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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十一話
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第十一話9

 ミカド本部にある幹部会議室。そこではミカドの幹部10人が集結していた。テーブル中央にはイスに座った一人の老人のホログラムが映し出されている。

『状況は』

「幸い学生と警備隊に死者は出ていないようです。ただ対象の二人は校舎内に潜伏している模様」

『そうか、彼等を確保次第連絡せよ。それとあの怪物に乗っていたのはアズールのマリアと別人で間違いないのだな』

「はい、報告では何とも奇抜な衣装を纏った少女が奇怪なことを言ってレーザービームを照射していたとのこと。警備隊が追跡していましたが目の前で突然姿を消したようです」

『またか……。以前あの怪物に乗ったマリアを取り逃したときも捕獲する直前で突然消えたな。ふむ、アズールが何か動きを見せるかもしれん、引き続き警戒せよ。そして校舎内に逃げた二人を必ず捕らえよ!』

「ハッ!」

 そう伝え終えると老人のホログラムはふっと姿を消した。

 部屋が明るくなるとテーブルを囲む幹部たちは力が抜けたように深いため息をつく。

「またアズールの奴らか!最近動きを見せずにいたからとっくに滅んでいたと思っておったのに、何故このタイミングで動き出したのだ!?次は誰を狙うつもりだ……?」

「案外あなたかもしれませんよジェイド?思い当たる節はあるんじゃないですか?」

 ジェイドという中肉中背の男は隣に座る白髪頭の初老の男を睨みつける。

「あるわけないだろっ!!そういう貴様はどうなんだドマーニ、貴様の噂は皆知っておるぞ?」

 ドマーニという男はジェイドのその言葉に眉をピクッと動かした。

「おや、噂とは何のことでしょうか?わたしが次のミカドになるとかでしょうか?」

「とぼけるな!貴様が今回の惑星侵略計画に有利になるように賄賂を送っていたこと、知らぬ者はおらんぞ!」

「何をとぼけたことを。わたしは侵略する星が見つかった後スムーズにことが進むよう関係各所に根回しをしているだけですよ。やましい理由など微塵もありません。それに、そんな些細な噂など皆持っているでしょう?あなただってわたしから見れば泥のようなものですよ?進んでいますか?最新兵器の件」

「ぐっ……。もうよい!!」

 と、ジェイドは憤慨しながら会議室を後にする。

「それにしても、ミカドが言っていたあの二人とは一体……?」

「わたしにも分からぬ。ミカドからは『スクールに不穏な動きがある。不審な者が来るかもしれん、警備を強化せよ』と言われたまで。二人の素性など少しも分からぬ」

「また我らを差し置いて話が進んでおったか……。ここで一体何が起こっているのやら」

 と、残された幹部たちはやれやれとため息をつきながら会議室を後にした。

 残るドマーニはミカドと呼ばれる男が映し出されていたテーブルを見つめ、ニヤリと笑った。

「さて、次はどう出るつもりだ。マリア……」


「これで完璧です。お似合……プフっ!ですよ、ミコト様」

「お前今笑ったろ。絶対今笑ったろ?」

 あれから30分後、レナに身ぐるみを剥がされた俺はこの部屋のクローゼットから引っ張り出された衣装に着替えさせられた。それは、以前リディアが言っていた文化祭の予備用に作られていたメイド服だった。

「アッハハハハハ!!ぜっんぜん似合わないわねアンタ!?逆にこれいけるんじゃない!?」

 と、俺を仕立て上げたレナは何のお世辞もなく文字通り腹を抱えて笑い転げていた。

「てめえ何が作戦だ!こんなのすぐにバレるに決まってんだろ!?」

 そう、俺がいくらメイド服を着たところで骨格も合ってないし、顔もそのままだ。こんなの俺はここですよって喧伝しているみたいだ。

「わかってるわよ。ほら、じっとしてなさい」

 と、レナは空中で何かをタッチすると画面を出し、それを俺の顔に向けてスライドした。

「な、何だよそれ!?」

「目を瞑って。瞼までメイクできないから」

 何を言っているかわからないがとりあえず俺はレナの言うとおり目を瞑った。

「ほら、出来たから目を開けなさい」

 レナに促され目を開けると、鏡には今まで見たことない女性的なメイクをした俺の姿が映っていた。

「え、嘘だろ……?これが俺?」

 我ながらついうっとりとしてしまった。メイクってすげえ……、宇宙テクノロジーだからできることなのか?

「どう?わたしにかかればこれぐらい朝飯前よ!」

「すげえ!すげえよレナ!これならバレねえぞ!」

「でもそれ、スイッチ押せば誰だって……」

「さーて!準備も出来たことだしそろそろ出発よ~~!」

 レナはシスカが言おうとしていたことを無理矢理遮り、扉のボタンを押して開く。

 すると、

「レナ、どこに行く気だ?」

 扉を開けると、そこには3人の男が入り口を遮るように立ちはだかっていた。

「あ……あ~ら先生方、どうしたんですか?わたしちょっと用事があるんですけど?」

「外出禁止命令が出てるのを知らないわけがないだろう?いいから部屋に戻りなさい。……ん?この子たちは誰だ」

 と、教師と思われる男はレナの後ろにいる俺たちを怪訝に見ていた。

 まずい……、いくら仮装したって急に現れたら怪しまれるに決まってる!?

「あ~この子たち?わたしが最近スカウトして雇ったお手伝いさんたち。ほら、二人も挨拶して」

 挨拶してって声出したら一発でバレるだろ!?でもここで変に怪しまれたら・・・・・・、

「こ、こんにちは。いつもレナ様がお世話になっております」

 と、持ち前の裏声を駆使しシスカの仕草をマネて恭しくお辞儀した。

「いつもご迷惑をおかけします。レナ様にはわたしからきつく言っておきますので」

 執事シスカもレナに対し若干トゲのある言い回しで挨拶をする。

「そ、そうか……。レナ、手伝いを雇うなら申請は早めに出しておけ」

 どうやらこんなのでバレていないらしい。さすがはレナのメイク技術だ。

「は~い。で、どうしたんです?三人揃って見回りなんかして」

「ああ、上からの報告でスクールに不審者が紛れ込んでいるとの情報が入ってな。その見回りをしている」

「へぇ、物騒な話ですね。それで、どんな人が入り込んだんですか?」

「確か、妙な服装の少年とメイドの少女……まさかこの二人のことじゃ?」

「何言ってるんですか!この子たちはずっとわたしの部屋にいましたよ!ねえ二人とも!」

 だから俺たちに振るんじゃねえよ!?

「は、はいそうですぅ。わたしたちぃ、ずっとレナ様の給仕をしていましたぁ」

 緊張のあまりぶりっ子みたいな口調になってしまった……。

「そ、そうか……。とにかく、今は危険だから部屋で待機するように」

「は~~い」

 と、波風立たずにこの場をやり過ごそうとした時、

「なんだ、シスカ帰っていたのか。……なんだその変な格好は」

 後から来た男が執事スタイルの彼女を見るなり話しかけた。

「ク……クラウド」

 シスカはクラウドという男を見るなりばつが悪そうな顔をした。

 確かクラウドって前にリディアが話していたシスカを雇った教師だっけ?

「シスカ……、そういえば送られた資料の女って。まさかお前等……!?」

 教師の一人が俺たちのことに感づくとシスカは間髪入れず細剣を取り出しその教師の首元に切っ先を向けた。

「っ!?」

「ここを通してください。我々はお嬢様を救うために来ただけです。邪魔するのであればここであなたたちを……」

「やめろシスカ、ことが大きくなるだけだ」

 制止したのは教師たちの後ろにいるクラウドだった。

「クラウド……いくらあなたの命令でも聞き入れられません。退いてください!」

「そうか、ならば……」

 彼は他の教師たちの前に立ち、懐からあるものを取り出す。それは先ほど警備員が持っていたものと同じ光線銃だった。

「俺はお前を殺さなければならない」

「クラウド!?」

「そこの連れはもう一人のお尋ねものか?」

「そうだと言ったら……?」

「タルーヴァに来て早々悪いが、お前も処分させてもらう。死ね」

「っ!?」

 何の躊躇もなかった。俺に銃口を向けられた刹那、俺の目の前を白い光がヒュンと走り脳天を貫いた。

 …………はっ?こんなあっさり?

 走馬燈なんて見る猶予もなく、俺の記憶はそこで終わった。

「ミコト……様……?ミコト様ああああああああああああああ!!??」

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