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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十一話
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第十一話3

「お前……、タルーヴァに行ったんじゃ!?」

「お嬢様には悪いけどこっそり盗んできちゃいましたわ。この子は大事なアタシの駒ですの」

 と、マリアは無邪気にシスカのとこまで走りぎゅっと抱きしめる。シスカは相変わらず浮かない顔をしていた。

「シスカ、昨日スギと何があった」

 シスカは微かにピクッと反応する。すると何か思い出したかのように口を押さえ、泣き崩れてしまった。

「お、おいっ!?」

「フリードから聞いた話によると、シスカの恋人、スギとか言いましたっけ?我々が到着した頃にはもうミカドの連中によって記憶消去されてましたの。彼を護りきれなかったってこの子、憔悴しきっちゃって」

 それで全て合点がいった。きっと由衣もヤツらに襲われたんだろう。

「……そうか」

 俺はそっとシスカに歩み寄り、彼女をぎゅっと抱きしめた。

「お前はよく頑張った。アイツを元気に今日学校に通わせることができたんだ、こんなとこでメソメソしてんじゃねえよ。……まだ可能性はある。泣くのはアイツの記憶が戻ってからにしとこうぜ」

 そんな方法俺が知るわけがない。けれど一縷の望みがあるならばマリアに賭けるしかない。

「マリア、さっきは取り乱してごめん。どうか、俺たちをタルーヴァに連れてってくれ。アイツを、そしてみんなのこの夏休みの思い出を取り戻させてくれ」

 俺はゆっくりと膝をつき、マリアに土下座した。この際恥など言ってられない。頼みの綱は彼女しかいないのだから。

「……それがどういう意味なのかいまいちわからないのだけど、あなたをタルーヴァに連れて行くのは初めから決めていたことですわ。でもいいんですの?最悪ここに戻ってこれる保障はありませんわよ?」

「へえ、お前がそんな心配してくれるなんてな。お前にお願いした時点で腹は括っているよ」

「そう、それなら問題ありませんわね」

 と、気のせいか彼女の声のトーンが低く感じた。

「さっ、船の準備は出来ていますわ。今後の説明は中でさせてもらいます。あ、ついでにその子をちゃんと介抱してくださる?」

 マリアは少し落ち着いたシスカに視線を送る。

「ああ、でもその前に一つ訊かせてくれ。シスカを殺すためにこの星に来たって話、あれ嘘だろ」

 その問いに彼女はニヤリと笑って俺を睨んだ。

「ふ~ん、聞かせてもらおうかしら?」

 その不敵な笑みに俺は一瞬たじろいだが何とか持ちこたえ、話を続けた。

「最初は暗殺組織を名乗る割にはやけに派手にやっているなとは思ったが、それはアズールなりの流儀だろうと特に考えなかった。でもあの祭が過ぎてから俺たちにやたらと接触し、挙げ句の果てにシスカを駒にするとまで言った。はなからコイツを葬るつもりはなく、引き戻すのが狙いだったんじゃないか?」

 俺は心の中でずっとモヤモヤしていたことを彼女に訊いた。

「まぁおおまかに言えば正解ですわね。あなたたちが邪魔したお陰でこの子の利用価値が見出されただけですわ」

「それと、お前は何故ここまで細かくあの課題のことを嗅ぎ回ってた?何故ミカドにそんな恨みを持つ?お前は一体、何者なんだ?」

 俺は矢継ぎ早に彼女に問いただした。コイツがただの暗殺組織のリーダーではないのはわかっていた。一人一つしか持つことの出来ない超能力を彼女は数え切れないほど持ち、昨日あれほど大けがをしていたにも関わらず今日こうして何事もなかったかのようにピンピンしている。この地球に来てまでミカドを潰そうと企むこのマリアという存在は、一体何なのだろうか……。

「クッフッフッフッフッフ……、アーッハッハッハッハッハ!!」

 そしてマリアはそんな俺を嘲笑うかのように大きな笑い声を上げた。

「幼稚!実に幼稚ですわ進藤ミコトっ!このアタシのことを暴いてくれるのかと期待してたのにそれすらも満たないなんて、実に醜いですわっ!!」

 俺の脳内ではコイツは一体何を言っているのだろうと理解が出来なかった。

「それに坊やのその質問には答えられませんわ。あなた言ったでしょ?一つ訊かせてくれって。だから子の話はこれでおしまいですわ」

 それ以上俺は何も言葉が出なかった。自分自身で墓穴を掘っただけに苦虫を噛む思いだ。

「安心してくださいミコト様、わたしもマリアが何者かなんてわかりません。ヤツはただミコト様をからかってるだけですから」

 いつもの冷静なシスカが俺に耳打ちする。俺もいつものことだと割り切って何とか冷静さを取り戻そうとする。

「ヤツもアズールのメンバーにすら趣旨を話そうとしないから混乱が起きるのです。少しはちゃんと伝える努力を……」

「何か言いました?」

 小声で話してる筈なのに地獄耳のようにマリアが反応する。

「いえ、それより参りましょう。時間がないのでしょう?」

「そうですわね、坊やの戯れ言で忘れてしまいましたわ。さ、行きましょ」

 と言ったものの、周りにはUFOらしきものは見当たらない。そもそもこんなとこでUFOなんて呼ばれたら色々問題が起きてしまうか……。

「何キョロキョロしてますの。さっさと付いてきなさい」

 彼女に促されて後を付いていくと、突然マリアは姿を消した。

「はっ!?アイツどこ行った!?」

「何やってますの。いいからこっち来なさい」

 と、さっき消えたところからマリアの顔だけにゅうっと出てきた。

「ひいっ!?生首っ!?」

「バカなこと言ってないでほら早く」

 さらににゅうっと出てきた手で俺の腕を掴み、俺はそのまま謎の入り口へと引き込まれてしまった。

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