第七話4
夕飯は久々に賑わった。うちには来客用の広間があるため3人増えたぐらい何の問題はない。親父とシスカの作った手料理の他にスーパーで買った大人数用の寿司を並べ、明るさもいつもの倍に感じた。
夕飯の後は事前に買ってあった手持ち花火をして楽しんだ。最近は都内だと色々うるさいらしくこうして広い庭で花火をやれることに舞姫ちゃんは心から喜んでいた。
「ねえ、明日は何するの?」
「明日はお墓参りするんだよ。ご先祖様をうちにお迎えするんだよ」
「ふ~ん、もしかしてお兄ちゃんのお母さんも?」
「そう、み~んなね。きっと舞姫ちゃんがどれだけ成長したか楽しみにしてるよ。だから明日はお花上げたりとかいっぱいお手伝いしないとね」
「うんっ!舞姫、いっぱいお手伝いする!」
と、舞姫ちゃんは俺にきらきらした笑顔で答える。
「お母様ということは亡くなった者をお迎えするということですか。この星の者は蘇生までできるんですか?」
「この星?」
「こ、この地域はってこと!二人はたまに日本語の使い方間違えることがあってさ。は、ははは……」
シスカの疑問にあたふたしながら取り繕う。どうして宇宙人ズはこうさらっと失言するのだろう……。
「それと、お迎えするって言っても蘇生じゃなくてあくまで儀式的なやつだよ。見えないけどそこにいるって気持ちで過ごすようなものだ」
「へぇ~、面白い文化ですね。わたしたちにはそういう概念がないので」
そういえばあまりタルーヴァの星の文化を聞いたことがない。スクールとかミカドとかの話が壮大すぎて忘れてしまっていた。
「ますます君たちの国の文化が気になるね。ねえ、君たちの国ってどんなところか教えてくれるかい?」
うっ……、今まで親父がそういうこと聞かなかったから油断していた。どうしよう、どう誤魔化すか……。
「あ、あのね正宗さん。コイツ等は……」
「とても素敵な場所ですよ。ここのように自然は少ないですが技術がとても進んでいる都市で、昔は争いごとがあったみたいですが今は平和な場所なんです」
と、リディアはタルーヴァのことについてあくまで差し支えない抽象的に紹介した。実際ホログラムにはそういう都市の映像が映し出されていたので間違ってはいない。
「ふ~ん、ドバイとかシンガポールみたいなとこなのかな?」
「ま、まあそんなところだよ。多分……」
まあ天気を管理してるとか超能力が使えるとか言わないだけ良しとしよう。
少しヒヤヒヤしつつもお盆一日目は終わった。この先持つかな、俺の精神……。
翌日はお昼前ぐらいに霊園に向かった。いつものように花を取り替え、墓石に水をかけ綺麗にし線香を上げる。俺ら日本人にとっては特に変わったことはしていないけど宇宙人ズはその流れを珍しそうに眺めていた。
「これでミコトさんの昔の家族の方が迎えられたんですか。本当に姿が見えないんだ……」
リディアはあれだけ言ってホントに見えると思ってたのか……。
「当たり前だろ。あくまで形だよ形」
「そうですよね、わたしたちの星でもさすがにそんな技術ないですもん」
あれだけずば抜けた最先端の所なのにその技術はまだ手に入れてないのか。
「さて、お昼あの店予約入れてあるからそろそろ行こうか」
手桶を片付けてきた親父が帰ってきて霊園を後にする。俺たちが追随していくと、舞姫ちゃんが遠くの方を見て立ち尽くしていた。
「どうした?舞姫ちゃん」
「あの人、舞姫のこと呼んでる」
えっ?と視線の先に向けるとそこには誰もいなかった。
「あの人って誰のことかな?」
質問するも「あそこ」と答える。だがやはりそこには誰もいなかった。
「あ、あはは。多分見間違いじゃないかな?さ、みんな待ってるから一緒に行こうか?」
俺は舞姫ちゃんの手を繋ぎみんなのところに向かう。それでも舞姫ちゃんはあの場所をずっと見つめたままだった。
その日の夜も大人たちは宴のようにお酒を飲み賑わっていた。さすがの俺たちも暇を持て余していたので肝試しを提案した。
というのも、実は事前に由衣とスギに頼んで肝試しの仕込みをお願いしていたのだ。二人とも舞姫ちゃんのことは知っていたので快くOKしてくれた。
場所はここから歩いてすぐの小さなお寺までの小さな道。街灯もなく舗装されていない竹林の道なので雰囲気的にはバッチリなシチュエーションだ。それに親父たちも馴染みのある場所なので問題なかった。
「つーことで、第一回ビビり王は誰だ大肝試し大会~~~!!」
大会と言いながらぶっちゃけ参加者は四人だけだけど……。
「わーい!ずっと楽しみに待ってました~~!……で、肝試しって何ですか?」
リディア、最近お笑いの勉強でもしているのか?
「肝試しってのは二人一組になってここからゴールのお堂まで怖がらずに行けるかっていうゲームみたいなもんだ。途中にこわ~い幽霊がいるかもしれないから気をつけろよ~~?」
と、驚かすようにおどろおどろしく説明するが、そもそもそんなものがタルーヴァにはないみたいで二人とも頭に「?」を浮かべていた。
「オホン、とにかく悲鳴も上げずに無事に着いた方が勝ちってことで、そろそろ始めようか」
そして事前に用意していたくじを引かせ、俺とシスカ、そしてリディアと舞姫ちゃんのペアに決まった。
「じゃあ一番手は……」
「はいっ!リディア行きます!!」
と、リディアが腕をピーンと伸ばして手を挙げた。自信満々の屈託のない笑顔で。
「お、おう……わかった。舞姫ちゃんも一番でいい?」
「うん!頑張ろ、リディアお姉ちゃん!!」
「はいっ!頑張ってゴールしましょう!!」
と、二人は仲良く手を繋いでいる。こうして見るとまるで仲睦まじい姉妹みたいだ。なんだかほっこりする。
「じゃあルートはこの道を真っ直ぐ進んで、突き当たりを左に進めばすぐだから。迷うことはないと思うけど暗いから気をつけろよ?」
「はーい!」と元気のいい返事をし、リディア舞姫ペアは出発した。
「シスカ、ホントはお嬢様と一緒に行きたかったんじゃないか?」
「そうですね、できるならあのくじに細工をしてお嬢様と行きたかったですね」
そんなこと考えてたのかコイツ……。
「ですが舞姫様の手前、そんなズルはできませんので追跡カメラでお嬢様のご活躍を見守ろうと思います」
と、シスカは目の前にホログラムを映し出し、二人の様子を観察する。
そういえばそんなのあったな……。
「ところで、スギと由衣様が途中で隠れているようですがあれは何をなさっているんですか?」
画面には竹藪に隠れて仕掛けの準備をしている二人の姿が映し出されている。
「えっ……ああ、何やってんだろうな?あはは……」
「ふふ、あなたたちが何を企んでいるかはわかりませんが、楽しませようとしているのならばわたしも全力で楽しむとしましょう。そろそろお嬢様たちが出て5分です。わたしたちも行きましょうか」
「あ、ああ。ビビって泣きつくんじゃねえぞ?」
「ええ、その時はこの一体を更地に変えるかもしれませんしね」
と、またどこからか取り出した細剣を光らせる。つまりは……考えるのをやめよう。




