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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第八話
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第八話1

 長野県、軽井沢町。言わずと知れた日本有数の避暑地である。駅前にはアウトレット、少し離れれば別荘地やホテルがあり、高速道路や新幹線など東京からのアクセスもよく、この時季になれば避暑を求めて多くの観光客が訪れる。小さい頃夏休みになればいつも親父の友達の別荘に行って虫取りをしたもんだ。

 とまあこんな説明はさておき、あれから二日後、俺は一人その軽井沢駅のコンコースである人物と待ち合わせをしている。それは……、

「フフ。アタシより先に来たこと、褒めてあげますわ」

 俺は何故かここ軽井沢で幼女姿のマリアとデートをすることになったのである。


 話はあの日に遡る。あのまま昏睡状態のリディアを連れて帰ったら親父たちに心配されるので、急に用事が出来たと理由を付けて由衣の家に預けることにした。幸い舞姫ちゃんはあの出来事は夢だと思っているらしく、目が覚めてパニックに陥ることはなかった。叔父さんたちもちょっと疲れたのだろうということで納得してくれた。

 そして翌日、俺と親父は叔父さんたちを駅まで見送っていた。

「ありがとねミコトくん。ずっと舞姫に付き合っててくれて」

「いえ、俺も夏休みやることなかったので楽しかったですよ」

「それにしてもシスカちゃんってホントすごいのね!叔父さんとも引けを取らないぐらい料理上手なんですもん!ねぇ、今度うちでメイドしてくれない?ついでにモデルもしてほしいんだけど」

 と、深雪さんは目をキラキラしながらシスカにすり寄ってくる。

「あ、いえ……。わたしにはお嬢様がいますので」

「こらっ、シスカさんに迷惑かけるんじゃない。そういえばリディアちゃんは普段どんなことしてるんだい?急に由衣ちゃんのとこに泊まるほどの用って……?」

「あ……ああ、俺もあんまりわかってなくて、女の子だけの用事じゃないんですかね?」

 叔父さんたちには適当な理由しか説明していないから対応に困る……。とりあえず女の子の理由って言っておけば何とかなるか。

「そっか、リディアちゃんには舞姫にずっと付きっきりで遊んでくれたからお礼言いたかったんだけどね……」

「アイツには俺から伝えておきますよ。急なことでごめんなさいって言ってましたし」

 すると、ずっと名残惜しそうに俺を見つめてた舞姫ちゃんがぎゅっと抱きしめてきた。

「ど、どうしたの舞姫ちゃん?」

「舞姫、もっと大人になる。大人になってリディアお姉ちゃんみたいなステキな女の子になる!だから、お姉ちゃんに負けないからって伝えて!」

 と、急に真剣な目で俺に訴えかけた。まだまだ幼く見えていた彼女がその時だけ大人に成長したように見えた。

「うん、わかった。リディアにはちゃんと伝えておくよ。俺も舞姫ちゃんが立派な大人になるのを楽しみにしてるから」

 と、俺はそっと舞姫ちゃんの頭を撫でる。この子も知らぬ間にこんなに成長していたんだなって。

 そして叔父さんたちは東京へと戻っていった。最後にあんなことがあったばかりに少し後味の悪いお盆休みであった。

「なあ親父、俺昨日また母さんの夢見たんだ」

「おっ?母さんなんて言ってた?」

「大きくなったねって。俺嬉しくなってつい甘えて抱きついちゃった」

「お前が小さい頃に亡くなっちまったからな。母さん久々に見てビックリしたんじゃないか?」

「うん、驚いてた。それと親父と二人で頑張ってきたよって伝えておいたよ」

「そうか、母さんきっと安心してるだろうな。お前の成長した姿を見れずに先に行っちまったんだから」

 その言葉に少し心が痛む。その原因がリディアたちの星の探査体だったのだから。

「……あの、さ」

「ん?」

「あ、いや何でもない。俺たちちょっとこの後用事あるから親父先帰ってて」

「あ、ああ。暗くなる前に帰って来いよ!」

「子どもじゃねえんだからやめろそれ!」


 それからすぐ、俺たちは由衣の家で合流しリディアを治す薬の代替を探すことにした。渋い味というかなり曖昧な情報だけど動かなければ何も解決しない。

 とりあえず浮かんだのは市販されている風邪薬。比較的優しい薬を選び用法容量守って飲み込ませてみたが何の変化もなく、彼女は眠ったままだった。

「そんな簡単にはいきませんね……。皆さん、時間があまりありませんがよろしくお願いします」

「わたしはリディアちゃんを見てるわ。何かあったらすぐ連絡するから」

「わかった。じゃあリディアを頼むよ」

 そうして俺たちはそれぞれ薬を探すことにした。だが、コーラもスポーツドリンクも紅茶も、他の風邪薬も由衣の母親が飲んでるサプリも何の効果も出なかった。

 そして結局何の手がかりも掴めないままあっという間に夕方になり、打ち切りとなったのである。

「これだけ探してもダメだなんて。もしかしたらこの星には……」

「見つけてやる。最後の最後まで絶対諦めてたまるか」

 そう啖呵を切ったものの、一日中探しても手がかりが全く得られないこの状況でどうすればいいだろう。それでも俺はもう少しだけ、と一人焦りを滲ませていた。

「ミコト様……」

「みこっちゃんもそれなりに責任感じてるんだよ。うちらもうちらでやれることやっていこう」

「……そうですね。ミコト様ー!夕飯までには帰ってきてくださいねー!」

「だーかーらー!そういうのやめろっつってんだよっ!!」

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