」

「あ、ありがとうございます!あの、これは一体……」

「ええ、さっき話したとおりあなたたちにはクーデターに協力してもらいます」

 え、それ初耳なんですけど……。

「まあ安心なさい。戦闘に不慣れなあなたたちに人殺しなんてさせませんわ。もっと穏便なミッションを与えてあげます」

 でもさっきのやつ下手したら死人が出てたんじゃ……。

「その任務って?」

「ええ、先ほどあの坊や殺されたみたいなので死体を回収してきなさい」

「「「…………えっ?えええええええええええ!?」」」

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