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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十話
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第十話6

「……はぁ、はぁ、まさか本当に連続でジェットコースターに行くなんて。シスカちゃん、ここでドSっぷり発揮しなくても……」

 うちらはランチの後、予告通りジェットコースターを三回連続で乗った。さすがのうちも三回目になれば、と思ったが全く慣れずふらふらになりながら歩いていた。

「フフ、スギもまだまだですね。まあ、ちょっとやりすぎでしたか」

「まったく、とんでもないメイドさんだ。でも、何となくシスカちゃんの見てる風景がわかった気がするよ」

「そう言っていただけると嬉しいです。スギ、あれは大丈夫ですか?」

 と、シスカちゃんが指さしたのはこの遊園地で一番大きいもの、観覧車だった。

「シスカちゃんわかってるじゃない。あれは遊園地デートで鉄板のやつだよ。二人きりの密室で広大な関東平野と沈みゆく夕陽を見ながら熱いキスとそれから……いやいやそこから先はうちに言わさないでって」

「なるほど、あれは遊園地デートの鉄板スポットでしたか。では、あなたがどれぐらいエスコートしてくれるか。フフ、楽しみですね」

 シスカちゃんはそう言ってうちを試すように笑う。うちもこれ以上シスカちゃんに舐められたらいけない。ここで決めなきゃ、うちが廃る!

 だが、そんな思いも空しく、事態はあらぬ方向に進んでいった。

 それはうちらが乗るゴンドラが頂上に上がるあたりで起こった。

「不思議なものですね。以前はこの時間でも明るかったのにいつの間にかこんなに日が沈むのが早くなるなんて」

「それだけ秋が近づいている証拠だよ。はぁ~、もうすぐタイムリミットか。あと少しでシスカちゃんとも……」

「何弱気になっているんですか。最後までエスコートしてくれないと、ここで帰っちゃいますよ?」

「ごめんごめん、うちは最後の最後まで君のことを見つめたいんだ。ずっとそばにいてくれよ。願わくば、これからもずっと……」

「わたしも、叶うならずっとあなたのそばにいたいです。時間なんて止まってしまえばいいのにって……」

 シスカちゃんはうちの肩に寄りかかり、遠くの空を眺めていた。彼女の微かな香りにやられ、うちはそっと彼女の肩に手をかけて抱き寄せた。

「スギ……」

「君を忘れないようにしたいんだ。だから、少しだけこうさせてくれない?」

「…………はい」

 そうしてシスカちゃんはうちに身を委ねてくれた。離ればなれになっても忘れないために、温もりも香りも柔らかな肌も彼女の全てを記憶していった。

 だが、その時間も長くは続かなかった。

 ゴンドラが頂上に差し掛かったところで突然ガクンと停止し、反動でうちらはよろめいてしまった。

「何事でしょう?」

「ちょっとしたトラブルじゃないかな。少しすればきっと動くかもしれ……っ!?」

 うちは外を見た瞬間息を飲んだ。白いコートを着た数人の男たちが両隣のゴンドラの上でうちらを取り囲んでいた。こんなこと地球人が出来るはずがない。コイツらは……、

「タルーヴァから来た刺客……」

 シスカちゃんはすぐに体勢を立て直し細剣を取り出した。どうして奴らはうちらを狙いに……?

「まさかわたしたちまで潰しに来るとは。スギ、残念ながらこの後のお楽しみは当分お預けみたいです」

「ちょ、ちょっと待ってシスカちゃん!?もしかしてこの後OKだってこと!?」

 この状況で素っ頓狂なことを言われたシスカちゃんは目を丸くするものの、すぐにクスっと笑う。

「ええ、その通りです。ここを乗り切れたらいっぱいご奉仕してあげますよ」

「そっか、だったら負けられないね。とりあえずコイツらはうちらの敵ってことでいいんだよね?」

 シスカちゃんはその最終確認に静かに頷く。何故うちらを狙ってきたかは後で聞くとして、今はこのデートを潰された報いを受けてもらうとしよう。

「いいですか、奴らが仕掛けてきたらすぐにこの扉を蹴飛ばして飛び降ります。わたしの手を離さないでくださいね?」

「わかった!…………えっ?」

「来ますっ!」

「ちょちょちょうわああああああああああああ!!?」

 間髪入れずに刺客たちが飛び移るのと同時に、シスカちゃんはうちの手を掴んで扉を蹴り破り、躊躇なく飛び降りた。

 観覧車のゴンドラから飛び降りるとシスカちゃんは黒い羽を広げ、一気に上昇する。それはまるでさっきまで乗っていたジェットコースターのようだった。

「シ、シスカちゃん!どこまで行く気!?」

「とりあえず人気のないところに移動します!逃げたところで奴らはどこまでも追ってきますので!」

 こんなところまで追ってきたのだから逃げたところで無駄なのは納得がいく。まずは誰にも迷惑がかからない場所に行くのが先決だ。

「奴らがここに来たってことは……」

「あの二人も危ないかもね。早く合流しよう!」

「はいっ!」

 その時、シスカちゃんの左腕にヒュンと光の線が掠めていった。

「うぐっ!?」

「シスカちゃん!?」

 真っ白な服に彼女の赤い血が滲む。さっきの光はもしかしてビーム光線か!?

 するとシスカちゃんはバランスを崩し、うちらは田んぼが広がる農道へと不時着した。

「ぐはっ!?」

 地面に着く直前、うちは咄嗟に彼女を抱き衝撃を和らげた。彼女を傷付けなんてさせないために。

「た、大丈夫ですか……!?」

「ははっ、それはこっちの台詞だよ……。いいからそこで休んでて。それとちょっとその剣借りるから」

 うちはシスカちゃんの細剣を手に取り、軽く素振りする。何の金属でできてるか知らないけど竹刀より軽くそして丈夫だ。

 すると空から一人、また一人とコートを着た男たちが目の前に降り立つ。

「ねえ、さっきシスカちゃん撃ったのどいつ?正直に手を挙げればソイツだけぶちのめしてあげるから」

「ス……ギ……?」

 細剣を握りしめた瞬間、スギから今までとは違うオーラを感じた。

 彼らからの返事はない。代わりに示したのは真っ白い拳銃の銃口であった。

「そっか、なら仕方ないね。お前等……、一人残らず皆殺しにしてやるよおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

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