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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第四話
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第四話6

「ミコトさんミコトさんっ!あのふわふわしたもの何ですか!?」

 メイン通りに繰り出した俺たちは早速露店巡りをすることにした。カラフルな色のチョコバナナ、夏の定番かき氷、群馬には欠かせない焼きまんじゅうなど色々買い食いしてきた中で、リディアは一番わたあめにときめいていた。

「ああ、わたあめっていうお菓子だよ。食べてみるか?」

「えっ!これ食べられるんですか!?ぜひっ!お願いします!!」

 彼女のキラキラと熱い視線がくる。それはまるで餌付けを期待してる小鳥のような眼差しだ。

 何個か袋の種類がある中でピンク色に女の子向けアニメのイラストの袋には少し抵抗あったが、リディアはこれがいいです!って指さしたのでそれを選ぶと、宝物を手に入れたように満面の笑みを浮かべていた。

「ここまでいい笑顔を見ると与え甲斐があるわね」

 そう、大体こんな感じで俺たち地球人サイドは侵略者サイドに餌付けをしまくっていた。リディアは比較的甘い物を好み、シスカは大判焼きやたこ焼きなど何故か粉ものを好んでいた。

「この星の食べ物はどれも危険です。わたしはあなたたちの誘惑になんて屈しませんよ」

「シスカちゃん、そんなに食べ物抱き抱えながら言われてもなんの説得力もないんだけど……」

 でも、二人がこんなに喜んでくれて正直嬉しかった。マリアに襲撃されてずっと警戒したままじゃ、せっかくの思い出も台無しになるかもしれないと心配はしていたけどなんとかなりそうだ。

「あの、ミコトさん。あれは何ですか?」

 そんな俺の心配をよそに、楽しそうなリディアが指さしたのはお祭りの名物射的だった。

「あ~、あれは射的って言ってな。あの銃を使って奥にある景品を落としてゲットする遊びなんだ」

「あんなかわいいぬいぐるみを銃で撃ち抜くんですか!?」

 あながち間違いではないけど言い方!?

「そ、そうだ!あれを撃ち抜くことによってあの猫ちゃんを救うんだ!俺に任せろ!」

 と威勢良く構えてみたものの、久々で全然やってなかったので正直自信がなかった。

 ポンッ。

「あれ?」

 一発目、的はでかいはずなのにかすりもしない。

 いやいやまだ一発目は様子見だ。この銃がどんな威力か知らないと。

 ポンッ。

「えっ?」

 二発目も見事にはずれ、続いて三発目もギリギリかすったぐらい。そして最後の五発目、コルク玉はぬいぐるみを一ミリ動かしたところであえなく終了した……。

「…………」

「…………」

「…………」

「なにか言って!?」

 一斉に顔を背ける。それでもリディアは相変わらずキラキラした目で俺を見つめていた。視線が痛すぎる……。

「リ、リディアもやってみるか?」

「はいっ!あの隙間を狙えばいいんですねっ!」

「ちげぇよ!!……じゃあ、このコルクを詰めて、照準をあのぬいぐるみに合わせてその引き金を引くんだ。まぁ最初はなかなか……」

 ポンっ。どさっ。

 まさに一瞬の出来事だった。あれだけ当たらなかったあのぬいぐるみがたった一発であっさりと落ちてしまった。

「ミコトさん当たりました!当たりました!」

 全員がぽかんとしてる中、ぴょんぴょんとはしゃぐリディア。

 ま、まあビギナーズラックってこともあるし、まぐれで当たったんだろう。

 なんて思ったのも束の間、リディアはそのまま残りの弾を詰めるとぽんぽんと標的を落としていった。

「見てください!こんなに取っちゃいました!これ面白いですねっ!」

「す……すごいな~リディアは。すごい才能持ってるじゃないか~」

 と、笑顔でリディアの頭をなでなでしてるけど目は笑ってない。

「ミコトは昔っからコントロールないからねぇ。小学校のソフトボール大会なんていつも暴投してたし」

「うるせえ!人には向き不向きってのがあるんだよ!」

 そんな俺を慰めるようにリディアは「あの、これどうぞ」と景品で穫った剣玉をくれた。

「わ……わぁ、リディアはホント優しいなぁ。よおし、俺もまだまだ負けてらんないぞ~」

 リディアの優しさが痛い……。頼む、そんなキラキラした目でこっちを見ないでくれ!?

「さてっと、なんだかんだいい時間になってきたわね。そろそろ移動しましょ」

「ああ、もうこんな時間か。由衣、前に言ってた穴場ってどこなんだ?」

「そうねえ、こっからだと30分ぐらいかしら」

「それ、ちゃんと見える場所なの……?」

 と、俺たちの会話にリディアとシスカは頭に疑問符を並べていた。

「あの、これからどこ行くんですか?」

「え?ああそうか二人は知らないんだよね。夜になったら花火が打ち上がるの。だからわたしがとっておきの場所で見せてあげようって思ってね」

「花火?」

「夜になるとさ、空に火の玉が上がってパーンってでっかい花が咲くんだよ。多分一番いい思い出になるんじゃないか?」

「空に咲く花……、この星の人間たちは不思議な技術を持っているんですね」

 何か俺らと全然違うの思い浮かべてそうだけどその時の楽しみと考えれば結果オーライだろう。

「んで、どこで見るんだ?」

「あそこ」

 と、由衣が指さした先に俺とスギは絶句した。

「「マジかよ……」」

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