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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十一話
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第十一話4

 俺に限らずほとんどの地球人にとってUFOの中というのは白い壁一面に色んなスイッチやランプがあり、コックピットには両サイドにテンキーが配置されパソコンのように何か入力して動くみたいな、簡単に言えばロボットアニメのようなイメージだった。

 だが、そんなイメージをひっくり返すように中はすごくシンプルだった。まるでプラネタリウムにいるようなドーム型の空間、床は黒くまるで宇宙空間に浮いているみたいだ。

「この光景、珍しいですか?」

 傍らでシスカが問いかける。辺りを見回すと他に誰もいない。

「えっ?あ、ああ……。ちょっとビックリしてる。ホントに宇宙の中にいるのかすら実感ないくらい」

「そういうものですか」

「てっきりスペースシャトルみたいに色んな機器が壁一面に並んでるんかと思った。なんだろうな、この一ヶ月お前ら宇宙人と一緒にいたのに身近にSFを感じたことなかったからすごい新鮮……」

「フフ、ミコト様にはそう見えるんですね。わたしたちは見慣れているから全然不思議には感じません。脳で考えてることを船が認識して飛んでいるので実質わたしたちはそんなに操作することないんです」

「すっげ、さすがタルーヴァのテクノロジー……」

「でもお嬢様はいつもふわふわしてて何度違う星に到達したか……」

「アイツらしいな、そういえば最初に会った時違う星に寄ったとか言ってたっけ」

 初めて会った時、リディアの体は手のひらサイズだった。途中寄った星のままで来たとか、もし俺と会わなかったらずっとそのままで地球を探索していたのだろうか……。

「ええ、わたしはずっと陰から見守ってましたがもう心配で心配で……」

「だよな、お前がいて正解だったかもな」

 そう言うと、シスカは少し微笑んで「はい」と頷いた。

「まったく迷惑なお嬢様だな。こんなやばい状況だってのに一人で何とかしようだなんて。こりゃ会ったらアイツのおでこにデコピンしなきゃな」

「そうですね、わたしからもお嬢様にきつく説教しないと!」

「おっ!じゃあどっちが早くアイツにデコピンするか勝負しようぜ!」

「受けて立ちましょう!わたしもあらゆる方法で迅速にお嬢様を見つけますよ!」

 と、俺とシスカは互いにグータッチを交わす。

「どうだ、やる気出たか?」

「はい、恥ずかしいところ見せてしまいました」

 シスカは徐々にいつもの表情へと戻していった。いつもクールなコイツがあんなに泣き崩れるなんて、俺は見てられなかった。俺に出来ることはこれぐらいしかないけど、何もしないなんてできるはずがない。

「まだ道が絶たれていないなら、ここで泣いてる場合じゃないですよね。ありがとうございますミコト様」

「俺は何もしてないよ。ただたわいもないこと話してただけ」

「フフ、そうしておきます」

 そして俺たちは無限に広がるこの宇宙を見つめながらそのたわいもない話を続けた。


「…………」

 ミコトさんと別れてからたった一日だというのに時間が長く感じる。

 タルーヴァに着いて地球での思い出のデータを提出した後、わたしはそのままとある部屋へと案内された。窓もない真っ白な壁の正方形の間取りにベッドとテーブルが置かれただけの無機質な部屋。部屋を出ることは出来るけど女性のスタッフが付き添いで付いてくる。まるで収監された犯罪者みたい……。

 スクールを出る前、課題を提出すればいつも通りのスクールの生活に戻ると説明されてたのに話が全然違う。

「もう始まってるんですね、マリアさんの言ってたことが……」

 ベッドに横たわりぼおっとしながらこの白い部屋の天井を眺める。

 こんな展開になることなどわかっていたはずなのに、覚悟は決めていたはずなのに、現実を突きつけられて恐怖が一気にこみ上げてくる。

「やっぱり怖いです……。ミコトさん、助けて……」

 視界が段々と涙で滲んでくる。そういえば一人でこうして泣いたのって地球に来てちょっと経った頃かな。一人でやらなくちゃいけないプレッシャーに潰されそうになって泣いちゃってたっけ。

 でもそれから一人孤独に泣くことはなくなった。ミコトさんたちと出会ったから毎日が楽しく感じた。ミコトさんたちがわたしに沢山の思い出を作ってくれた。

 皆さんがいてくれたから、わたしは頑張れた。

「いつまでも、泣いてばかりじゃダメですね」

 わたしは両手で涙を拭い、ベッドから立ち上がる。

 わたしだって何も出来ないわけじゃない。これまでミコトさんたちの助けがあって乗り越えてきた。今度はわたし自身の力で乗り越えてみせる!ここで死んでたまるもんですかっ!

「わたし、頑張ります!最後の大仕事、絶対負けませんから!!」

 審査の日は2日後。わたし、頑張りますから!見ててください、ミコトさん!!

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