第十一話8
「ふう、何とかあの二人を逃がせたみたいだね。ありがとうジーナちゃん!きみのお陰で何とかうまくいったよ!」
僕、君塚沙雪はスクールという施設で敵を強襲した後、マリアさんから言われた場所に移動した。そこはスクールのあるエリアからも見える巨大な円錐の塔の近くにあるエリアだった。その円錐のビルは世界の超高層ビルなんて目じゃないくらい高く、てっぺんが雲の更に上にあって見えないくらいだ。
多分、この星の中枢部って感じかな。
「でも、こんなとこで飛んでたら余計怪しまれるんじゃ……」
ここまで飛んでいる間、広場で蹴散らした集団と同じ奴ら(多分こちらの警察なんだろう)が飛行するバイクに乗って追いかけられていたけど、あるところを過ぎると急にストップし目標を見失ったかのようにきょろきょろしていた。
なんであの人たち急に追いかけるのをやめたんだろう……。ジーナちゃんが何かしたわけじゃないし。
何はともあれ、僕は指定されたエリアに無事到着したのである。
そこは他の建物と変わらない白い壁の真四角な建物だった。隣には中庭があったのでそこに降り立ち、僕がジーナちゃんから降りるとジーナちゃんはみるみる小さくなり、鷹ぐらいのサイズになった。
「キミ、そんな能力あったんだね……」
まあいつまでもあんな巨体でいられたら僕はここですって言ってるようなものだから、マリアさんもそれなりに対策はしているみたいだ。
「もしかして、マリアさんのアジトなのかな?」
白い建物にはご丁寧に一カ所だけ扉が開いている。肩に乗るジーナちゃんも「きゅい」と鳴いて扉の方を示唆する。
中に入るとすぐに扉が閉まり、照明がついた。何やら倉庫のようで壁際には銃や剣などの武器がきれいに整理されている。奥にはさっき敵が乗っていたのと同じ飛行するバイクが数台置かれ、さらにはどうやって収納したのかわからない巨大な飛行機のような乗り物も格納されていた。
「誰もいないのかな?誰か~!誰かいませんか~?」
問いかけても誰も返してこない。本当に僕一人しかいないみたいだ。
「よいしょっと」
僕は近くにあったイスに腰掛け、ぼおっと天井に光る照明を眺めていた。
マリアさんに誘拐されてから数週間、ドラゴンのジーナちゃんとこの魔法ステッキを使いこなせるように練習していた。
『この星の救世主になってください』
あの日、マリアさんにそう言われて最初は浮かれちゃってたけど、冷静に考えてみればどうして地球が危ないの聞かされてないし、具体的に何をすればいいかわからない。それにあのドラゴンに追いかけられたみたいにまた危険な目に遭うかもしれない。でも……、
「ホントに魔法少女になれたからいっか」
ただのコスプレではなく僕が望んだ通りの魔法使いにしてくれたので余計なことは考えるのはよそう。それに僕がマリアさんのお城にいる間色々フォローしてくれたしね。でもまさか最初のミッション、地球から二人転送するから護衛することって言われたけどまさかそのうちの一人がクラスメイトの進藤くんだなんて……。
「一体何がどうなってるんだろう」
そもそも地球ではない星(確かタルーヴァって言ってたっけ?)に飛ばされてる時点で全てがおかしいのだけれど、そこに何で進藤くんがいるんだろう。
「もしかして、進藤くんってホントは地球に潜伏していた宇宙人!?……って神社の子だからそれはないか」
それに進藤くんと一緒にいた人、確か夏休み入ってから街でよく見かけるようになった噂のメイドさんだったような。
「ますます頭がこんがらがってきた……。本当になんとかなるのかなぁ」
「くうぅぅん」
そんな僕を気遣ってか、ジーナちゃんがすりすりと頬ずりをする。
「そうだね、とにかく今はマリアさんから言われたミッションをこなさないとね!……えっと確か次のミッションは?」
と、マリアさんから手渡されたミッションの書かれた紙を取り出す。
そこにはミカドと言われる組織の本部に潜入すること。ここからは三人で行動することになる……ってさっき進藤くんたちと別れたばっかだし、他に誰と?
「おっ、やっと来たみたいだぞ。ってお前!?」
「え、どうしたの?」
と、倉庫の奥から誰かの声が聞こえる。顔を上げるとそこには……、
「嘘でしょぉ……」




