表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第五話
36/121

第五話2

 さてどうしましょう、何とか学校には来たんですがミコトさんが見つかりません……。以前ミコトさんと会ったあの大きい部屋に行っても誰もおらず、他の部屋を探そうにも数が多く、どの部屋も同じ間取りで今どこにいるのかわからなくなりそう……。

「ミコトさん、一体どこに……」

 前を見ても後ろを見てもどこまでも続く長い廊下。それに1階から3階までありますから探すのは本当に難しそう……。何か手がかりがあれば……。

「それにしても、違う星にスクールがあるなんて何だか不思議。先生からは生命が住む星は皆無に近いって聞いていたのに、生命どころかわたしたちの星の文化にソックリだなんて……。それに」

 この星では、お父さんお母さんに育てられて暮らしている。それだけがタルーヴァとの大きな違い。

「いいなぁ。家族と一緒なんて……」

 おっといけない。早くミコトさんを探さないと!

 と、また探そうとしたとき、近くの部屋から誰かの声が聞こえてきました。

「ミコトさん?」

 少し開いていたドアを開くとお天気が悪いせいでしょうか、中は薄暗い部屋でした。周りは棚でとても狭く何とか歩けるぐらいの幅しかありません。

 こんなところにミコトさんが?でも微かに誰かの声が聞こえる……。

 棚と棚との間でできた道を抜けて少し広い場所に出るとそこには……。

「マジカルリリカルムーンライト!月の魔法戦士、プリティリリィ!!」

 何か不思議な単語を叫ぶピンク色のヒラヒラした不思議な衣装を着た同じくピンク色の髪の女の子がとても不思議なポーズをしていたので、わたしは見なかったことにして戻ることにしました。

「ちょっと待って!!何も言わずに帰るのやめて!!僕の心ズタズタにやられるから!?」

 普段みんなからリディアは鈍感だと言われますが、この時だけはわたしでも感じました。

『この人に関わったら危ない』

 わたしは彼女に苦笑いを浮かべながら軽く会釈をすると、すぐさま元来た場所へ猛ダッシュしました!

「えっ!?ちょっ、待てえええええ!!」

 しかし彼女は想像以上に瞬発力があり、あっという間に回り込まれてしまいました。

「僕の秘密を知ったからには君を生かしておくわけにはいかないねぇ……」

 秘密……、まさかこの子もわたしと同じ宇宙人なんでしょうか?この星ではあまり見られない不思議な服を着ていますし。

「か、勝手に部屋に入ってしまってごめんなさい!まさかあなたもわたしと同じだったなんて……」

「……そうなの?」

 あれ?何か思っていた反応と違う……。もしかしてわたし、また口を滑らせちゃった!?

「あ、えっと……、なんとなく不思議なオーラが出ててその……」

「やっぱり君もコスやってるんだね!?ねえねえその緑色の髪ってウィッグ?染めたの?えっもしかして地毛!?次のイベントのためにキャラ作ってるの!?」

 えっえっ!?何なんですかこの人!?いきなり髪をべたべた触ってきたりさっきから何を言っているんですか!?

「あ、あの……これは地毛で、わたし、リディアって……」

「えっこれホントに自分の髪なの!?こんな綺麗な緑色見たことないよ!まんまRPGに出てくるエルフじゃん!!でも最近リディアってキャラ聞いたことないけど……、まあいいや。ねえねえ君時間ある?君に合いそうなやつあるんだけどちょっと着てみない?大丈夫、すぐ済むから!ねっねっ!?」

 何かスイッチが入っちゃったのか、彼女はわたしの髪が地毛とわかると、ぐいぐいと迫ってきたのです。

「ねえねえ!ちょっとこれ着てみて!あ、でもこれもいいかなぁ。じゃあ両方試してみようか!ねえ!ねえ!」

「ひ、ひぇ……ひぇ~~~~~!?」


 リディアが学校に来ている。彼女のことだからきっと瞬間移動を使ってたどり着いているはずだ。シスカの話によるとあの電話の30分前に家を出たと言っていたから多分どこかで迷子になっているのだろう。今日補習に使っていた教室はいつもと違う教室だったのでもしかしたらそっちに行ったのかもしれない。

 と思って向かったものの、そこには誰もいなかった。やばい、最初っからもう詰んだ……。

「これ、ちょっとやばいな……」

 もしかして本当は学校すら着いていない?でもこの雨なら瞬間移動で行くはずだ。この学校内で誰かに襲われた?誰に?真っ先に思い当たる由衣は今日部活で違うとこにいるはずだし……。

「とりあえず片っ端から探してみるか」

 俺はすれ違う生徒や先生に声かけつつ色んな教室をまわった。しかし誰に聞いても見ていないという返事ばかり……。

 気持ちが焦る。せめてリディアが無事であってほしい。どこだ、どこにいるんだリディア!?

「いやです~~~~~~~!?」

 この声……!?

「リディア……!どこだ~~!どこにいる~~!?」

 俺はどこからか聞こえるリディアの悲鳴を頼りに廊下を走った。

「いたっ!」

 すると、行き止まりのところで対峙している二人が……。

「えっ……?」

 俺は一体何を見ているのだろうか……。

 奥には何故かRPGゲームに出てきそうな女剣士の格好をしたリディア、そしてその手前にはピンクのヒラヒラした衣装を着たピンク髪の魔法少女……えっ魔法少女!?

「フッフッフ~~、やっと追いついたよリディアちゃ~ん」

 その魔法少女はいやらしい手の動きをしながらリディアにじわりじわりと迫ってくる。まるで肉食の獣が獲物に少しずつ近づいて捕らえるかのように。

「いや……、来ないで。来ないでください!?」

「大丈夫、ちょっと色々試したいだけで、痛くしないから……。ねっいいでしょ?いいでしょ?」

「ふええ~、ミコトさ~ん……」

「うちのリディアに何してんだよ不審者」

 俺はこの変態魔法少女に軽いチョップを入れた。

「あいたっ!?」

「ミコトさん!!」

 俺はさっと回り込みリディアの前に立つ。

「やっと見つけた。大丈夫だったかリディア、コイツに変なことされてないか?」

「はい、まだ何もされてないですが……」

 しかし、コイツは一体何者なんだ。まさかリディアの星から来たマリアの手先?それなら何故リディアにこんなコスプレを?

 すると彼女は俺を見るや否や急に顔を両手で隠した。すかさず彼女の左腕を掴んでほんの少し見えた顔は、文字通りの美少女だった。

「お前は誰だ、アイツの手先か!?」

「ぼ、僕はただこの娘に合う衣装を着せただけで……」

 俺はチラッとリディアの体を見る。確かにどこにも危害を加えたような痕はない。

 魔法少女はさっきの威勢とは違い、急にびくびくと縮こまる。どうやらマリアの手先ではなさそうだ。でも顔を見ても誰だか見当がつかない……、こんな美少女この学校にいたか?

「どうやらホントにリディアに危害加えてないみたいだな……。わりい、俺の勘違いだ。リディアと遊んでくれてありがと。それで、君は一体……」

 すると彼女がそっと顔を見せると、持っていたステッキをくるくると回しだし、

「マジカルリリカルムーンライト!月の魔法戦士、プリティリリィ!!」

 と、条件反射なのか突然アニメにありがちな決めポーズをやりだし、俺たちを圧倒させた。

「…………えっと?」

 すると隣の部屋からガラッと苺先生が現れ、

「あら君塚さん。こんなところで次のコスの練習してたの?そろそろ稽古始めるわよ?」

 と、魔法少女の正体は最悪のタイミングで明かされることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ