第十話3
うちらはうちらでその後、伊勢崎市にある華蔵寺公園遊園地へと行くことにした。何故高崎ではなく隣町まで向かったかというと単純に高崎に遊園地がないからである。昔は観音山の麓に『カッパピア』という遊園地があったけれど今は廃墟になっている。
大阪にいた頃まではよくテーマパークに行っていたけど、群馬に戻ってから遊園地には行っていなかったので少し新鮮に感じる。
「おお~~!あのマンガに出てくる遊園地そのまんまですねっ!!」
シスカちゃんはバスから降りるなり目をキラキラさせながら遊園地を眺めていた。
「うちも小さい頃に来た以来だから久しぶりだなぁ。何も変わってないね」
「スギも子どもの頃こちらに来たことがあるのですか?」
「まあ地元の子どもは大体ここに来てるよ。親にここが夢の国だって唆されてたし……」
全てではないがここが千葉にある夢の国だと親に言われて信じてた子どもも多いだろう……。
「ところでスギ、あの目の前にあるやたらと速い乗り物はどう楽しむのですか?」
と、シスカちゃんが指さしたのは遊園地の定番ジェットコースターだ。丁度最初の坂を急降下したところでお客さんの「きゃ~~~~!」という絶叫が轟いていた。
「ど、どう楽しむって……、マンガでも出てこなかった?高速で急降下して絶叫するシーン。うちも最初は怖かったなぁ」
「ああ、あれはそういうのを体験する乗り物だったんですね。あれぐらいの高速移動、いつもやっていることなので」
そうだった。この前の夏祭りでのマリアとの戦闘、考えてみればジェットコースターと同じようなことやってるんだよね……。
「でも折角ですので乗ってみましょうか。今日は存分に楽しむって決めたんですから」
シスカちゃんの普段見せない笑みに気持ちが高まる。それと同時にうちは肝心なことを思い出し、一瞬足が止まった。
「どうしましたスギ?」
「あ、いや何でもない。行こうか!」
さらっと連れ出してみたものの、実はうち高所恐怖症なのである。夏祭りの時にみこっちゃんがアクロバティックにマリアと戦ってた話を聞いて内心肝を冷やしていた。
ちょうど席は先頭、見晴らしはバッチシだった。下がってくる安全バー、発車ベルが鳴るとすぐにカタカタカタ……とゆっくりてっぺんまで上昇していった。
「何だかよくわかりませんが気持ちが高揚しますね!さっきから一言も喋らないですが調子でも悪いのですか?」
「い……いや、今日もいい天気だな~~って思ってさ。べ、別に怖いとかじゃないから……決して怖くなんかない~~~~~~やぁ~~~~~~~~~~~~!?」
喋ってる途中で頂上に到達しそこから一気にジェットコースターが急降下して駆け抜ける!右へ急カーブしたと思えばすぐ左へ、そしてあっという間に駆け上がりそのまままた急降下!地方の遊園地だからって舐めてた……。全然ダメなやつだった~~~!?
「う~~ん、わたしの方がもっと速いですね。これぐらい何てことないです」
と、絶叫してるうちの横でシスカちゃんは顎に手を当てて考えるぐらい余裕な表情を浮かべていた。
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「すみませんスギ。まさか高いところが苦手だなんて露知らず……」
ジェットコースターから降りるとうちは近くのベンチでぐったりとしていた。シスカちゃんはそんなうちに冷たい飲み物を渡してくれた。
「大丈夫だよ……。うちも強がって言わなかったのがいけないし」
「でも、わたしが行こうと言わなければ……」
「シスカちゃん、今日は夏休み最終日だよ。君の願い事一つ叶えられなくてどうする。うちは君の彼氏なんだから」
「スギ……では」
と、うちの横に座ると肩をぐいっと引っ張り、顔を膝に乗せた。これって、膝枕!?
「しししししシスカちゃん!?」
「動かないで下さい。これがわたしのお返しです」
彼女の柔らかい膝につい胸がドキドキする。いつもは冷静を装っているけどこんなのされたら冷静でなんていられないよ!?
そんなうちに彼女は優しく頭を撫でてくれた。
「こんなわたしを親切にしてくれてありがとうございます。わたしは今、あなたといることが一番幸せなんです」
「シスカちゃん……」
「だから今はただこうさせてください」
彼女の願いに、うちはただゆっくり頷いた。うちも今、君の温かさを感じて幸せだよ。
アパレル店のグイグイ店員さんにたじたじになった俺たちは気持ちを切り替え一つ上の階にある大型の雑貨フロアに向かった。
「ここはまた違う感じのお店ですね。これは一体……」
と、所謂脳トレコーナーでリディアが手に取ったのは二つのハートが絡まった知恵の輪だった。
「ああ、それは頭を使ってその輪っかを外すゲームだよ。ほら、これをこうして……あれ?」
試しに蹄鉄の形をした知恵の輪で試してみたものの中々外れない……。こういうのって外れないとすごい焦るんだよな……。
「頭を使って……、ふんっ!!」
それは一瞬の出来事だった。リディアが知恵の輪に向かって頭突きをすると、パンッと破裂するように粉々になってしまった!?
「…………」
「…………あの、外れました」
リディアの手にはギリギリ残った金属の欠片が残っていた。そして俺はそっと彼女の手を握り、
「それはやりすぎ」
「わたしも違うと思いました」
結局リディアの宇宙技術によって粉々になった知恵の輪は元に戻った。
「もう!ミコトさんが頭を使えって言うから!」
「だからって物理的にするやつがあるか!んまぁ俺もたまにムキになって物理的に外したくなるけど」
正直そういうのは皆誰しもあるだろう。そんなこと絶対出来なくて余計ムキになるっていう。
「あの、ミコトさん。あそこにある透明なドーム何ですか?」
リディアが突然立ち止まり、あるものを指さした。そこにあるのはこの時季にしては珍しいスノードームだった。中にはペンションの横で雪遊びをしている男女の姿があった。
「ああ、それはスノードームって言ってな。こうやって少し振ると雪の中みたいになるんだよ」
と、下に積もった白い粒を撹拌させると、舞い散る雪のような銀世界となった。
「ふぁ~~すごい!キラキラしてきれいです!この雪って何ですか?」
「雪っていうのは、もっと寒くなると空から降ってくる氷みたいなものなんだ。積もり出すとこのスノードームみたいに辺り一面真っ白になるんだ」
「これが実際に起きるなんて……。やっぱりこの期間だけじゃ見れない景色がいっぱいなんですね」
と、リディアは少し寂しそうな顔を見せた。
「見れるさ、俺たちが頑張ればきっとこの先も見れるに決まってる」
「ミコトさん……」
「そんな寂しそうな顔すんなって。約束を忘れないためにもこれ、お土産に持ってけよ」
「……わたし、皆さんとこの景色一緒に見ます!こんなとこでくよくよしてる場合じゃないですね!」
「そうだその意気だ!んじゃあ俺、これ買ってくるからそこで待っててくれ!」
俺はスノードームの入った箱を一つ手に取り、レジへと向かっていった。
「わたしも、頑張らないと……」
「ふ~ん、随分面白いプレゼントですわね」
突然リディアの背後から何者かが声をかけてきた。
「マ、マリアさんっ!?」




