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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第一話
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第一話2

「ぁあ~~~……」

 恨みたくなるような暑さに目を覚ました。何で夏はこんな日が続くのだろう。誰かの陰謀か?きっと太陽の裏側に宇宙人か何かが隠れて操作しているに違いない。

 そんな下らない妄想を膨らましながらベッドに手をつけると「むにゅっ」という柔らかい感触……、

 むにゅっ?

 ぼやけていた視界の中、首を右へ90度回転させると目の前にかわいらしい女の子の寝顔が……、

「えっ?」

 そう、そこにはスヤスヤと気持ちよさそうに寝ているリディアがいた。しかも何故か全裸で……。

 うん、このシチュエーション何かで見たことあるぞ。確かたまたま夜中にやってたアニメでこんなことが、

「あ…………く、ふう……んっ……」

 てぇ!そんな分析してる場合じゃない!?早くこの手を離さないと……!?

「!?」

 コ、コイツ、抱きついてきやがった!?

「おいバカ!離れ……!?」

 ゴロンと俺にのしかかってくると、顔に向かってじわりじわりと這い蹲ってきた。

 たわわな二つの胸が身体に直に伝わる!?ちょ……待て!リディア!!

 その瞬間、脳裏に嫌なことを思い出した。

 さっきのアニメの話には続きがあって、こういうシチュエーションの時は大概、

「…………」

「…………」

 幼なじみの女の子が起こしに来るのである。部屋のドアを少し開け、怒りのオーラを放ちながら……、

「お、おはよう。由衣」

「おっはよ~う。み、こ、と、くぅ~ん?」

 ご紹介しよう、彼女は百合崎由衣。うちの近所の幼なじみで母親が亡くなって以降、うちの家の手伝いをしてくれている。

 そして、学校があるときは毎回こうして俺の部屋まで来て起こしに来てくれるのである。

 この時ほどそれはやめてくれって言いたい日はない。

「あ……あのな、由衣。これには宇宙よりも深~い事情があってな……」

「深~い事情ねぇ?」

 と釈明しようもないこの状況をジィッと見て微笑んだ。

「こ、コイツは昨日うちに来た従姉妹でな。当分うちで暮らすことになったんだよ。寝相がすごく悪くてさ、け……決してやましいことなんか……!?」

「従姉妹?」

「ん……、っはぁ……ダメですぅ~」

「お前はいい加減起きろ!!」

 そしてリディアはやっと目を覚ますとこの状況を飲み込めず、キョロキョロと辺りを見渡していた。

「あれ?わたしなんでここに……あ、ミコトさんのお友達ですか?おはようございますぅ」

 と、寝惚けながら由衣のところまで近づくとそのまま倒れ込むように抱きついてきた。

「えっ何っ!?ちょ、きゃっ!?」

「初めましてぇ。わたし、ミコトさんの家でお世話になるリディアれすぅ……、この星を征服しに……」

 するっと問題発言を漏らしながらまるでホラー映画のように迫るリディアに由衣は太刀打ちできず、

「かぁくほおおお!」

「ふにゃあっ!?」

 逆に彼女を捕獲した!!

「リディア!?」

「ミコトっ!この娘従姉妹って言ったわよね?持ち帰っていいでしょ!?」

「ダメだバカ野郎!!」

「じゃあアンタを警察に突きだしてこの娘引き取る!」

「意味わかんねぇよ!ってか何もしてねぇよ!」

 いきなり暴走しだしたこの由衣という女はその……かわいい女の子が大好きな、つまりはそんな感じで、こうして抱きついてはセクハラまがいのことをしているのである。

「セクハラとは心外ね。わたしはアンタが邪なことしないように保護するだけよ」

「じゃあその触手のような動きで触ってるその両手はなんだ?」

 と、キリッとした顔で容赦なく胸を揉んでるその手を指摘した。

「これは……わたしなりのモザイクよ!」

「お前がモザイクかかりやがれ!」


 ようやく由衣が落ち着き、タオルにくるまれたリディアが泣きながらへにゃへにゃに沈んでいるのを横目に話を戻した。

「考えてみればそうよね、おじさんがいるのに女の子を拉致できるわけないし。それにミコトがそんなことできる勇気ある訳ないしね」

 うわ、めっちゃチキン野郎的な見方されてる……。

「リディアちゃんだっけ?さっきはごめんなさい、わたしこんなかわいい娘見ると暴走しちゃうのよ。改めて、わたし百合崎由衣。コイツとはご近所で昔っからの幼なじみなの」

「そ、そうなんですか。あの、わたしリディア・ル・シイカノン・グエンシンナ・モウルサヤ……」

「なが……」

 期待通りの言葉ありがとう。

「ねぇ、さっきセイフクがなんとかって……」

「わーーーーー!?寝言だ寝言!てか何しに来たんだよ由衣。まだ夏休み始まったばっかだろ」

「何寝ぼけたこと言ってんのよ。今日登校日だってこと忘れたの?」

 …………。

 ゆっくりと視点を壁に貼ってあるカレンダーに向ける。そこにはご丁寧に『登校日!!』と念を押すように書いてあった。

「あっ、ああああああああ!!」

 そうだった!コイツのせいで今日が登校日だってこと忘れてた!?

 俺はすぐさま二人を部屋から追い出し、四十秒という好タイムで支度を終え、バタバタと家を飛び出した。

「ちょっと、ミコトさ~~ん!?」

「わりい!学校行ってくるからお前は家で大人しくしてろ~~!」

 と、何の説明もしないままリディアを残し、俺たちは猛ダッシュで駆け抜けた。

「学校……、スクールでいいのかな?あっわたしまた裸で寝ちゃってた!?」


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