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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十一話
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第十一話2

 俺は学校を出た後、何かリディアの手がかりが残ってないかと探し回っていたが当然見つかることはなく、駅のペデストリアンデッキのベンチで途方に暮れていた。

「…………」

 どういうことだ、どうして由衣もスギもリディアたちのことを覚えていない?それにあの携帯の写真、まるでリディアたちの記憶だけ切り取られたような感じだった。

 こんな不自然なことができるのは……、

「これも、タルーヴァの力ってやつか……」

 でも何故俺の記憶はそのままなのだろうか。一番彼女らと関わっていた俺が影響出やすいのではないだろうか?

 何度考えを巡らせても答えは出ることはない。出たところでそこから先に進むことができないのだから……。

「くそっ」

 苛立ってついベンチに拳をぶつける。そんなことしたって無駄だとわかっているのに何かに八つ当たりしたくなる。そして、ただ虚しくなる……。

「このまま忘れろっていうのかよ!そんなこと、できるわけないだろっ!?リディア、リディア、リディア、リディア、リディア~~~~~~~!!!!」

「まあ、随分大胆なお芝居ですわね?」

 っ!?

 俺の脳内は完全にフリーズした。だってそこにいるのは……、

「マリア、お前……あの時死んだんじゃ……!?」

「人を勝手に殺さないでくださる?アタシはご覧の通り生きてますわ」

 と、くるくると回りながらご自慢の黒いフリルのスカートを翻す。

「なあ頼む!俺をタルーヴァまで連れてってくれ!お前なら容易いだろっ!?なあっ!?」

 俺は逸る気持ちを抑えきれず立ち上がり、彼女の両肩を掴み訴えた。

「俺、アイツにまだホントの気持ち伝えてねぇんだ……。あんな形で別れるなんて思いもしなかった。だから頼む、俺をアイツのところに連れてってくれ!」

 それでも、マリアは何も答えてはくれない。

「頼む!この通りだっ!!」

「五月蠅いな」

「っ!?」

 彼女が俺の左腕を掴むと俺の体はふわっと宙に浮き、そして……、

 ドンッ!!

 俺の体はあっという間に床に叩きつけられたのだ。2秒間、何が起こったのかさっぱりわからなかった。いつの間にか俺の視界には澄み渡る青空が広がっていた。

「かはっ!?」

 床に叩きつけられた衝撃で呼吸ができないほどの痛みが全身に走る。マリアはそのまま俺の腹の辺りに座り不敵な笑みを浮かべた。

「誰に向かってそんな口きいてるんですの?まだ自分の立場を理解していないのですね?」

 彼女はそのまま俺の首を掴み、ギリギリと絞めていく。

「あ……がっ……!?」

「フフ、ホントあなたは成長しませんわね?そんなだからあの娘に逃げられてしまうのですよ?」

 俺は彼女の細い腕を振りほどき、何とか呼吸を確保することができた。コイツ、わざと手を抜いていたな……。

「お、大きなお世話だ……。まさか、俺を茶化すためにここに来た訳じゃないだろ?」

「半分正解ですわ。あなたが慌てふためいてアタシに懇願する姿、滑稽以外の何物でもないですもの」

 相変わらずマリアは嫌みったらしく言う。だが実際俺は彼女が目の前に現れた瞬間、藁をもすがるように泣きついてしまった。言い訳する余地もない……。

「ここでは人が多いですわ。場所を移しましょう?」

 そう言ってマリアは手のひらを俺の目に近づけ目隠しをする。「着きましたわ」と目隠しを外されるとさっきまでいた駅前からとある山の花畑に転移していた。

「はは……、さすがにもう驚かねえわ……」

 そこは高崎の街と山々を見渡せる裏山の花畑だった。敷地はそこそこ広く、季節によって花を植え替えていて、九月に入ってはいるがまだひまわりが残っていた。

「この星の人間は面白いですわね。植物を使ってこんなきれいに見せられるなんて、つくづくこの惑星に興味が持ちますわ」

「なんだ、また俺とデートしたくなって連れてきたのかよ。悪いが、俺にはそんな……」

「もう、こんなきれいな景色を見ようとしているのにそうピリピリしないでくださる?せっかくアタシがチャンスを与えてあげようと思ってましたのに、いらないのならここで……」

「わかった!わかったから。それで、俺をここに連れてきた理由って何なんだよ」

「その前にあなたに会わせたい人がいますの」

「会わせたい人……?」

 マリアはすっと人差し指を俺の方に向けた。いや、厳密には俺の後ろを指さした。振り返るとそこには見慣れたメイド服を着たシスカが立っていた。

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