第七話8
「……コト、ミコト!ねえ起きてミコト!!」
誰かが俺を呼んでいる。意識がまだハッキリしてなくて腕すらろくに動かない。起きるからそんな揺らすなって……。
「……由衣?」
うっすらと目を開けるとそこには由衣とスギ、そしてシスカが俺を取り囲むように見つめていた。
「ミコトっ!!よかった……、もうどんだけ心配させるのよっ!?」
由衣は俺の胸に飛び込み、堪えきれず泣きじゃくった。
「わりい、ヘマしちゃった……」
「そうよっ!アンタが死んじゃったらわたし……、わたしっ!!」
「ごめん。ホントにごめんて」
俺は涙で顔がくしゃくしゃになった由衣の頭を優しく撫でる。またコイツを泣かせてしまったことに罪悪感が滲む。
「それにしても、どうして俺助かったんだ?あの探査体は?」
「マリアがあなたを引っ張り出してくれたんです。そしてそのまま探査体を破壊し残骸を持って姿を消しました」
つまり自分の用事を済ませてとっとと帰ったってことか。実にマリアらしい。
「……ところで、リディアと舞姫ちゃんは?」
「舞姫様はあの時のショックで気を失っているだけなのでもうじき目覚めるでしょう。ただ、お嬢様は……」
「リディアが、どうかしたのか……?」
ふと気付くと皆それぞれに表情に翳りが見える。
俺はすぐさま上体を起こし辺りを見渡すと東屋の下で仰向けに眠っているリディアがいた。
「これって……」
「ミコトを助けるために、全エネルギーを注いだのよ。あの化け物から引っ張り出した時、アンタはほぼ瀕死に近い状態だったの。だからリディアちゃん、責任感じちゃって自分のエネルギーを……」
なんだよそれ……、この件が終わったらリディアにちゃんと話そうと思ってたのに、お前が死んだら母さんに何て言えばいいんだよ……。
俺はよろめきながらリディアがいる東屋まで行き、彼女の頬をそっと撫でた。肌はまだ温かく、微かに呼吸を感じる。まるで、ただ寝ているよう。
「本当に、目覚めないのか?」
「はい、このまま何もせずにいればもってあと三日かと。あの時ミコト様が躊躇わずに引き金を引いていればお嬢様は……」
「っ!!」
俺は淡々と喋るシスカの胸ぐらを突発的に掴んだ。
「みこっちゃん!!」
「お前アイツのメイドだろっ!アイツが死にそうになってんのになんでそんなに冷静でいられるんだよ!!お前どうにかできなかったのかよ!?」
「やれるならとっくにやってました!ですがわたしより先にお嬢様がキスをしてしまったんですっ!!こうなってしまっては、わたしも何も出来ません……」
シスカはこみ上げる怒りにわなわなと震えている。そうだ、コイツが愛するリディアを心配しないわけがない。みんなリディアを助けたい気持ちは同じなんだ。
「……わりい、言い過ぎた」
「いえ、あなたの気持ちもわかります。ただ、完全に道が絶たれたわけではありません。まだ救える方法は残っています」
「本当かっ!?」
「わたしたちは著しくエネルギーを消費するとあのようにスリープを起こすんです。少しでも長く生命が維持できるように。そしてその間にある物を飲ませないといけないのですが、残念ながら我々のポッドにそれを搭載していないので代用品で探さなくてはいけないのです。それがこの星にあればいいのですが……」
要するにリディアは今、充電器も繋がれず数パーセントの電池のまま維持してる携帯電話みたいなものだろう。確かにそれを放っておいたらいけないのもよくわかる。
「それはどんなものなんだ?」
「すみません、わたしが知っているものは精製された薬品だけでどんな成分が入っているかまでは把握していないんです」
さすがに俺でもこればかりは何も言えなかった。
「唯一わかると言えば渋い味だったような、それに飲んだときクラッときて……」
味がわかったところで向こうの文化と違うから参考にならなそうだが、心の隅に留めといておこう。それにクラッとするということはそんなに強力な薬ということか。
「期限はあと三日か……。どうにか探すしかないか」
「アンタ、自分一人で何とかしようって思ってないでしょうね?」
不意に由衣に図星を言われ、つい「えっ?」と間抜けな返事を返してしまった。
「みこっちゃん顔に出過ぎ。そんなあからさまに思い詰めた顔されたらこっちだって心配になるよ」
「で、でもこれは俺が招いたことだし……」
「リディアちゃんを救いたい気持ちはみんな一緒なんだから、今は手分けして探すことが先決でしょ?みこっちゃんに説教するのはリディアちゃんを助けてから」
そう言ってスギは俺に笑顔を見せた。次いで由衣もシスカも笑顔で俺を見つめていた。
「ああ、そん時はお手柔らかにな」
今は一刻の猶予もない状況だ。自分を責めてる場合じゃない。少ししかない情報の中でも何とか探すしかない。
リディア、お前は必ず俺が救ってみせるから!




